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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー裏任務ー
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―速攻で討ち取れ―

スゼイの大剣が彼の皮膚を裂く直前。


「!」


リゼルは咄嗟に横に跳んだ。

大剣が振り下ろされる。地面と接触していないのに、地面が抉れ、周囲にヒビが入る。

それは、停止時点までの、発せられた龍圧の高さを意味している。


「ちィ……!!」


何とか反応が間に合った。リゼルは舌を打つ。

彼の大剣の特徴的な形に救われた。

弧を描くような形でなければ、きっと首をやられていた。


レイラはそれを見て、少し恐怖する。

だが、気づいた部分もある。


(なんて力……!でも!)


凄まじい威力だが、はやりメリットだけではない。その武器の重さ故に、剣の振りが遅い。

本人は速く動けても、武器の重さがそれを遅らせている。

逆に「遅れていてあの速度か」と驚嘆に値するが、彼らにとっては、活路になる。

そこが、狙い目だ。



体勢を整え、リゼルは龍力を高めていく。

戦闘中にフル・ドラゴン・ソウルを扱うのは、レイズ以外初めての経験となる。

そのため、龍力の上げ過ぎには注意が必要だ。


(……まずは、これか)


彼は一瞬自分の身体へ視線を走らせる。

大丈夫。悪影響は出ていない。


龍魂は、シンプルに力を高めれば良いのではない。

ただ、力の差は歴然なのだから、力を高める必要はある。

しかし、力を高めることは、龍の意識が強くなると同義であるため、上げ幅は個人の判断となる。


目の前にいる敵がフリアやグレゴリーと繋がっているかは不明だが、彼らの仲間の可能性は十分にある。

だとすれば、あの時見た力をこいつも使ってくることは考えておかねばならない。


(長期戦は無意味だ。速攻だ)


力を推し量る必要はない。

一瞬でケリをつける。

リゼルは、視線で仲間たちに速攻の合図を送る。


「!」


レイズたちはそれを確認し、フル・ドラゴン・ソウルを発動させていく。

それを確認し、リゼルは走り出した。


「おぉ……?」


力の大小に差はあるものの、龍魂の域を超えた力であることに変わりはない。

彼は少し驚いた。


「ホントに旅人か~?」


闇色の髪の少年を迎え撃つため、踏み込もうと力を入れると、その地面に雷が走った。


「!」


力自体は大したことない。

しかし、闇色の髪の少年に中止していたため、反応が遅れてしまう。

迎え撃つ大勢を作り切れず、ガードする形となった。


「ちぃ……」


大剣と剣がぶつかり、火花が散る。

少年は舌打ちすると、即座に離脱していく。

どうやら、ぶつかり合うような戦いはお望みではないらしい。


「フン、で……だ」


スゼイは足元に視線を落とす。この地面を走る雷。鬱陶しい。

雷龍同士、力の差があるとは言え、ノーダメージでは済まない。しかし、彼の性格上、無視はできなかった。

雷の中に足を突っ込み、構えを作る。その後、大剣を振り回し、雷を振り払った。


「!!」


雷が始める音が響く。

その後、力の源を失った雷は光の粒子となり、消えていった。


「……あんたも雷龍とはね」


声のする方を見ると、外ハネした濃いめの金髪の女が、突き出した手を下ろすところだった。

闇や光の龍力者に比べるとひ弱ではあったが、それでも十分な力だ。


「おめぇも、か」

「投降しなさい。サンダー・プリズン」

「!」


今度は、天に手を伸ばす女。

頭上には、雷龍の紋章。落ちて広がる雷は、檻の形を模していく。

最初は動けるスペースがあったが、徐々に小さくなっていく。最終的には、身体に絡みついてきた。


「クッソ!」


振り払おうにも、身体に纏わりつく雷が邪魔でうまく動けない。

邪魔なのは、それだけではなかった。


「だぁっ!!」


炎を纏った、少年の剣。

雷に意識が向いていたスゼイは、まともに食らってしまう。


「ッ!このガキャ……!」


ただ、ダメージは大きくない。

しかし、見逃す理由はない。スゼイは腕を伸ばして掴もうとするが、この雷の檻が邪魔で、思うように身体が動かない。

藻掻いていると、低い声が聞こえてきた。


「大人しくしていろ」

「……!」


檻が形成されていくその間に詠唱を終えたのだろう。闇、光、風、氷の龍術が飛んでくる。

炎龍使いの少年にも逃げられ、スゼイは成す術がない。


「……!!」


動けず、防御もロクにできない状態で、あの龍術をまともに食らうのはマズい。が、何も手はない。

そうこうしているうちに、目の前が四色に染まる。


「ぐわあぁぁああっ!!」


高威力の龍術を受けてしまうスゼイ。

衝撃で砂煙が舞い上がるが、彼はマリナが拘束している。砂煙に乗じて襲われる心配はない。


龍術の余韻も去り、視界が晴れてきた。

雷に拘束されながらも、何とか耐えていた彼だが、力の限界が来た。膝をつき、ゆっくりと倒れていく。

どさ、と崩れ落ちるスゼイ。


「……エンドだ」

「よっしゃ。やったぜ」


バージルは剣を納め、レイズとハイタッチした。

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