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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー圧倒的な差ー
129/689

ー平原ー

いこいの村コポマを通過し、シャンバーレに向かう平原。その平原を、ヴァイス平原と言うらしい。

とても見晴らしがよく、いい景色だ。木はあまり生えていない。

下腿の半分以下の高さ。そのくらいの雑草がずっと生い茂っている。

地上の緑と、空の青が凄く綺麗に見える。

また、風も吹いており、レイズたちを心地良い気分にさせた。


「……見晴らしが良い分、魔物を見つけやすいが、魔物からも見つかりやすい」

「了解だ。隠れるのも無理っぽいしな」


草花は自生しているが、背丈の高い植物は見つからない。

もし遭遇すれば、戦闘は必至だ。


「行くぞ。体力には注意しろ」

「……はい」


リゼルが戦闘を歩き、レイズたちはそれに続く。

ちょっとした遠足気分だ。浮かれている場合ではないのは分かっているが、非公式の裏方の仕事ということもあり、道中はまだ気楽だ。


「マリナ、調子はどうです?」

「うん、普通にする分には大丈夫。でも、剣を握って振るとかはまだ難しそう」


手を握ったり開いたりしてみるマリナ。

握ったときの力の入り具合が、以前より明らかに落ちている。

検査結果の数値からも分かるように、以前のように戦えるまでは時間を要する。


「……けっこう歩くみたいよ?」


よそよそしさはあるが、ミーネは彼女に話しかける。

マリナは仲間だ。仲良くなりたい。


「うん、その時は言うわ。ありがとう」

「……ども」


マリナは笑顔を見せる。

その顔を見たとき、無性に恥ずかしくなった。ミーネは結んだ髪の毛先をいじりながらそれを誤魔化す。


彼女たちの少し前で、レイズは歩きながら伸びをする。


「寒くもなく、暑くもない。過ごしやすいな。風も気持ちいい」

「ありがたいぜ。これくらいが丁度いい」


バーバルも同調する。北の寒さはきつかった。

ふと、フォリアの顔が浮かび、バージルは慌てて頭を振る。


(なんであいつが……)


なぜ彼女の顔が浮かぶのか。全く意味が分からない。

それと同時に、あの夜の話を思い出した。

フォリアや『ニヒル』と名乗る者に知られないよう、事前な形でレイラやリゼルたちに知らせる必要があるのだが、高難度だ。

それに、騎士団としても手出しはできない状況。グレゴリーの件も、龍魂の研究のこともある。

ニヒルの存在をにおわせたところで、先送りにされるだろう。

正直、事後報告でもいいような気がしてきた。


(……むずすぎる)


仲間たちは、クラッツから何も聞いていないのだろうか。

リゼルやレイラは聞いていそうなものだが、何も言ってこない。

今は任務に集中しろ、と言うことなのだろうか。


「バージル?難しい顔して」

「ん?あぁ、別に」

「……あいつのことでも考えてたのか?」


レイズは本当に、本当に無意識に「あいつ」と言った。


「な!?フォリアなんか考えてないって!」


フォリア、と言う言葉を聞き、レイズは憎たらしい表情に変わっていく。


「え?あ~~~……フォリアなんて一言も言ってないけどなぁ……?」

「あ……」


こいつ、ハメやがった。

慌てて振り返ると、レイラは満面の笑みだった。ミーネは微笑み、マリナは頭の上に「?」が浮かんでいる。

前を歩くリゼルは、多分無表情だ。


「おいテメー!!それは卑怯だぞ!!」


トマトより真っ赤な顔になるバージル。レイズの胸倉を掴み前後に揺する。


「待てよ!?そっちが勘違いしただけだろ!?」

「んだよ?だったら、お前が言うあいつって誰だ!?」


揺さぶられて、目が回っているレイズ。

ゴニョゴニョとその人物を漏らす。


「……コポマの道具屋のジジイ」

「なんでだよ!?」

「いや、あれで食えてるのかなって……」


確かに、道具屋のラインナップや在庫は絶望的なものだった。

が、バージルはそういうことに気をかけたことはない。店主の背景など、本当に興味がない。


「くっそ……自爆かよ……」

「……フォリアも引き抜きます?」

「!」


レイラは微笑みながら、バージルに声をかける。リゼルが身を固くした気がしたが、気のせいだろう。

素晴らしい提案だが、それを快諾する気分にはなれない。


「……勘弁してくれ」


断腸の思いで、彼はその提案を拒否するのだった。

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