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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー裏任務ー
183/689

―帰省―

レイズは、この休みを利用して帰省することにした。

他のメンバーも思い思いに過ごすようだ。休みになったにもかかわらず、レイラとリゼルはマナラドに出入りしているらしい。

バージル、マリナ、ミーネの三人は王都に残るようだ。支払われた給料を有意義に使い、リラックスするらしい。


王都から船でミナーリンまで行き、そこから山を登るルートである。

以前は騎士団の飛行艇だったため、船旅は長く感じた。当然だが、一人での帰路のため、話し相手もやることもない。

それが余計に時間の経過を遅く感じさせているのだ。


「……zZZ……zZZ」


そのため、基本寝ていた。

目の前に広がる大海原や、無限に広がる青い空を甲板から見ることもなく、風を感じて海鳥と戯れることもなく、ひたすらに眠っていた。

まぁ、どうせ王都に戻る際も同じルートだ。風景に拘る必要はない。


ミナーリンに到着し、町の外に出るレイズ。


(懐かしいな……)


この辺で、バージルと二人で特訓した。

数か月前の話なのに、年単位で前の出来事な気もする。


山に差し掛かると、懐かしい自然の匂いが香ってきた。

グリージに住んでいた時は一切感じなかったが、離れてみると分かる。

木々や花の香り、澄んだ空気。そして、川のせせらぎの音。


(平和だな。マジで)


ここには、都会の喧騒もなければ、強敵の気配もない。

あるのは、住み慣れた故郷に繋がる山だけ。

レイズは大きく深呼吸し、登山を開始した。


「おっと、魔物か」

「……!!」


何回か魔物に出くわすが、簡単に勝てている。

以前は、だいぶ苦戦したのに、楽勝過ぎて驚きだ。

ここ最近、敗北続きで自信を失っていたのだが、それは相手が悪かっただけである。旅を開始した時から見れば、確実に強くなっている。


この程度の疲労感なら、休む必要もない。

レイズはガンガン進んでいき、山の中腹。グリージ付近にまで到達した。


「そろそろか……マジで全然疲れないな」


以前よりも、体力がついている。

これも、旅や修行の成果だろうか。


この辺りは、村が近いこともあり、道が広くなっている。

ここまでくれば、もうすぐだ。


「うわ……懐かし……」


見慣れた木造の家が見えてくる。グリージに、帰ってきた。


「…………」


国が悲惨な状況でも、ここは変わらない。

レイズがここを離れてからも、それは同じだった。


懐かしさや平和を感じ、呆然と立ち尽くしていると、彼の姿に気づき、村人が声をかけてきた。


「レイズ?レイズじゃないか!?」

「おぉ!!帰ってきたのか!?」

「久しぶりじゃのう!」


レイズとあまりしゃべったことのない村人も、声をかけてくれた。

ここは人口が少ない。会う機会は多かれ少なかれ、皆の顔は知っている。


「一人か?一緒にいたのは?」

「いや、今日は一人だよ。少しだけ時間ができて」


バージルに連れられ、騎士団に入るために村を出たのは皆知っているはず。

だが、詳細は聞いてこない。

それに、エラー龍力者である自分のことを怖がっている雰囲気でもない。

村に残った他のエラー龍力者が、暴走を起こさず平穏に暮らしているからだろうか。


「なんだ……なら、また出てくのか」

「まぁ、そうだね」

「ま、ゆっくりしてけや!レーヌさんなら家にいるぜ!」

「あぁ、ありがとう」


村人たちに連れられ、自分の家に向かう。

彼らの感じを見て、レイズは何となく察した。『あいつ』は、帰っていない。


「……もういいだろ?ひとりで行けるから」


自分の家に帰るだけなのに、ずっと付いてくる人たち。

レイズは気になって仕方ない。


「いや~でっかくなったお前を見てたいんだ」

「ほんと、なんか凛々しくなってない?」


おっちゃんおばちゃん連中に褒められても、あんまり嬉しくない。

だが、嫌な感じはしない。


「こっちにも顔を出せよ!サザギシも、もう気にしてないから!」


サザギシの名前が出て、立ち止まるレイズ。


「!!……分かった」


この休暇に帰省したのは、サザギシに会うためでもある。

荷物を置いたら、すぐに会いに行こう。


彼は、荷物を背負う手に力を込め、レーヌの待つ家に足を進めるのだった。

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