表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー裏任務ー
164/689

―半崩壊の町―

レイズたちがシャンバーレを発ち、数日経ったころだ。

帰路では特に大きな戦闘もなく、平和に王都付近まで来ることができた。


「マナラドに行く?」

「あぁ。緊急だ」


馬車で一気の王都まで戻る予定だったのだが、リゼルからの指示で、急遽マナラドに向かったレイズたち。

そこで、彼らは息を呑んだ。


「ひどい……!」


町が、荒れている。

建物もダメージを受けていた。崩壊し、鉄骨が剥き出しになっている。

ダメージが少ない建物も、窓ガラスが割れる、壁にヒビが入るなど、無傷ではなかった。

多くの建物がダメージを受けているが、比較的規模の小さい研究所や、個人の研究所は無事のようだ。


「おい、アレ!」


ただ、そんな状態でも空いている店があった。

開いているのは、道具屋や飲食店が数店。

大きな研究所や学校などの施設に電気はついていない。


「……犯罪者グループが研究所を襲ったのは本当のようだな」


マナラドに寄ったのは、レイグランズへの帰路の途中、その噂を聞いたためだ。

噂であるし、マナラドにも騎士団はいる。旅の疲れから、後回しにしたい気持ちはあったのだが、念の為に寄ったのだ。

その判断は、正解となった。


「騎士団は?見当たらないな」


レイズは辺りを見回す。昼間なのに人が少ない。

それに加え、騎士団がいるような雰囲気でもなかった。騎士団が外出を制限している風でもない。


「……話を聞いてみるか」

「そうだな。行くか」


バージルは道具屋を指差し、仲間に提案する。

レイズはそれに乗り、道具屋の扉を開ける。


「お~っす」

「!」


道具屋に入ると、店主はビクリと身を震わせた。

何かに怯えるその様子に、リゼルとレイラは顔を見合わせる。


「なんだ……お客さんか……」


レイズたちの姿を見て、店主は安心したように息をつく。


「何があったんです?」


話を聞くだけではなく、一応日用品や回復アイテムをレジに出す。

そうすれば、買い物ついでに話を聞くという形を作れる。


店主は商品を確認しながら、バージルの問いに答える。


「五日くらい前の話だよ……」


五日、と聞き、レイズは逆算し、横にいたマリナに囁く。


「五日……シャンバーレにまだいるな」

「そうね……あの頃はニュースなんか見ないから……」


その囁きは店主に聞こえていない。

店主は続ける。


「大きな研究所が襲われたんだ」

「!」

「騎士団も出撃して、応戦したんだけど」


返答を濁す店主に、リゼルとレイラはその結果に想像がつく。


「まさか」

「……負けたのか」

「……あぁ。聞く限りは」


あの場所にいたわけではないからね、と店主は小さい声で呟く。

が、この町の廃れようを見れば、負けたことはすぐに分かる。どのように負けたかは不明だが。


「被害状況は分かりますか……?」

「……死者はゼロらしい。で……研究資料が奪われたらしい。騎士団と協力して、より難しい研究をしていたことは知っていたけど……それを狙ったんじゃないかな」


死者はゼロだが、怪我人は出ているはず。レイラは恐る恐る店主に聞く。


「研究資料……怪我人は……」

「重症な人はいるみたいだけど……詳しいことは、何も」

「…………」


計算が終わり、料金を支払う。


「人がえらく少ないけど……」

「あの事件の直後だしね……この町は終わりだよ」

「え?」

「この前も騎士団は大打撃を受けただろ?体制が整うまで、マナラドに騎士団はいなくなる」

「そんな!!」


この規模の町で騎士団不在とは。

今の世の中を考えれば、そんなことあり得ない。

敵に大きなスキを残すようなものだ。それも、継続的に。


「すぐに再編成して騎士団を寄こすらしいけど……ボクは終わったと思ってるよ」

「……まだ人はいるのに」

「ボクも在庫がなくなれば店を閉めるよ。他の人も、キリの良いところで町を出るんじゃないかな」

「…………」


衝撃的だった。

レイズたちは言葉が出てこないまま、静かに店を出ることしかできないのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ