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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー無知ー
150/689

―新たな力の可能性―

「あいつは、お前に言ったあの言葉を後悔してた」

「…………」

「おれには兄弟がいない。だから、黙って去っていくってのが理解できんのだが……まぁ、あいつは黙って去ることを選んだ」


今の話を聞いて、レイズは尚更「もっと早く動いていれば」と後悔した。

タラレバに意味はないと思っていても、どうしても考えてしまう。


(けど、あの場で『それ』はねぇだろ……)


あの場での「羨ましい」発言はモラルを欠いた許しがたいものだが、仲間たちはそれに拘っていなかった。

龍の暴走はトラウマレベルだ。それなのに、羨ましいとは許せない。が、そんなつまらないことに拘り、たった一人の兄と連絡が取れなくなるのは、もっと嫌だ。


「……どっちに行ったか覚えてます?」

「お前……まさか!」


驚きを隠せないクラスト。

どうする気なのか、流石に分かる。


「探します」

「無茶だ!もう二週間以上前の話だ!方向はまぁ、覚えているが、ヴァイス平原だぞ?街道もない、道標もない、方向だけじゃ命とりだ!」

「……っ……」


スレイの移動速度は不明だが、どんなに遅くても、一週間あればヴァイス平原を抜けることが可能だ。

その先は、本気で不明。

それに、ヴァイス平原を本当に真っすぐ進んでいるかも分からないのだ。

クラストに正論を言われ、レイズは黙る。


「忘れろ、とは言わんが、止めてくれ。これ以上は、俺の目覚めが悪くなる」

「はい……」

「で、その弟君はなんでシャンバーレに?」


そうなるか。

クラストの興味は、自分がなぜここにいるかにシフトしていた。


「『あの日』の龍力者って話はしましたよね」

「あぁ」

「俺には仲間がいるんですが、まぁ、そいつに龍力を教わったんです。で、コントロールは順調なんですけど」

「ほうほう。それで?」


騎士団のことは言えない。

嘘を言うつもりはないが、騎士団のことは隠しながら話さなければならない。

頭をフル回転させ、言葉を探す。


「その仲間と一緒にいるとき、ヤバい相手に遭遇しちゃって……」

「ヤバい相手?」

「……俺らの龍が通用しなかったんです。俺から見れば、仲間の龍も凄いのに、通用しなかった」

「……なるほどな」


駆け出し龍力者がぶつかる壁の一つだ。

単に未熟なのか、龍の使い方が下手なのか。

龍魂を得ることができても、極めようとすれば、先は長い。終わりがないほどに。


「逃げてしまえばいい話でもなくて……因縁の相手みたいになってて……だから、戦闘は避けられなくて……」


ヤバい相手なら逃げるのも戦略の一つ。だが、レイズたちは逃げることは許されない。

レイやフリア達を倒さないといけないのだから。


「それで、ここに何かヒントがないのか探しに来たわけか」

「……そうです」

「その行動力は認めるが……」


顎に手の甲を当て、考えるクラスト。

こいつは、どのタイプなのだろうか。


単に未熟?

龍の使い方が下手?

龍力の流れが読めていない?


「お前、ちょっと龍力上げてみてくれないか?」

「え……?」

「おれもここの人間だ。多少アドバイスできるかもな」

「……分かりました」


レイズは立ち上がり、龍力を込めた。

湧き上がる力を爆発させることなく、流れるように、滑らかに身体に充満させる。

荒ぶる心を落ち着けながらも、内に秘める力を上げていく。


(こいつは……想像以上だ)


クラストは正直に驚いていた。

レイズの基本は良くできている。下手に龍力を上げるのではなく、血液が流れるように、自然に龍を纏わせている。


「……で、センセイは何て?」

「え?」

「師範だよ。通ってるんだろ?」

「……通ってますけど、ぶっちゃけ意味ないなって」


コウやその他講師陣の信頼がないことをぼかし、ただ漠然と通っているだけだという空気を出しながら言った。

クラストにコウへの不満を漏らしても、共感してくれるかは別問題であるし、この場で愚痴っても意味はないのだ。


「むしろ、基本を教えてくれたのは仲間の方です。ただ、力の上限(?)を上げるのは難しいみたいで」

「……オーケー、分かった」


今ので、大体レイズの今の実力が分かった。

そして、彼が通っている道場のレベルも。


「レイズ。今のお前に必要なものを教えてやる」

「え!?マジすか?あ……いや、本当ですか?」


レイズは一旦龍力を鎮める。


(クールダウンも完璧じゃねぇか)


自然に。本当に自然に、レイズは龍力を落とした。

想像以上の出来栄えに、クラストは興奮する。


「フル・ドラゴン・ソウルだ」

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