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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー無知ー
154/689

―苦しい修行―

最悪だった。

レイズは絶望していた。

彼は一人、クラストとの修行を開始した。その修行の過酷さは、想像を絶するものだった。


(もう……限界だ……)


青空の下、レイズは地に伏し、握り拳を作る。

苦しい修行に、その手は震えていた。


その修行は内容は。







『座学』







だった。




水辺から、場所をクラストの家に移したレイズ。

そこでは、クラスト講師の龍魂講座が開かれていた。

晴れていることもあり、屋内ではなく広大な庭で行われている。

クラストの家はシャンバーレ内になく、シャンバーレ近郊にあった。

手作りの柵で、好きな範囲を庭として使っている。町の中ではないため、魔物との距離が近い。

頻繁に壊れているためか、柵は何度も補強されたような跡が確認できる。

魔除けの札も数枚貼ってあるが、今も効果があるかは微妙だ。年季が入っている。


(あぁ……しんどい……)


休憩を挟みながらではあるが、約四時間。

クラストは龍魂の歴史をレイズに教え続けた。

空手チョップの手の当たる部分が真っ黒になるくらい、レイズは必死に知識を書き記した。


「駆け足だが、これで終わるか。飯でも食おう」


四時間の講義。

レイズは魂が抜けそうだった。心なしか、色も白く見える。

修行フル・ドラゴン・ソウルと直接関係ないのでは?」と心の中で思っていそうなので、補足しておく。


「歴史から学ぶことは多い。基礎知識として、しっかり覚えろよ。テストもするからな」

「……へい」


冒頭に戻る。

レイズは力が抜け、地に崩れ落ちた。


(助けてくれ……)


地に伏し震えているレイズだが、クラストは涼しい顔をしていた。

魔物の肉を焼いて食べさせてくれるらしい。

肉が出てくる分、まだ恵まれている。

が、四時間の座学はレイズを精神的に追い詰めた。


「ついて来い。肉だぞ」

「めし……にく……」


クラストの後を追い、ふらふらと台所に入るレイズ。

丁度入ったとき、クラストは食材を出すところだった。奥にある冷蔵庫から、分厚い肉が取り出された。


「!!」


それだけで、レイズの疲れは吹き飛んだ。


「分厚ッ!!」

「フ……修行の後はこれに限る。肉が嫌いな人間はいないからな」

「!!」


大きく首を何度も縦に振るレイズ。

唾液が口いっぱいに分泌される。


「味は塩コショウで良いのか?」

「はい!!」


肉が焼けるいい音がする。そして、いい匂いも漂ってきた。

バターとニンニク、肉の香り。幸せだ。


「その辺の魔物の肉だが……処理をすれば、良い味が出るんだ」

「へぇ……」


市販されている食用の肉ではない。

が、それでも市販レベルの味や質になり得るということだ。

魔物の肉でも食すことができるのは昔から知っているが、味は期待していなかった。

だが、処理をしっかりすれば、ナイスな味になるのか。


「初日だからおれがやってるが、明日からはお前が作れよ?肉は用意してやるから」

「はい!!」


その程度、お安い御用だ。

レイズは水などの用意をしている。

クラストは、肉が焼けるのを眺めながら、考え事をしていた。


(久しぶりだな……この感覚……)


長いこと弟子を取っていない上に、一人暮らしも長い。

人が家にいて、ワイワイ騒ぐのは何年ぶりだろう。


懐かしい。そして、楽しい。


クラストは、久しぶりに感じるこの言葉にできない感情を噛みしめていた。

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