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龍魂  作者: 熟田津ケィ
-全ての始まり-
13/689

龍魂の技術

あれ以降、戦闘は数回行ったが、全てバージルが片付けた。

その他は特にトラブルはなく、下山はほぼ終わった。


木々が生い茂っていた風景からガラリと変わり、今は街道と草むらが広がっている。

足元も傾斜から平地へと変わり、だいぶ歩きやすくなった。


「取り敢えず一段落だな」

「あぁ……結局、全部任せちまったな」


自分も戦おうと思ったのだが、自我と龍との意識バランスがどうも上手く行かない。

それに加え、戦いで動き回るなど、ハードルが高すぎる。とてもではないが、戦力にはなれなかった。


「気にすんな。いきなり戦闘中ってのは走り過ぎた」


自分と戦った時は、素晴らしい動きと力だった。

そのイメージが強かったために、戦闘で慣れさせようとした自分がいる。

実際、その方が数倍練習になるし、手っ取り早い。


だが、当時レイズの意識はかなり龍に取られていた。

よって、適切な指導方法ではなかったのが現実。


「この辺りで練習しようぜ」

「あぁ。分かった」


障害物も人の往来も少ない。見かけたら、控えたら済む。

周囲を散策し、丁度いいスペースを見つける。街道から少し離れた、土の露出が多い場所。

レイズの精神的にも、草が生えていないのは大きいだろう。


「お、いい感じだ」


バージルは荷物を隅に置き、構える。


「…………」


レイズもそれを見て、真似る。

構えは自分がリラックスできるポーズで良いのだが、自分の真似をするのがNGなわけではない。一々突っ込むだけ野暮だ。


「まず、自分の龍を意識しろ。そんで……」


バージルは龍力を高めていく。


「……力を引き出す」


次第に、髪や衣服がなびき始める。

これは、彼の周囲に風が展開している証拠だ。すぐに、風を切る音が聞こえ始めた。


そして、不思議な圧力も感じる。紛れもない龍圧であるが、今のバージルに殺気がないため、レイズに精神的負荷もない。よって、嫌な気配とやらを感じず、素な状態で見ていられる。


「おぉ……」


レイズも同じ空間にいるが、受けている風は別物。明らかに、バージルの髪や衣服の流れている方向とは別。

従って、彼の周囲の風は自然のそれではないことが分かる。


「このままでも、一般人よりも身体能力は高くなる」


武器も持たず、殺気もない。が、龍力を身体に纏わせることで、身体能力が増強されるのだ。

だから、レイズ自身も、信じられないスピードが出せるし、パワーも引き上がる。


「へぇ……」

「これが、ドラゴン・ソウル。分かってると思うが、風龍の力だ。お前のは、炎龍の力だな」

「…………」


炎の夢を思い出し、無意識に自分の手を見つめる。


忌まわしい記憶。

周囲を無差別に焼き尽くす炎の龍。


曖昧な記憶にはなるのだが、グリージでの出来事がフラッシュバックする。

燃え上がる畑と人の悲鳴。空間を舞う紅蓮の炎。


龍力には、それだけの力があるのだ。


「ふ~~……」


レイズは頭をかくふりをして、顔を隠す。


「今は恐怖心が大きいと思うが、龍力は便利なものでな。俺たちの生活の一部だ」

「そう、だな……」


確かに、龍魂は生活の一部として大いに役立っていた。

火を起こしたり、明かりを灯したり、電気を流したり。当たり前にそこにあった。

龍魂がない生活など、到底考えられない。


「……この機会に、体験しとくか」

「え?」

「俺は前、お前に『燃えはしない』って言ったよな。その根拠を見せてやる」


そう言いながら、バージルは杖を振りかぶる。


「ちょ、待っ……!」


レイズは慌てて身構える。

彼は、明らかに自分を攻撃しようとしているのだ。


「おらァ!!」

「ッ!」


ブオ、と強烈な風の塊がレイズを貫く。

咄嗟に腕を十字に組み、効果があるか分からないガードを行うレイズ。


しかし。


「え……?痛く……ない……?」


身体全体を包むほどの、巨大な風の塊。

それが通ったのは分かるが、痛みを全く感じなかった。

実際、血一滴すら流れていない。


「ぇ……?ぇ~~……?」


自分の勘違いか?とも思ったが、それはない。

だって、確実に風の塊を受けたのだ。ダメージこそないが、別次元の風が通り抜けたことくらい、分かる。


「……『攻撃対象』以外に危害は与えない。だから、お前にダメージはないはずだ。だから、森の中でも炎龍の力は使える。ただ、特訓は必要だぜ」


『攻撃対象』以外は無害。だが、それにも特訓が必要となる。

暴走したときに畑を燃やしたのも、バージル戦で地面が焦げたのも、まだ力のコントロールができていないため。

龍力を引き出しつつ、そちらの特訓も必須となる。


「な、なるほど……」

「技を打つときは、龍力を武器に寄せて、濃度を少し高めるんだ。それで、叩く」


「こうやってな」と、バージルはもう一度龍力を高め、杖に龍力を流していく。


「おぉ……?」


雰囲気で分かる。バージルの杖から、非常に強い力を感じる。

これは、龍力が彼全体だけでなく、杖にまで行き渡っているためだ。

だから、技を出す際は、より龍力を高めないと、全体的な龍力量が下がってしまう。

殴る際に力を込めるイメージで、龍力も高める必要があるのだ。


「……この状態でこれで叩けば、龍力で攻撃ができる。そんで、風属性も付与できる」

「なるほど。風龍だから、か……」

「そうだ。言い方を変えれば、俺は風属性しか扱えない。他の属性も勉強して、条件が整えば扱えないこともないけど、コスパは悪ぃ」

「へぇ……」


と返事はしたが、レイズの頭から湯気が上がっている。それも、上空に「???」のマークが見えそうなくらいに。

そのくらい分かりやすく、彼の思考は止まっていた。


「何となくでいい。一気に言っても分からないからな」

「……助かる」

「まずは、自分の龍を強く近くに感じることからだ」


レイズの特訓が本格的にスタートし、彼は炎龍の力と向き合うのだった。

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