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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー無知ー
156/689

―再戦―

「!!」


リゼルたちは、咆哮が聞こえた方へ一斉に向いた。

距離はあるが、大型の魔物が確認できた。


魔物はこちらを向いており、自分たちの存在を認識しているようだった。


「レイズ!!起きろ!!敵だ!!」


バージルはレイズの身体を揺すったり叩いたりするが、反応はない。

気持ちよさそうな寝顔。静かに寝息を立てている。

よっぽど疲れていたのだろう。タイミングが非常に悪い。


「リゼル!起きないぞ!?」

「……やるしかない」


大型の魔物は、こちらに向かって走っている。


「そんな……!!」


距離が近づくうちに、魔物の種類が分かった。

トライホーン・ビースト。以前と個体は異なるだろうが、再戦である。


「出るぞ。このバカに近づかせるな」

「はい!」


トライホーン・ビーストがここに来るまで吞気に身構えていれば、無防備なレイズは真っ先に標的にされる。

非常に面倒で納得がいかないが、それだけは避けなければならない。


「ち……踏んだり蹴ったりだな」

「そう言うなって」


バージルはリゼルをなだめ、走り出す。

道場で上昇した龍力、仲間たちに披露してやろう。


「この力、試させてもらうぜ!」


彼は剣を回しながら、風を生む。

跳び上がり、トライホーン・ビーストの角を狙った。


「風爆砕!!」


ごり、と重々しい音が辺りに響いた。

角の破壊には至らなかったが、それにダメージを与えることはできた。

レイラは剣に龍力を充填していく。新たな力を得たのは、バージルだけではない。


「光刃閃!!」


素早い剣技で、レイラはトライホーン・ビーストの前脚を狙う。皮膚を割き、血が滴る。

龍力が上がったことにより、以前より深く斬りつけることができていた。

トライホーン・ビーストは少し怯み、身体が一瞬硬直する。


「今です!!行けますよ!!」

「ありがとう!フリーズソード!!」


氷龍の紋章がトライホーン・ビーストの頭上に描かれ、そこから氷の剣が出現する。


「貫けッ!!」


ミーネの龍術の直撃に合わせ、マリナは技を叩き込む。


「雷龍砲!!」


自身そのものを雷龍の頭部に見立て、剣を大砲として龍力を放出する技。

放出時の衝撃で、彼女は轍を描きながら後退する。


「~~~~~!!」


氷の剣と、雷龍砲。

二つの属性の龍がトライホーン・ビーストを襲う。


ミーネとマリナの前に、脇から黒い影が現れた。

リゼルだ。闇龍のオーラを纏い、剣先まで龍力が満ちていく。


「龍崩絶血剣!!」


スキを作らず、リゼルが大技を撃ちこんでいく。

以前は全く怯ませることができなかったが、連続怯みにより、動きを封じることができている。


「……行けるぞ!!」

「攻撃を止めるな。畳みかける」


お互いがお互いの邪魔にならないよう位置取り、トライホーン・ビーストに攻撃を加えていく。

皮膚を裂き、血が舞う。楽勝だと思われた、その瞬間。


「!!」


トライホーン・ビーストは、またも咆哮を上げ、大地を前脚で強く叩いた。

魔物を中心に、円状に草が薙ぎ倒される。そして、大地が割れるほどの地響き。

凄まじい轟音だったが、それでも、あのバカは起きない。


「すっげぇ揺れだ……!」


バージルたちは、揺れに耐えきれずしゃがみ込み、衝撃に備えてしまった。

しかし、それはマズかった。


「攻撃、来ます!!」


トライホーン・ビーストが大地を駆ける。


「……!!」


揺れで、こちらの動きを制限する。

そうなれば、攻撃が避けられることはない。そこを狙われた。


「ガードしろ!!」


筋肉隆々な脚に、剣のように鋭い爪。

トライホーン・ビーストはそれを高く掲げる。

太陽光に反射し、鋭い爪が光る。


それで、彼らは薙ぎ払われてしまう。


「ぐわああぁぁぁぁああ!!」

「きゃあぁぁぁぁあ!!」


龍力を高め、武器でガードの体勢は取っていたものの、流石にその超強力な薙ぎ払いを防ぎきることはできなかった。

前衛にいたバージル、レイラ、リゼルは大ダメージを受ける。

吹き飛ばされた後、彼らは地面に落ちた。


「く……ッ!!」

「ッ……!」

「ち……」


意識は保たれているようだが、戦えるだろうか。

彼らは武器を支えに何とか起き上がろうとするも、自分の血で手が滑り、立つことができない。

皆傷口を押さえ、痛みに顔を歪めている。


後衛に位置していたマリナとミーネ。

レイラとリゼル。バージルまで一瞬でやられた。そのため、一瞬で空気が変わる。

開いた口が塞がらず、瞬きをも忘れる。


「「…………」」


自分たちは、まだまだ弱い。


(無理……けど、わたしたちでやらないと……)


マリナは一瞬で判断した。

この約一ヶ月で、トライホーンとの実力の差は確かに小さくなった。

だが、それを追い抜くことはできなかったのだ。

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