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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー圧倒的な差ー
132/689

ー三本の角ー

ヴァイス平原に入ってから数日が経過した。

レイズたちは方針を変え、魔物との戦闘を避けながら進んでいくことにしている。


それでも避けられない戦いは数回あったものの、体力の消費を最小限にすることができている。

その成果か、マリナの顔色や表情が少し良くなったように感じる。

視線が落ち、焦点が定まらないような目ではなくなってきた。それでも、ふと気を抜けば落ちているが、頻度が減ったのは大きい。

ただ、その代償(?)として、南への進行速度がかなり落ちている。

移動こそしているのだが、魔物との戦闘回避のための迂回迂回が響いている。


(戦闘が少ない分、休憩も……)


戦闘から離れたため、レイラは少し思考に余裕が出始める。

皆の表情は暗くなっていくばかりだ。

それでも、レイラの思うように戦闘が少なくなっているため、誰からも休憩を申し出ない。

少し余裕ができたとはいえ、マリナだってキツいはず。勿論、彼女から休憩を要求することはない。

そのためか、リゼルは南へと進んでいる。が、さすがに落ち着ける場所がないとヤバイ。


「ふぅ……しかし……」


レイズは辺りを見回すが、まだシャンバーレらしき町の影は見えない。


(見えねぇな……)


ここまで周りに何もないと、道を間違えていないか不安になる。

だが、リゼルやレイラが先行している。何も問題はないはずだ。


「止まれ」

「!」


先頭を歩いていたリゼルが足を止め、身を低くする。

レイズたちも慌ててそれに習う。マリナはゆっくりと屈み、誰にも聞こえないよう注意しながら、「ふぅ」と小さく息をついた。


「でかいな」


距離はあるが、目の前には大型の獣型の魔物がいた。

茶色い毛皮、肩の辺りと鼻部分に黒い大きな角が生えている。

食事中なのだろうか。下を向いたまま頭をしきりに動かしている。


「道を変え……」


リゼルの言葉が止まる。

迂回しようと提案するつもりだったが、辛そうなマリナを見て、案を変える。


「……ここでヤツが去るのを待つ。気は休まらないだろうが……休憩も兼ねる」

「了解だ」

「はい……」


あんな大きい魔物は、ヴァイス平原に入ってから初めてだ。

それに、他の魔物も強くなってきている。あの魔物の強さは計り知れない。


「あの角……ヤバそうだな」

「あぁ……食らったらきついぞ」


コソコソと話すレイズたち。

身を低くしているとは言え、隠れられているわけではない。早く立ち去ってくれないものか。


「マリナ……大丈夫ですか……?」


明らかに大丈夫そうには見えないが、一応レイラは声をかける。


「ぅん……へいき」


マリナは小さく何回も頷く。

返事をするのもきつそうだ。同時に、足手まといになりたくないという意志も垣間見える。

どんなに辛くても、彼らと進みたいという、強い意志が。


「すまない……無理をさせる」

「ぇぇ……へいき」


気を遣わせてしまったな。

マリナは目を閉じ、息を大きくついた。


「きっともうすぐシャンバーレだよ、もう少しがん……」


頑張って、と言おうとして、ミーネは止めた。

マリナは頑張っている。頑張っている人に頑張ってというのは、言われる側は辛い。自分の努力を認められていない気がするからだ。


「あ……」


ミーネが言葉を止めた理由は、もう一個ある。

彼女はマリナの後方を見つめ、口を開けたまま静止する。


「ミーネ?何を見て……」


異変に気づいたレイラがミーネの視線を追う。

そこには。


「ゴレン……!」


岩型の魔物がいた。

岩が数十個組み合わさってできた魔物だ。

身を低くしていたこと、大型の魔物に気を取られていたことで、気づくのが遅れたのだ。

獣、自分たち、ゴレンと言う位置関係。獣にはまだバレていないとは言え、この位置関係は非常によろしくない。


「ちぃ!」


叫ばれ、仲間を呼ばれるのはマズイ。

リゼルは一瞬で剣を抜き、ゴレンに斬りかかる。


刃は通った。しかし、岩型なだけあって、硬い。

手ごたえもなく、ダメージは期待できない。龍力を抑えすぎたためだ。


「ッ……!」

「リゼル!」


レイズは炎を纏い、ゴレンを横から貫く。

ゴレンは燃え、気絶した。弱い個体で助かったが、別の問題が浮上する。


「ヤバいぞ……」


バージルは、大型の魔物を見る。

ゴレンは対処できた。が、問題は大型の魔物だ。

突然のことに、レイズは余計な力が入ってしまった。一撃で気絶まで持って行けたのは助かったが、当然、それだけの力の反応があったということ。

魔物の感覚器官は優れている。付近の力の乱れなどすぐに察知するだろう。


「……気付かれた」


大型の魔物は頭を上げ、こちらの方向を見つめていた。

血に染まった歯が剝き出しになる。その合間から、血肉が見える。


弱肉強食の強者と視線がぶつかる。

生き残るためにレイズたちは戦わなくてはならない。

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