ー再起ー
グレゴリーとの戦闘から、一週間は経っただろう。
日に差はあるが、一人、また一人と目が覚めていく。
メンバーが目覚める度、リゼルは、あの時の状況を一人一人に説明する。
一括で説明しても良かったのだが、しつこく聞いてくるのだから仕方ない。
最終的にはグレゴリーを取り逃がしたが、マリナ=ライフォードのおかげで今があることを。
「マリナが!?」
「龍を使えるようになったのか!?」
「……あぁ」
マリナの名前を出した時、ミーネ以外は驚いていた。
彼女があの場にいたこともそうだが、自分を犠牲にするような半暴走状態となり、自分たちを救ってくれたこと。
どれだけ感謝しても、し足りないくらいだ。
戦闘後の説明は都度終えたが、今後については話していない。
そっちは一括で、リゼルはメンバーを集めて説明を始めた。
マリナのことが気になるため、まだ病院は離れない。そのため、小部屋を間借りしている。
そこには、レイズ、バージル、レイラ、ミーネがいる。
「……今後の予定だが、僕たちはシャンバーレに行く」
クラッツとの詳しいやり取りを、四聖龍のことを省いて説明し、シャンバーレに向かうことを伝える。
騎士団は、正式ににマナラドと研究を進める。あの町との連携は、更に強くなるだろうということも。
問題なのは、自分たちへの任務だ。
シャンバーレは騎士団と繋がりはない。よって非公式の任務であること、騎士団に繋がる物は、一切持って行かないことも伝える。
「だから、旅の途中と言う設定だ。ボロを出すなよ」
レイズとバージルを見るリゼル。
「っ……分かってる」
「ま、俺はずっと旅してたし、その頃に戻るだけだ」
「旅人……」
魔物も強力なことが予想される。そのため、そちらの面でも鍛錬になることも伝える。
シャンバーレで何も見つからなくとも、それと戦うことで積むことは可能だと。
「なら、あいつは放置か……」
グレゴリーから手を引くことに、ひどく抵抗がある様子だ。
しかし、深追いしたとしても、戦って勝てる相手ではないことは重々承知だ。
「僕たちの任務ではなくなっただけだ。放置はしない」
騎士団としても、グレゴリーを野放しにはしたくない。
しかし、戦闘直後で見つからなかったのだ。もう遠くへ雲隠れしてしまったのかも知れない。
それと同時に、未だ謎の多い龍魂の研究に時間を割き、戦力を整えようというのだ。
グレゴリーはこの世にいないことなど、リゼルたちは知る由もない。
「それに、戦力差は圧倒的だった。単に追いかけても、死傷者が増えるだけだ」
「それは、分かってる……けど……」
そう。
頭では分かっている。
居場所を掴み、追ったところで、返り討ちにあうだけだ。
「とにかく、そっちはクラッツに任せる。僕たちは、シャンバーレで何かないか見つけるんだ」
「……分かったよ」
渋りながらも納得する者。
「リゼルが言うなら」と信用する者。
複雑な状況は分からないが、リゼルの言うことは理解できるため、行く、という者。
反応は様々だったが、嫌だ、と反対されることはなかった。
「そのつもりでいてくれ。で……」
一旦話題を切るリゼル。
そして。
「……マリナについてだが」
「!」
彼女については、クラッツから提案があった。
今回の任務は表面上、騎士団とは無関係に行われる。よって、入団していようがいまいが、関係のない任務だ。
彼女が同行したいと言えば、それに従う。
行きたくないと言えば、旅費を出し、帰ってもらう。
と。
要するに、彼女の意思を尊重するのだ。
「あぁ。それでいい」
「来るに決まってるけどな」
「ふふ、賑やかになりますね」
そちらの案については、反対意見は出なかった。
「マリナ……さん」
ミーネのみ、マリナと面識がないため戸惑ってはいたが、命の恩人だ。断る理由がないと言ってくれた。
(レイズと同じ、エラー龍力者……でも、乗り越えて、強くなってる人……)
負けていられない、と彼女は拳を強く握り、決意を新たにするのだった。