表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー圧倒的な差ー
130/689

ーヴァイス平原の道のりー

レイズたちがヴァイス平原へ足を踏み入れてから、少しの時が経過している。


景色を楽しめたのも最初の数分だけだった。

後は、代わり映えのない景色が延々と広がるばかりだ。

良くも悪くも『慣れ』というのは恐ろしいものだ。


平原へ足を踏み入れてからまだ浅いということもあるが、魔物との戦闘は、まだ苦戦しなかった。

しかし、平原故に、一体に見つかってしまうと、その戦闘中の音に引き寄せられ、複数体寄ってきてしまう。

そして、大所帯との戦闘へと広がってしまうのだ。それが少し厄介だった。



ただ、魔物単体で見れば、龍魂初心者のレイズ、ミーネでも十分に戦えているレベルだ。

そこにレイラやリゼル、バージルが加わるのだ。余程の不幸が重ならない限り全滅はしないだろう。

十分に戦えないマリナの保護を踏まえても、戦力的に不足はない。


魔物の種類は、植物系、鳥系、昆虫系、獣系などと豊富だ。

大自然故に様々な種類の魔物が共存している。


「ふぅ……」


レイズたちは、こまめに休憩をはさみながら進んでいく。

風がよく通り、その辺の丸太に腰かけているだけでも気持ちいい。

風景には慣れてしまっているが、この環境自体は良いものだ。


「いい気分だな!」

「ほんとね。病院より全然良いわ……」


草花が風に流され、サワサワと音を奏でている。

入院していた病院にも窓があったものの、ここまで風は通らない。

自然のありがたみを深く感じる時間だ。


「……景色、マジで変わらないな」

「……迷ってないわよね?」


バージルの呟きに、マリナは辺りを見回す。

当然だが、見えているのは大自然だけだ。


「方角は間違っていないはずです。最短距離かどうかは怪しいですけど……」


シャンバーレは、南に位置する町だ。

方角さえ間違わなければ、大丈夫なはずである。


「何か目印でもあれば良いけどな~」

「……なんにもなさそうね」


道中に、小屋などは一切なかった。

実際に歩いて痛感したが、地図に載るような目印は確認できない。

それだけではない。


「……人もいないな」


自分たちと同じような旅人とも遭遇しない。

草原に入る前までは少なからず人とすれ違うと思っていたのだが、今のところゼロだ。


「……好き好んでシャンバーレに行くやつは少ない。武道の町だぞ」

「なるほど」


リゼルは、期待を捨てるように言う。

確かに、普通に生活していれば関わることのないジャンルだ。

『あの日』以降も、それは変わっていない。一般的に接点がないからこそ、可能性を感じているのだ。


「商人でも通れば乗せてもらうのにな」


商人の移動手段は、殆どが馬車だ。その方が圧倒的に速い。


「言ったはずだ。基礎体力向上も目的の一つだと」

「……冗談だよ。分かってるって」


正直忘れていた。バージルは、慌ててリゼルをなだめる。


マリナのリハビリの件もある。

彼女は戦闘に参加しないが、歩行はできる。徐々に体力を戻すためにも、必要な過程なのだ。


「…………」


バージルは南を向き、眺める。

武道の町シャンバーレ。そこに、自分たちが今必要としている情報があるのだろうか。

なかった場合、どうすればいいのだろうか。


(いや、考えるな……行くしかねぇんだ)


不安に思いながらも、進むしかない。

任務であるし、他に手段も思いつかないのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ