ー久しぶりの再会ー
レイズたちは、シャンバーレの町を散策していた。
自分の龍派がどこにあるか確認しながら、道具屋、武器屋、飲食店など、生活で使うであろう施設を確認していく。
数は道場よりも少ないが、龍派に分かれた図書館も建てられている。
(どの本を読めばいいのか皆目見当もつかないが)文献を利用して知識を増やすこともできそうな感じだった。
レイラ、ミーネは町を見ながら話していた。
「やっぱり、龍派に分かれていますね」
「そうね……一軒くらい、総合の所があってもよさそうなのにね」
先日見れきれなかった所も含めて、しばらく見て回った。
初日の感じから予想はしていたが、道場は龍派によって分かれていた。
道場は、中を覗くこともできるよう建てられており、性別、年齢層、訓練内容が分かるようになっている。
志願者はそれを見て、自分に合っているところを探すのだろう。
レイズたちとっては、総合的に指導してくれる場があれば良かったのだが、そう上手くはいかないようだ。
(総合の所がない……やっぱり、一人で……)
ミーネの心はざわついていた。
人見知りに、その環境は辛い。それに、龍派問わず、周囲は男性が多く、女性は少ない。加えて、年齢層も広く、打ち解ける自信はなかった。
ただ、仲良しごっこをしに来たわけではない。
(……だめ。頑張らないと……けど……)
先日、自分は「やる」と言った。
頭では分かっている。が、どうしても心が付いてこない。
敵は強大だ。強くなりたい。ならなければならない。
人には向き不向きがある。
自分は、前線に立って戦える器ではなかったのではないか。
レイラたちに龍を教えてもらって感謝しているが、ここまで事が大きくなるとは。
「ミーネ?大丈夫ですか?」
「!」
レイラに声をかけられ、ハッとする。
自分では気づかないうちに、かなり険しい顔をしていたようだ。
「ううん、疲れたかも……色んなことあったし……」
「そうですね……今日は道場の中までは入りませんし、早めに帰りましょう」
ミーネは力なく笑顔を見せ、感じている不安を、疲れだと言って誤魔化した。
そう、きっと疲れのせいだ。ミーネは自分の気持ちに蓋をして、見ないようにした。
「さて……」
町を見て回ったレイズたち。
考えている道場がどこにあるかは把握した。周辺施設、宿までのルートも確認済みだ。
今日の目的は達成だ。
「……こんなもんか?」
「そうだな。分かってたことだが、相当多いぞ……」
初日にある程度絞っていたことと、隅々まで見れていなかったことを考えても、後追いで発見できた道場は多い。
ただ、町の端過ぎたり、気迫に満ち溢れすぎたり、座学中心すぎたりしているため、どちらにしても選択肢には入らない感じだ。
いきなり世話になるには、ハードルが高い。
はやり、大通りに面していたり、町の中心にあったりする方が安心する。
何か買って宿に戻ろうかと考えていたその時、どこかで聞いたことあるような声が聞こえてきた。
「レイズ……?」
「え?」
そちらを向くと、そこには自分たちより少し上の年齢であろう男が立っていた。
髪の毛をセンターで分け、メガネをかけている。ワイシャツにベスト。勉学に励む者っぽい格好だ。
脇に分厚い本が数冊抱えられている。
そして、顔・声がレイズによく似ていた。
「……兄貴!?」
「兄だぁ!?」
その男は、レイズの兄。名前はスレイと言うらしい。
「やっぱりか」
「久しぶりだな!まじ、何年ぶりだよ!?」
レイズは懐かしそうに肩を叩いた。
兄は本を抱えており、やられっぱなしだ。
第一印象だが、割と明るいレイズに対し、スレイは落ち着いた印象を受ける。
レイズと一緒にいる仲間と目を合わせようとせず、小さく答える。
「……(最低)五年くらいは経ってるか」
スレイはやや気恥ずかし気に目を反らす。
彼も人見知りっぽい。ミーネは親近感を覚えた。
レイズに兄がいたとは。それも、シャンバーレで再開するとは。
バージルたちは会話には参加できなかったが、ただただ驚いていた。