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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー裏任務ー
173/689

―雑魚の一発―

「いっちょ上がりっと」


追ってきた龍力者を全員倒したスゼイ。地に伏す旅人たちを眺め、満足そうに頷く。

少しはやれる龍力者であったが、『この領域』には、まだまだ修行が足りていない状態であった。

あれだけの実力がありながら、旅人をしているのは逆に興味深い。が、スゼイが今最優先としている事項からすれば、かなり落ちるが。


(……剣を回収して帰るか。『あいつら』にも言わないとな)


あの隠れ家は、もう使えない。

騎士団は動けない様子だが、こいつらのように隠れた強者がいつやってくるか分からない。

用事が済んだら、即撤退するべきだ。


「さてと……」


スゼイは『わざと』落とした大剣を探す。

彼ほどの龍力者が、戦闘中に武器から手を離すなど、そんなミスをするものか。

当然、裏がある。

武器を手放せば、どんな龍力者も油断する。そこを突かれた龍力者は、本当に脆い。それは、あの連中でも例外ではなかったらしい。

そんな雑魚をいたぶるのは、本当に楽しい。

実力を見せた戦闘後半は、彼らに注意力が戻ってはいたが、当然遅い。希望からの絶望。本当に愉快である。


「あったあった……ん?」


剣を見つけ、拾おうと近づくスゼイ。しかし、異変に気付く。

その剣に覆いかぶさるように、外ハネした黄色が濃い金髪をもつ小娘が倒れていた。

それだけなら何とも思わないが、その女性から、かすかに龍力を感じたのだ。


スゼイは視線だけを動かし、他のメンバーを見ていく。


(……他の奴らは気絶してる……位置が良かったのか?)


龍力を感じるのは、その娘だけ。他の連中は皆気絶している。

あの『巨雷剣』は、龍力の濃淡がないように十分に構築・生成したはずだが、と目を細めるスゼイ。


(そういや、雷使いが一人いたな。そいつか……)


同じ雷龍使いに、龍力の流れを見切られたのだろうか。

何にせよ、敵ではないが。


「ッ……」


うつ伏せで表情は見えないが、意識はあるっぽい。

スゼイはその娘の脇に立ち、声をかける。


「……どきな」

「…………い」

「あ?」


か細い声。よく聞こえない。


「……ない」

「あ゛ぁ?」


ない。なにがないと言うのか。

問答無用で回収しようと屈んだ瞬間、その娘に顔を殴られた。


「!!」


めき、と頬に女の拳が沈む。

それは、ほんの一瞬だった。


寝返りをしながら起き上がり、スゼイの顔を捕捉。

握り拳に龍力を込め、打ち出す。

格下相手に、完全に油断していた故のスキ。そこを完全に突くことができた。


頬から全身に走る雷。スゼイは患部を押さえ、数歩下がった。


「……てめぇ」


不意打ち。

龍力込みとはいえ、か細い女の拳。大してダメージは入らない。肉体的ダメージは。

問題なのは、精神的ダメージ。



雷龍最強。


自分でそう思っているスゼイ。

最強の自分が、格下の小娘に顔に一撃入れられたとなれば、当然、精神は乱れる。

自分のプライドが、許さない。


(俺が……この、俺が……!?)


わざと手を抜いてダメージを食らうのと、素でダメージを食らうのとでは、意味するものが全く違う。

そこにダメージの大小は存在しない。


『ダメージを受けた』


その事実が全てなのだ。




「ざまぁ……みなさい……」


混乱する龍力者を見ながら、マリナはゆっくりと立ち上がる。

満身創痍。龍力もさほど残っていない。戦いを継続するのは、本来であれば不可能なはず。

だが、彼女は立った。


最高の仲間を、守るために。

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