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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー無知ー
158/689

―レイズの龍力―

全身に電気が走ったかのような痛み。


「いてて……」


激痛が走ったが、割と気分は悪くなかった。

時間としてはそんなに眠っていないのだが、久々にゆっくりできた気がする。

レイズは寝ぼけまなこで辺りを見回す。頭はまだ回っていないのだが、緊急事態であることはすぐに理解できた。


「レイズ!!助けて!!」

「も~ムリ!!」


目の前で戦っている、マリナとミーネ。

戦っている相手は、トライホーン・ビーストだ。大きい。


更に離れたことろに、バージル、レイラ、リゼルが座り込んでいる。

全員血だらけで、戦える状態にない。

今まで、ずっと自分抜きで戦ってきたのか。


「クソ!!」


ここ最近十分に眠れていなかったが、これは酷い。

仲間が戦っている音にも気付かず眠り続けていたとは。


(何やってんだ俺は!!)


レイズは立ち上がり、剣を構えながら龍力を高める。

寝起きゆえに、上り幅は普段より小さめだ。


トライホーン・ビーストがレイズの存在を確認した。

その瞬間、敵が増えたと判断したのか、マリナを爪で攻撃する。


「きゃあッ!!」


剣で身は守った者の、威力を殺すことはできず、彼女はレイズの遥か後方へと突き飛ばされる。

彼女と自分が入れ替わるような形だ。


「マリナ!!クソ!!」


レイズは頬を強く叩き、クラストとの修行の日々を思い出す。


「行くぞ!」


叫び、自分を鼓舞する。

走りながら、身体に纏う龍力を血液のように流動させる。

その流れを剣まで広げ、更に龍を高めていく。


「え……?これが……レイズ?」


横で見ていたミーネは驚く。以前のレイズとは文字通り『格』が違う。

纏う龍の大きさ、流れ。感じる圧力も、グレゴリーのそれに近い。

自分たちも道場でレベルを上げたつもりだったが、レイズの成長は本当に格が違った。


驚いているのはミーネだけではない。


「あれが……!?」

「なんてこと……」

「…………」


バージル、レイラも驚いている。

リゼルは何も言わない上に顔にも出さないが、内心穏やかではなかった。

自分より遅くに龍力を得ている彼に、サクッと抜かされた。

求めていた力を、レイズが手にしている。

更なる強さを手に入れる可能性が出てきた半面、悔しさもある。ギリ、と奥歯を鳴らすリゼル。

クラストとやらの指導力は、本物のようだ。


吹き飛ばされたが、何とか着地に成功したマリナ。


「あれが……フル・ドラゴン・ソウル……?」


深手を負ってはいないが、龍力を防御に使ってしまい、体力がゴッソリ持っていかれた。流石に前衛で戦える状況にない。

自分は、もう邪魔しないよう下がって見ていることしかできない。


「あぁぁぁぁぁぁああ!!」


炎を纏い、レイズがジャンプする。

10メートルは跳んだだろうか。跳んだタイミングで、龍力を下方向に放出させたのだろう。それで飛距離を稼いでいる。


トライホーン・ビーストは、レイズを見失わぬよう、顔を上げた。

人間は、空中で自由に動けない。長年の戦闘でそれを理解しているトライホーン・ビーストは、着地地点を計算し、そこに陣取る。

そこで、肩を上げ、構えた。生えた角で迎え撃つ気だ。


(知能たけぇな、けど……!)


レイズもすぐにトライホーン・ビーストの意図を理解した。そうはさせるか。

空中で一回転し、その勢いのまま回転を続ける。

炎を纏った高速回転のタイヤが落ちてくるようだった。


そして。


「爆炎龍綸墜!!」


トライホーン・ビーストとぶつかる瞬間。剣を思いきり振りかぶり、肩の角に振り下ろした。

その一撃には、回転スピードと重力、龍力が乗算される。


「!!」


バキ、と大きな音が辺りに響く。その後、トライホーン・ビーストの角にヒビが走る。そのヒビから、炎が噴き出した。角はそのまま燃え果てて、バラバラと砕けていく。

トライホーン・ビーストの堅い角を、レイズが破壊したのだ。

流石に痛いのか、悲痛そうな咆哮を上げながら、のたうち回っている。


「やった!」

「すげぇ……」


バージルたちは、開いた口が塞がらなかった。

今見ているのは、現実だろうか。

少し前まで龍魂-ドラゴン・ソウル-の『ド』の字も知らなかった人間が、騎士団長を凌ぐ力を手に入れている。


自分たちの可能性が、一気に広がった気がした。

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