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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー圧倒的な差ー
136/689

ー武道の町シャンバーレー

武道の町シャンバーレ。


「はぇ~!凄い熱気だな!」


血の気が多い人間が多いせいなのか、シンプルに南に位置しているせいなのか、やや暑い。

龍力者が集まる武道の町と聞いていたため、漠然と想像はしていたが、想像を超えていた。


数は少ないが龍の属性に沿った道場があり、飲食店やその他の店が立ち並ぶ程度だと思っていた。

しかし、実際は違った。


大きな道場が数多く立ち並んでいる。

生徒の取り合いになる原因だと思うのだが、外から見た限りでは、それぞれ強みを持ち、ターゲットを絞っている様子だった。

シンプルなもの、トレーニングだけでなく、勉学にも重きを置いているもの、女性受けが良さそうなお洒落なデザインのもの、凝ったデザインのもの、機器を売りにしているものもあって、上手く生徒を取り入れようとしている努力が窺える。


レイズ、バージルはその努力に心底感心している。


「……すげぇな。似た道場がないぞ」

「良く考えるな……」


被らないように創意工夫がされている。

属性別で被ったりはあるものの、同じ属性でのコンセプト被りは限りなく少ない印象を受ける。


「で、肝心の飯は……」


テラス席を見る限りだが、飲食店ではスタミナ抜群な料理が提供されている。大盛りの白米、大きな肉、大きな丼。

店舗から流れてくる煙は、非常に魅力的な香りをしている。


他の町と大きく違うのは、(当たり前だが)洋服店がなく、道着店が多いことだ。

あと、町全体が男性が多い。女性向けの道場もあるため極端に少ない訳ではないし、飲食店の従業員は女性もいた。だが、全体の数としてはやはり少ない。

レイラ、マリナ、ミーネが行くことができそうな道場は一気に絞られたことになる。


シャンバーレを見て回る途中、屋外で特訓している水龍の道場があった。ガチムチの男たちで、上半身裸だ。

特訓内容が分かるかも、と離れた位置から観察していたが、はやり凄い。


完全に無意識に、レイラは呟いていた。


「あれは……」

「……気付いたか」


レイラ、リゼルは少々衝撃を受けた。

特訓中の彼らは、武器を持たずに流れを確認していた。見ていてわかるが、纏っている龍力が滑らかに動いている。

ゆっくりな動きは当然だが、緩急を付けた動きでも、それは同様だった。

自分たちとは、明らかに違う流れだ。


(……滑らかだ。僕たちから見れば、不気味なほどに)


通常、龍力を使う際は、力が必要な部位に龍力を集める。

自分たちは龍力を高め、各々が使っている武器にその力を纏わせて戦っている。

当然、身体全体を覆ってはいるが、濃淡はある。そういう意味で、武器に多めに龍力を回している。


そして、攻撃や防御の際に、瞬間的に移動させる。

その移動は基本、突発的だ。戦闘中故に、急遽想定した流れと違う動きをする必要だって迫られる。

そうなったとき、どうしても『遅れ』が出てしまう。これは、『どうしようもない事象』だと思っていたが……


特訓をしている彼らの龍力移動は、次の手、そのまた次の手そのまたを見越したかのような動きだ。

戦闘中ではないため龍力の大きさ自体は驚くほどではない。

しかし、龍力の移動・配分は素晴らしい。

レイラやリゼルでも『ぎこちなさ』が出てしまう。


「……(動きが)綺麗だな」

「バージル……そんな趣味が……」

「ん……?」


町に着き、気持ちに余裕ができたマリナに白い目で見られる。

最初は意味が分からなかったが、理解した瞬間即座に否定する。


「違う!『動き』が綺麗だと言ったんだ!!」

「えぇ~~?」


ガチムチの男に興奮する趣味はない。


「そうだぜ、こいつには好きな「あ~~!!あ~~!!いい天気だな~~!?」


レイズの言葉を遮り、強引に話題を変える。が無理がある。

彼らの離れた位置で、レイラとリゼルは視線を道場に向けたまま話している。


「『質』のレベルが違うな」

「えぇ……我々のは、良くも悪くも力を扱っているだけの状態……」

「……見られてもいい屋外であれをしている……それは、見られても困るものではないということだ」

「えぇ。彼らにとっては、当然のことなのかも……でも、疎かにできない。だから、欠かさない……」


シャンバーレは、騎士団と交流はない。むしろ嫌われている。

鎖国の状態にあるわけではないが、休暇中に身分を隠して行く人間は団内にいない。

中でどのような特訓が行われているかなど、謎に包まれていたのだ。


(ゴウザの言葉……流石はここの人間、か……)


ゴウザは自分たちはこれ以上強くなれないかもと言っていたが、それは「龍魂と向き合っていないから」だそうだ。

その意味はさっぱり分からないが、その言葉に重みが増した。

だが、焦るな。今から学べば良い。


「とりあえず、拠点の確保ですね」

「あぁ、宿を探すぞ」


マリナの疲れはとりあえず大丈夫なようだが、体力、精神、龍力面はまだ不安が残る。

拠点の確保は大事だ。


「……行くぞ」

「お!行くらしいぞ!!」


レイラ、リゼル以外の仲間に問い詰められていたバージルは、この時間から解放されることに喜んだ。


拠点を決め、学ぶ先も決めたら、本格的に特訓開始だ。

絶対に、掴んで見せる。


リゼルは最後にガチムチ男たちを一瞥し、宿探しに歩を進めるのだった。

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