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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー無知ー
159/689

―力の浪費―

(ここで戦うのはマズい……!)


レイズは動けない仲間からトライホーン・ビーストを引き離すため、全く関係ない方向へ走り出した。

角を破壊され、トライホーン・ビーストも怒り狂っているだろう。


「こっちだ!!バカ!!」


わざと大声を出し、注意を引き付ける。

その甲斐あって、トライホーン・ビーストは他の敵には目もくれず、こちらに走ってきている。


(よし、釣れた)


普通の追いかけっこでは勝ち目はないが、今のレイズは龍魂の限界を超えつつある。

身体能力も、通常時や龍魂時よりもはるかに高まっている。捕まらないように走るなど容易い。



レイズとトライホーン・ビーストが十分に離れたところで、マリナはレイラに駆け寄る。


「レイラ、手当てを……」


頭や手からの出血は止まっていたが、一応包帯を巻いておく。

ミーネは、リゼルとバージルを診ている。あちらも応急処置をしているようだ。


「他に痛むところは?」

「……えぇ……大丈夫です。ありがとうございます」


これくらいなら、簡単な治癒術を掛けておけば、後は自分で治せる。

それだと、今戦うことはできないが、ここはレイズに任せて良いだろう。


「……それにしても」

「ん?」


レイラは、レイズとトライホーン・ビーストが走っていった方へ顔を向ける。

普通なら追いつかれそうな身体能力の差だが、レイズは捕まらず、距離を取れている。


身体能力の向上もそうだが、龍力の成長も素晴らしかった。


「凄い力でした」

「……そうだね」


マリナも同意する。

あの力は、明らか龍魂-ドラゴン・ソウル-を超えている。

グレゴリーが発揮した力に近いものを感じた。


「フル・ドラゴン・ソウル……私たちも学ぶ必要がありそうです……」

「うん。わたしも、そう思うよ」

「リゼルとバージルも診ないと……」


痛みを我慢しながら、レイラは立ち上がる。

治癒術で傷は治ったが、痛みは残る。だが、立てる。歩ける。

彼らにも簡単な治癒術を掛け、傷を治した。これで皆を立て直すことができた。


回復後、リゼルは即レイズを見る。


「……あれか」


仲間たちから十分に離れた場所で、レイズとトライホーン・ビーストは戦っていた。

距離はあるが、肉眼で戦闘の様子は見える。凄まじい力だ。


羨望の眼差しで見られていることにも気付かず、力を放出し続けているレイズ。

戦闘内容は互角であるが、自分は体力消費が敵の比ではない。

無理して戦っている自分と、自然体で戦っている敵。

どちらが長く戦えるかは、火を見るよりも明らかである。


(クソ……スタミナが……!!)


龍魂の限界を超え、フル・ドラゴン・ソウルとやらの力に目覚めつつあるレイズだが、この状態で戦うのは初めてだ。

力は引き出せても、その状態で戦い続けるには、まだ経験が乏しい。

常に全力。聞こえは良いが、力の抜きどころが分かっていない。それでは、すぐにくたびれてしまう。


剣の様な鋭い爪。

まともに食らいかけるも、剣で何とかガードする。


「ぐうっ!」


轍を作りながら、レイズは後方に滑っていく。

その顔には、明らかな焦りの色が浮かんでいる。

この一週間で得た、新たな力。圧勝できるとは思っていなかったが、ここまで苦戦するとも思っていなかった。


(時間はかけられない……!!)


苦戦している理由は明らかだ。

戦闘が長引いていることで、レイズの集中力が落ちてきている。

初手は目覚めの一発でそれなりの力を出すことができたが、そこからは下り坂だった。

現在も攻撃の応酬の真最中だが、押され気味だ。


トライホーン・ビーストに追いつかれないように走ることにも龍を使い、今戦っているこの時間も龍を使っている。

それも、龍魂とは比較にならないレベルの龍を。


歯を食いしばり、自分を奮い立たせるが、それで龍力は高まらない。


(力が……抜ける……!!)


それどころか、力は抜けていく一方だ。


強大な力で戦い続けるには、膨大な体力と龍力を消費する。

それも、力の使い方が下手だと『浪費』と言い換えても問題ないレベルの力を。


「……!!」


戦っていて、敵の力が落ちていることにトライホーン・ビーストも気づいたのだろう。

防御寄りで、こちらの様子を見ながらだったのが、攻撃寄りにシフトしている。


この傾向はマズい。自分は、嬲り殺される。

当然、残された仲間も。

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