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龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー圧倒的な差ー
124/689

ー面談ー

検査が終わり、一息ついたところで、リゼル、レイラとの面談が行われた。

用意された休憩室のような部屋に、三人。


全員総出でないのは、大勢で話しても疲れるだけだからだ。

レイズ、バーバル、ミーネの三人は待機している。


面談前、マリナは彼らと軽く話したが、全員変わりなさそうだった。

新たな仲間であるミーネはもごもごしていたが、マリナの方も人見知りが一人加わったことは聞いていたため、気にならなかった。


そして、面談が始まる。


「……で、今後のことが」

「うん」


マリナは唇を固く結ぶ。


自分は騎士団員ではない。

戦闘で見聞きしたことを忘れ、一般人に戻れと言われる覚悟はできている。


あの時より強くはなったが、それでも自分は足手まといだと思う。

荷物を抱えて先に進むことはないだろう。今の彼らに、そんな余裕はない。


「僕たちは、シャンバーレに向かう」


彼の口から出てきた言葉は、『帰れ』ではなく、町の名前だった。


「シャン……バーレ?」


聞いたことのない町だ。無意識に反復していた。

マリナ自身、ダルトから出たことがなく、地理が頭に入っていない。そういう意味では、知らなくても仕方のないことである。


「シャンバーレは南にある、武道の町だ」

「……へぇ」

「そこなら、龍魂について、何か分かるかもしれない」

「んっと……?」

「騎士団とは溝が深い。だから、僕たちが知らないことがあるかもしれない」

「うん……」


リゼルはスラスラと話しているが、こちらとしては、話が見えてこない。

確かに、龍魂のことはよく分かっていない部分も多い。が、なぜそれを自分に話すのかが分からない。

今の話で、武道の町に騎士団が可能性を感じていること。それだけは分かった。


「リゼル、もう少し分かりやすく言わないと……」


思考が停止しているのを見抜かれたか、レイラがリゼルに囁く。


「あぁ……ち……」


そこで初めて、マリナの困惑している姿が目に入る。

否、見えてはいたのだが、落ち着いて話せない(個人的な)事情があり、こちらの用事を優先してしまっていた。


少々分かりにくかったかもしれない。


今までは、それなりに話の通じる者同士の会話だったり、指示と言うか、従わせることの多い会話だったりした。

マリナは一般人で、来るかどうかは本人次第。

分かりやすく、かつ個人で判断ができるように言わなければならない。

それに加え、リゼルの説明が荒いのには理由があった。


「……ゆっくり説明する」


シャンバーレのこと。

騎士団基地が存在せず、協力関係にないこと。

それでも、シャンバーレ内や周囲の地域でのトラブルも自分たちで解決していること。

すなわち、解決できるだけの『力』があること。


「え?それって……」

「あぁ。シャンバーレには、騎士団の知らない力があるかも知れない」


ただ、その町と協力関係がないため、大っぴらに『騎士団』として調査はできない。

が、シャンバーレの実態を知るために、調査が必要になっていること。

そして、自分たちはこれからシャンバーレへ『旅人として』行くこと。


「旅人?」

「あぁ。騎士団の名前が使えない以上、そうするしかないだろう。一般人として、強さを探る」

「……レイラは?」

「行きますよ。身分を隠しますし、指摘されてもよく似ていると言われる、でごまかします」


彼女の謎のドヤ顔。

レイラ自身ニュースに乗ることは多くないが、ゼロではない。

バレる可能性はあるのだが。


「え~……?」


本当に、本当にそれで行けるのだろうか。

いくら騎士団と協力関係にないとは言え、一国の王の顔くらいは知られているはずだ。

そして、騎士団に籍を置いていることも。

まぁ、本人が行くならそれでいいのだろう。


「ここまでは僕たちの置かれている状況だ」

「…………」


なるほど。

救った礼(?)を兼ねて説明してくれたのか。

ここからは、口外禁止の念書でも書かされて、ダルトに戻されるのだろう。


「本題は、ここからだ」

「……うん」

「レイラたちと一緒に行きたいか?それとも、帰りたいか」


突然の選択肢。思考が止まる。


「え……?」


いきなり何を言うのだろう。

質問の意図が分からない。が、徐々に意味が分かってくる。


「それって、つまり」

「一緒に行くか、止めておくか、だ」

「!」


思わずレイラを見る。彼女はニコニコ微笑んでいる。どうやら、本気らしい。


「……今、わたしこんなだけど」


検査結果の用紙を差し出す。体力、龍力レベルは低下し、同年代の一般女性よりも力はない。

リゼルはそれを受け取りはしたが、一切見ようともしない。


「見て……こんなに落ちてる」


マリナは視線を落とす。

しかし。


「関係ない」


リゼルは力強く言う。


「(力が)……戻るかも、分かんないけど」

「関係ない」


そこで、マリナの顔が上がる。リゼルはまっすぐ自分を見つめ、「能力なんか関係ない」と繰り返す。

個人で努力し、龍力を使えるようになった。そして、その力で自分たちの命が救われた。それだけで十分だと。


「……!!」


マリナは目が熱くなるのを感じた。

返事は、もちろん決まっている。

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