表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー裏任務ー
172/689

―雷の柱―

圧倒的龍力で展開されている、雷の柱。しかも、まだまだ高くなっている。

天まで伸びているかのように思わせるそれは、周囲の漂う雲さえも払っていく。

そして、稲妻が激しく弾ける音を響かせながら、天に駆けていく。


「……ぁ……ぁ……」


声が、出ない。


負ける。


レイズたちは、皆そう考えていた。

少し前まで勝機があると思っていた。だが、それは相手の実力を見誤っただけの話だった。

フル・ドラゴン・ソウルの領域に辿り着いた高揚感で、敵との実力差を見誤った。


雷の光に照らされ、一層白く見える仲間たちの顔。

その表情は、絶望以外の何物でもなかった。


「おわった……」

「そん……な……」


一人、また一人と武器を下ろしていく。


せっかく修行を重ね、フル・ドラゴン・ソウルに手が届いたのに、負ける。

図に乗っていたわけではないと思いたいが、心のどこかでその力を過信していた部分はあるだろう。


(皆さん……)


額から垂れる汗を感じながら、レイラは仲間たちを見回す。


皆、龍力はまだ纏っているものの、どうすればいいのか分からない。

彼らは、呆然とその雷の柱を見ている。己の小ささを噛みしめるように。



(今度こそ……今度こそ、助けになれると思ったのに……)


フル・ドラゴン・ソウル含め、龍力を引き出せるようになったマリナ。

自分を救ってくれた彼らに、恩返しがしたい。

この力でそれができると思っていたのに。悔しくて、彼女は唇を強く噛んだ。ぷつ、と唇が切れ、鉄の味が口の中に広がっていく。


「ッ……」


世界は広い。

多分、あの龍力者よりも強い人間はいるのだろう。

格の違いを見せつけられた。



勝ち誇った顔で、雷の柱を見せつけるスゼイ。

すぐに攻撃すればいいものを、なかなか攻撃に移らない。

最後の抵抗でも期待しているのだろうか。


「…………」


レイラやリゼルなら、とバージルは二人を見るが、突撃するような体勢ではない。

流石の二人も、無謀だと理解している様子だ。確かに、アレに突っ込んでいくのは、命を捨てに行くのと同義だと思う。

その他の仲間も、龍力レベルこそ維持しているが、攻撃を仕掛ける様子はなかった。


「だよな」と、肩を落としていると、スゼイが大勢を変えた。


『来る』


レイラたちは、一斉に身構える。

龍力を充填した手を、スゼイは振り下ろした。


「……くたばれ!!」


巨大な雷の柱が落ちてくる。速度はないが、範囲が広い。今から範囲外に出るのは至難の業だ。

リゼルは顔の前で腕を十字に組む。そして、指示を飛ばす。


「……全てを防御に回せ!」

「はい!」

「あぁ!」


各自防御態勢を取り、ダメージの軽減に努める。

が、それは無駄な努力であることは皆少なからず分かっていた。が、こんなところで死にたくない。


今出せる最高の龍で身を守るレイズたち。

その直後、雷の柱が彼らを捉えた。


「ぐっ……!!」


ずん、と上から圧を感じる。圧力だけではなく、雷龍もだ。

同じ雷龍使いであるマリナは、特に強くその龍力を感じていた。


(なんて力……!!本当に同じ龍なの!?)


凄まじい圧力。龍力込みでなんとか耐えているが、それも限界が近い。

全身の骨が悲鳴を上げている。筋肉も痙攣し始めている。


「ぜん……りょくっ……!!」

「が……あ……!!」


稲妻が駆け、雷が彼らを包む。

それが、自分の龍力バリアを破られたことだと気付いたときは、もう遅かった。


「~~~~~~!!」


レイズたちを巻き込み、地面に雷の柱がぶつかる。

それは大地を割き、広範囲にヒビを入れた。

雷の柱は弾け、そこを中心に雷龍の粒子が舞い散っていく。


それと同時に、龍圧が生まれる。周囲の木々を薙ぎ倒し、風が抜けていく。

衝撃は大地の震動を起こし、ヒビ割れた大地を更に崩壊させていった。


金色の長髪を整え、衣服や顔に付いた埃を払う一人の男。


「ふぅ。こんなモンか」


その余韻全てが終わったとき、立っている人間はスゼイだけだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ