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龍魂  作者: 熟田津ケィ
-全ての始まり-
17/689

王都へ

レイズたちは、騎士団の入隊試験を受けるため、王都へ移動中だ。


騎士団保有の飛行艇で、数時間の予定だ。天候は晴れ。

揺れも少なく、なかなかに快適だ。動力は、複数の龍力者が供給しているらしい。

燃料単体のモノや、龍力の理解の進歩により、龍力者のエネルギーを使用するモノも開発されている。

グリージに居た時は接点すらなかった高等技術だ。


(試験、か……マジで受けるとは……)


飛行艇内で外の景色を眺めていたレイズ。

ぶっちゃけ、何かしらの理由を付けて、辞退するつもりだった。

だが、退き返したい気持ちよりも、先を見たい気持ちが勝った。


ただ、それよりも気になるのは、アーロンとリゼルの存在である。


「……つか、何でいる」


レイズの問いを具体化するように、バージルが続けた。


「引率が必要なのか?」

「お前たちの試験を見に行くんだよ。推薦状もあるしな」


そう言って、アーロンはニヤつきながら丸めた紙を見せてきた。

丸まっているために中身は確認できないが、あれが推薦状。あれがあれば、受かる可能性が飛躍的に高まるゴールドチケット。


「……あざす」

「……ども」


彼の同乗の理由は分かったが、このクソ根暗は?


「おま……リゼルは?」


お前、と言おうとして、慌てて言い直す。

機嫌を取ったつもりはないが、言葉遣いを注意しないと、何をされるか分かったものではない。


「帰るだけだ。僕に話しかけるな」

「あっそ……」


リゼルは相変わらずだ。そして、刺々しい。


バージルは、心の中で舌を出す。

こんなヤツが騎士団員で、役職?がついているとは。


(でも、つえぇんだよな……)


実際、実力は確かだ。

バージルは、先日の戦いを思い出していた。

彼がいなければレイズは助からなかったし、あの団員や自分だってどうなっていたか分からない。


(……『差』ってヤツを見せつけられた気分だ)


バージルは静かに唇を噛み、拳を震わせる。


あの術を見る限り、闇。炎や風よりはレアな属性になるが、あくまでも属性だけの話。

使いこなせるかは、龍力者自身の技量の方が重要。

さて、あの龍術、かなり強い龍力を感じた。

自分の最高のコンディション、最高の集中力で出せる最大火力よりも、十中八九強い。


(……俺だって龍力者だ。出そうと思えば……いや……)


あれだけの力。力だけなら、強引に出そうと思えば出せる。

だが、その分龍の意識は強くなる。そうなった時、冷静に龍力を構築できるか、紋章を通じて力を解放できるかは自信がない。


リゼルは、力を高めても意識がブレないよう、相当量の特訓をしてきたのだろう。

悔しいが、同じ龍力者として、龍力を見たら分かってしまう。


「ふ~~~~……」


分かりやすく頭を抱えるバージル。

実力がないと、最前線には出ることができない。これは、自分が求める『真実』との距離と同義。


「……酔ったか?」


心配そうなレイズの声に、バージルは何でもない、と返答し、続ける。


「いや、別件だ。それより、お前は?酔わないのか」


グリージに乗り物らしき物はなかったと思うが。


「外見てたら酔わなかったぞ。これも揺れないし」

「なるほどな」


そんなこんなで思い思いの時間を過ごしていると、アーロンが口を開いた。


「見えたぞ。あれが王都レイグランズだ」


その声に、レイズはいち早く反応する。


「でけえ……」


べったりと窓に張り付き、王都を見下ろす。

これだけ離れているのに、ミナーリンよりも何倍も大きい。


中央に見える城が、王の城だろうか。

また、城以外にも大きな建物が並んでいる。ザ・都会って感じだ。


「この飛行艇は、騎士団本部直行だ。手間が省けていいだろう?」


アーロンは自慢げに笑う。


「直近の試験日は?」

「……『あの日』以降、騎士団も人材確保に躍起になっていてな。かなりの頻度でやってる。で、リゼル。王都の試験は?」

「……明日だ」

「マジかよ?」


驚くレイズ。

騎士団に入ることが一応の目的だったが、具体的な試験日程は気にしていなかった。

そもそも、「バージルについて行けば何とかなるだろ」精神で動いていたため、騎士団関係は丸投げ状態であったし。


「……報告は聞いてる。龍のコントロールのこと、あの日の被害者であることを伝えれば受かると思うぞ。推薦状もある。何も問題ない。」


聞いたことがある。そういうのは、「フラグ」と言うらしい。


「……蓋を開けたら落ちてた、なんてのはなしだぜ?」

「あの日の龍力者は、騎士団も積極的に採用してる。大丈夫だ」


国は、エラー龍力者を支援しようと動いている。

しかし、国への信用の失墜や、『そもそも力を引き出せない』エラー龍力者が多いため、難航しているのが実情だ。


「え?俺は?対策なし……?」


正式な龍力者であるバージルは、アーロンに触れられないことに戸惑う。


「お前は……その龍力者をここまで育てたんだ。十分なアピールになるさ。推薦状には具体的に功績として書いてある。安心しろ」

「あざます……本当に……」


あれだけ誘っておいて、「自分だけ落ちた」では笑うに笑えない。

そうこう話しているうちに、騎士団本部が見えてきた。着陸が近い。


「さ、行くぞ、ヒヨッコたち」

「……僕は違う」


アーロンの号令に、リゼルは静かに反論した。

この地で、明日、騎士団の試験を受ける。新しい生活が、本格的に始まろうとしていた。

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