ーいこいの村コポマー
マリナが退院したと当時に、レイズたちはシャンバーレに出発した。
騎士団とは無関係を装っているため、皆思い思いの格好をしている。なんだか、新鮮だ。
「……俺らは変わんねぇな」
「あぁ。(騎士団の服は)何だかんだ楽だった」
「…………」
レイズ、バーバル、リゼルは騎士団の格好に似せている。
動きやすいし、お互い見慣れている。それに、新しいファッションの可能性をそこまで選ぶ気になれなかった。
レイラ、ミーネ、マリナの三人は結構雰囲気が変わった。
レイラは白を中心としたコーデだ。
本人はスカートをはいてみたい様子だったが、ミーネが止めさせた。
少しでも露出を抑えないと、リゼルに殺されると思ったからだ。
ミーネも、レイラと同じように明るめのコーデにしてある。
髪が青空色のため、黒やベージュ色はなんか違う感じに思えた。
マリナは、茶系のものを買ってきていた。
ダルトで見た服も、茶系だった。この色に慣れてるから、とのことだった。
彼らは馬車に揺られ、のんびりと進んでいる。
馬車の中で選んだ服の基準などを話していたら、シャンバーレの手前の村である『いこいの村コポマ』に到着していた。
時間はそれなりに経過しているのに、なんだか、あっという間だった。
コポマはとても小さな村で、騎士団基地もなかった。森の中にある村で、グリージと雰囲気は似ている。
が、不思議とこの村近辺は魔物がおらず、平和に細々と暮らせているらしい。
「……懐かしい感じだ」
「グリージ、か……」
レイズは、グリージを思い出していた。
村の皆は元気だろうか。自分と同じく龍力者となったあいつらはどうなっただろうか。
旅の途中で一度立ち寄っただけのバージルも、同じ雰囲気を感じている。
「良いところですね」
「そうね、ザ・自然って感じ」
自然と暮らす村。
コポマは、そんな感じだった。
散策も兼ね、レイズたちは、村を見て回っていた。
が、観光地でもないこの村は、最低限の設備しかない。
意識してゆっくり見ても、三十分経過していなかった。
宿屋はあるが、綺麗ではない。診療所もあるが、も小さい。食事ができる場所もない。道具屋はあるものの、品揃えは全くだった。
レイグランズの感覚がまだ抜けていなかったため、レイズとバーバルは道具屋のラインナップを見たとき、一瞬思考が止まった。
「「え……?」」
少なすぎる。
少ない上に、在庫もない。
「……少しだけ買い足すか」
「そうだな」
シャンバーレまで、何が起こるか分からない。が、レイズたちが不自由なく変えるような在庫はなかった。
よく使う薬品・道具だけを書い足し、シャンバーレに備える。
「森を出て、平原を突っ切る。そこがシャンバーレだ」
王都で買っておいた地図を広げ、リゼルは進行方向を指さす。
「……いよいよですね」
「シャンバーレに近づくにつれ、魔物も強力になっていくと予想される。バカみたいに突っ込むなよ」
レイズとバーバルを見ながら、リゼルは地図を畳んだ。
二人は最初見られている意味が分からなかったが、女性陣がクスクス笑っているのを見て、意味を理解した。
「「俺たちかよ!?」」
リゼルはそれを無視し、「行くぞ」とコポマを後にした。