表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍魂  作者: 熟田津ケィ
ー堕ちる龍ー
109/689

ー倒れる仲間ー

どす黒い龍力オーラに包まれるグレゴリー。凄まじい龍圧が周囲に放たれる。

レイズたちは一応龍魂状態でいられているため、過度に影響は受けないが、全くの無影響ではない。

推されるような感覚と、肌を刺すような感覚を覚えていた。


「うし、やるか~」


エネルギー充填が終わったのか、グレゴリーは一度屈み、その反動で飛び上がった。

自生している木々よりも高く跳ぶほどの跳躍力だ。


それにつられ、レイズたちは上空を見上げる。

黒い太陽が出現したかのような、そんな景色が広がる。


「何を……!」


グレゴリーは知らぬ間に短剣を納めており、空いた片手を空高く上げていた。

そして、その手には闇のエネルギーが蓄えられている。


「一帯を吹き飛ばす気か!?」


バージルは叫ぶ。

そのくらい、造作もないと言えるであろう力。


倒れている騎士団員からは離れて戦えているが、攻撃範囲が分からない。

ここで食らってしまえば、彼らまで巻き添えを食らうのは間違いない。


「固まれ。龍力解放で凌ぐ」

「はいっ!!皆さん!!」


リゼルの指示で、一点に集まるレイズたち。

個々の龍力では防ぐことができない。が、集まってガチガチに身を固めれば、耐えきれる「可能性」がある。


「全力だ!」

「はい!」


身を寄せたことで、よく知る龍力で包まれるレイズたち。

その安心感からか、レイズとミーネの緊張が少し解れる。調子が戻ってきた気がする。


それでも、あの龍力と張り合えるほどのものではないと思う。しかし、他に案はない。


「カオスフレア!!」


手が振り下ろされるのと同時に、闇色の炎が落ちてくる。

メインの巨大な炎。そこから離散していく小さな炎で構成された、強力な龍術。

離散した炎も、当然物を燃やす力がある。


(闇龍派が、炎龍の知識を……)


ギリ、と歯を鳴らすリゼル。

他属性の龍力を扱うことは不可能ではないが、簡単ではない。

他属性の龍を理解し、自分の龍力構成と織り交ぜることで、扱うことができる。

文字だけ見れば簡単そうだが、相当量の勉強と訓練が必要な技術だ。ただ、騎士団が知らない秘密道具でもあれば違うのだろうが・・・


「落ちるぞッ!!」

「皆さん!!耐えて!!」


ずん、と重力が何倍にもなったかのような圧力。

炎属性も持ち合わせた力のため、熱を強く感じる。

ミーネの氷の力も、差があり過ぎて何のアドバンテージにもなっていないのが現実。


「ッ~~~~~~~~!!」


半径25メートルは、その暗黒炎の餌食となった。

円状に広がり、消えていく炎。

広大な範囲を焼き尽くしたそれだが、中心だけは、ほぼ無傷だった。


「ほ~う?」


カオスフレアの余韻か、まだ空中待機したままのグレゴリー。

地上の様子を眺めている。追加攻撃をしてもいいが、こちらも力を使いすぎた。

範囲を余計に広げてしまったため、追い打ちは身体的にキツい。それと、年齢的にも。


そんなグレゴリーの攻撃を耐えきったレイズたち。


「はぁ……はぁ……」

「んだよ、この力……」

「……無事か!?」

「えぇ……何とか」


大きく呼吸をし、整える。

何とか受け切った。ダメージは受けたが、まだ戦える。

しかし、まだ闘えるのは、全員ではなかった。


「ちょ……ゴメン」


ミーネの力ない声。


「ミーネ!?」


彼女は剣を杖代わりにし、立とうとしていたが、限界だったようだ。

気を失い、無抵抗のまま地面に倒れた。剣が音を立てて地面に転がる。


すぐにレイラは屈み、息を確認する。


「……大丈夫。気絶しているだけです」

「回復を……」


レイズが言いかけたとき、グレゴリーは着地していた。

倒れたのが一人だったことを確認する。


「一人か~加減しすぎたかな~?ま~いいか?終わりじゃないし?」


とても残念そうだが、まだ戦えることに嬉しさもあるようだ。


「あぁぁぁぁぁああ!」

「くそがあああぁぁぁああ!」


レイズ、バーバルは飛び出した。

仲間が一人倒れたことで、焦りが出てしまっている。


「落ち着いて!無茶です!!」


レイラは止めようとするが、無駄だ。彼らの耳には届かない。

レイズはともかく、バージルまで。これは、相当「きて」いる。


「うん、勢いは良いよ~?」


グレゴリーは満足そうに微笑む。まだ玩具は動く。

二対一の戦い。それでもグレゴリーが優勢だ。ただ、注意は二人に向いている。


そのスキをつけないか、と、リゼルは今のうちに詠唱を始める。

そして、闇龍の紋章を描く。


「……ダークランス」


闇の槍を具現化し、グレゴリーに撃つ。が、やはり無駄のようだ。


「甘いよ~!?」


『ブリリアント・ランス』と同じように手前で止められ、破壊された。


「ち……」


思わず舌打ちする。真っ向勝負では戦いにならない。


「これで三人目だ!!」

「ッ!?」


グレゴリーが叫ぶ。

『カオスフレアクラスの攻撃が来る』というイメージが脳裏に浮かぶ。

どうしたって、そのイメージは拭えない。剣を交えていたレイズ、バージルは一瞬怯んだ。

彼がそのスキを彼が見逃すはずがない。彼は踊るように一回転した。


「デス・ステップ!!」

「が……!」

「は……!」


一回転した後の短剣には、レイズ、バーバルの鮮血がこびりついていた。

二人は声にならない呻き声を上げ、その場に倒れた。


「レイズ!!バージル!!」

「よせ!!」


レイラは走る。後を追うようにリゼルも走る。

レイラを死なせるわけにはいかない。


グレゴリーは何者かの指示を守っているようだが、所詮は殺人鬼だ。

いつその血が騒ぐか分からない。


「あ~と二人!」


走り出した二人を見て、彼は満面の笑みを浮かべる。

戦いが、血が好きなのだろう。


「光龍鋭剣!」


レイラが斬りかかった瞬間、グレゴリーが消えた。


「え……?きえ……」


その瞬間、レイラは腹部に激痛が走った。


「ッ!!」


すでに腹を斬られていたのだ。

グレゴリーに背後に回られたことに気付く頃には、彼女は既に膝を付いていた。

堪えようと歯を食いしばるが、体力は残っていない。そのまま意識が薄れ、気絶する。


「……レイラぁぁぁぁぁあ!!」


リゼルはありったけの龍力を解放した。そして、最大級の技をグレゴリーにぶつける。


「崩龍剣!」

「!」


それは、グレゴリーの鎖骨にヒットした。

皮膚を割き、骨にダメージを与えた。

それなのに。


「クソが……」


グレゴリーは、笑ったままの顔でそこに立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ