表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー裏任務ー
180/689

―悲痛な訴え―

報告会は終わった。

龍魂を超えた、『フル・ドラゴン・ソウル』という新たな力。研究員たちは、それに届かないか試すと言っていた。

望みは薄いが、次なる力の有無が分からないまま研究するより、自分たちが示した具体例があると、騎士団や研究員はいい刺激になる。

よって、マナラドでは、引き続き龍力を上げる研究が行われる。

それに加え、追々にはなるが、フル・ドラゴン・ソウルの研究にも入る予定だ。しかし、研究にはそれが使える人間の協力が不可欠。つまり、レイズたち誰かがマナラドにつきっきりになってしまう。

それはクラッツが許さなかった。

そのため、メインを龍力アップに、サブとしてフル・ドラゴン・ソウルの研究を行うそうだ。


騎士団員や研究員が退席した後、クラッツとレイラたちで今後のことが話し合われた。


「本当にご苦労だった。スゼイとかいう男……何者なのだろうな」

「……分かりません。敵であることに間違いないのですが」

「フリアとの繋がりが気になる」


レイラやリゼルは、次の思考に移っている。

リゼルは、フリアとスゼイの接点の有無が気になっている様子だ。

敵になる以上、彼らの間に接点があろうがなかろうが関係なさそうだが、違った対応が求められる。

敵グループが一つか二つか。騎士団サイドが感じるプレッシャーは桁違いだ。


「敵は強大だ。騎士団内では、とてもではないが対処できない」

「「「「え?」」」」


予想はしていたが、クラッツがそれを言うのか。

団長が先に言うと思っていなかったレイズたち。マリナとミーネは互いの顔を見合わせる。

レイズの無意識にバージルを見たが、彼はこちらを見ることはなかった。

そう言えば、バージルは騎士団に残る選択だったな。


対処できない。と言っておきながら、顔は諦めていない。

リゼルは何かを察し、小さく息をつく。そして。


「……それで、どうする気だ?」

「我々は、『四聖龍』へ協力を要請した」

「!!」


あの一件以降、初めて聞いたその言葉。

国を東西南北に分断、その地区の騎士団を裏で支えている影の戦力。


(四聖龍!遂に動くのか……!)


バージルは身を固くする。


「と言っても、北の四聖龍には要請を出していない……他の四聖龍には、騎士団を通じて協力を要請した」

「そうでしたね……北は……」


代替わりしているため、あまり中枢に呼びたくない。


「あぁ。彼らが優遇されているのも、騎士団が正常に機能している上でのことだ。その騎士団がなくなれば、四聖龍であるメリットは何一つなくなる」

「なるほど……」

「あの感じだと、四聖龍の強さも、フル・ドラゴン・ソウルだろう。彼らがいれば、太刀打ちできるかもしれない」


無論我々も特訓はするがね、とクラッツは締めくくる。


「それで……私たちは?」

「君たちのには……」

「悪いけど、その前に、ちょっといいか?」


騎士団長の言葉を遮り、レイズが手を上げる。バージルは「来たか」と目を閉じる。

リゼルに「止せ」と言われるが、レイズは聞かない。上げたその手を下ろさない。

真っ直ぐにクラッツを見ている。


「どうぞ。言いたいことがあるのだろう?」

「あぁ。どうしても確認したいことがある。レイラたちにも聞いてほしい」

「…………」


言われなくても、雰囲気で分かる。

長旅で培われた機器察知能力。レイラのそれがビンビンに反応している。


「俺たちは……騎士団は、負けっぱなしだ」

「!」


マリナとミーネが顔を上げる。

そして、首こそ動かさないが、レイズを見ている。

普段は明るく振舞っていた彼も、同じ悩みを抱えていたのか。


「この編成には、レイラだっている。それなのに、いつも最前線だ。それに、俺たちは素人同然で一緒にいた。いつまでやればいいんだ?」

「レイズ……」


自分が最前線にいつのは、我儘である。だから、それについては何も言えない。

しかし、同じチームにいる以上、彼らも最前線に引っ張り出されることになる。

半ば、強制的に。

ただ、レイズたちの実力は、ここ最近で騎士団トップクラスになっている。

『フル・ドラゴン・ソウル』の理解が進み、騎士団員が追いついてくれば話は別だが、今この瞬間は、表の最高戦力になりつつあるのだ。

しかし、レイズの訴えはそう言う話ではない。だから、レイラは黙って聞いている。


「騎士団のお偉いさんは、女王と、素人同然の俺らを使い捨てる気なのか?」

「…………」


クラッツは何も言わない。

口を固く結び、厳しそうな顔をしている。


「……俺たちは、捨て駒か?」

「!!」


捨て駒、という表現に、リゼルは席を立とうとする。

しかし、レイラにそれは阻まれる。


「…………」


止めなくていいのか、とアイコンタクトを送るリゼル。

彼女が理解したかは不明だが、彼女は首を横に振る。


これは、仲間が抱えている悩み。

常日頃から一緒にいる仲間に寄り添えなくて、国が救えるものか。

レイラは、全ての言葉を噛み締め、どうその不安を取り除けばいいのか必死に考えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ