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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー無知ー
151/689

―元師範として―

「フル……ドラゴン・ソウル?」

「あぁ。そうだ」


フル・ドラゴン・ソウル。


聞いたことのない言葉だ。

だが、龍魂ドラゴン・ソウルよりも強そうな感じではある。


「普通の龍魂よりも、桁違いなパワーが出せる」

「それって……!」

「あぁ。お前が見たのは、恐らく『フル』だ」

「フル……」


レイズは、グレゴリー戦やゴウザのことを思い出す。

彼らの龍力は、『龍魂』を鍛えました、というレベルをはるかに超えていた。

あれは才能なのか、と内心思っていたが、フル・ドラゴン・ソウル。そういう段階があるのか。


しかし、不可解なことがある。


「でも、道場では何も言ってなかった……」


そう、引っ掛かりはそこだ。

道場ではそのような言葉は飛び交わなかった。

通常のドラゴン・ソウルをベースに特訓をしていた。そして、座学も。


「……入門の道場なんだろ。それに、センセイも生徒は多い方が良い。そんな全部包み隠さず、なんてのは期待するな」

「マジすか」


道場運営も商売。そういうことか。

と言うか、それなら猶更コウや講師陣の『あの対応』はオカシイと思うのだが。

あたおか講師陣が教える。無意味道場。レイズたちのニーズから言えば、時間と金の無駄である。


(強さのヒント……意外な所で掴んじまったな)


フル・ドラゴン・ソウル。

それが彼らの強さの秘密なのはよく分かった。

だが、どうすればその状態になれるのかが分からない。道場でも、教えてくれる可能性は低い。


「え~……だったら、変えるしかないか……でも、金がな……」


レイズは悩む。

仲間たち含め、今いる道場では、これ以上の成果は得られなさそうだ。

それなら、道場のクラスを上げるしかない。が、クラスを上げるにしても、金がない。

道場代、宿代、食事代で既にカツカツなのだ。


「リゼルに相談か……?いやいや、とてもじゃねぇけど、上の道場代は払えねぇ……」

「…………」


クラストは悩むレイズを見ていた。


(おれなら、こいつを引き上げれる。が、それは正しいのか……?)


クラストは今、ただの半ニート生活を送っている。しかし、昔は凄腕の師範だった。

実績はあったが、育てた生徒の一人が犯罪に走ってしまった。

そこにクラストとの因果関係はないが、そこから彼は生徒をとらなくなった。

今は、シャンバーレの外れにある家で小さく暮らしている。

結婚もする気になれず、相手も長い年月いない。


(悪いやつには見えないが……)


レイズ、スレイ共に悪人には見えない。が、それは昔の生徒も同じだった。

人はいつ変わってしまうのか分からないのだ。


「クラストさん、ありがとうございました。一回相談してみます」


レイズは立ち上がる。彼が行ってしまう。


「ッ……」


レイズは立ち上がり、パンツに付いた砂を払う。そして、軽く頭を下げた。

彼が背を向けた瞬間、クラストは自然と声が出ていた。


「おれなら、お前を引き上げられる」

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