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Ordinary Days  作者: 早瀬 薫
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第三章

 図書館からの帰り、いつも立ち寄るのが駅前のコンビニで、僕達はいつもそこで買い食いする。今の季節、惣菜パンやおにぎりが主流だが、冬になるとそれが肉まんやカップラーメンに変わる。コンビニにはちゃんと電気ポットにお湯が用意されていて、いかにも立ち食いして下さいと言っている様な具合だった。しかし、外で立ち食いしていると近隣から高校に苦情が来るらしく、担任は「外で食べるな。店の中で食べろ」と朝の会で注意を促した。そのうち、コンビニの中に、小さなテーブルと椅子が用意され、僕達はそこの常連になった。中学生の時は買い食い自体が校則違反だったが、高校生になると、「何をしてもいいが見苦しいことはやめろ」と先生は言っているんだなと解釈した。世間の大人は、高校生が制服を着てアベックでいちゃいちゃしながら下校していると目障りなのか、そういうことに関してもいちいち学校に苦情が来るらしい。けれども、生物の先生は「健全な成長過程を歩んでいる証拠」と言って一笑に付した。まったく、高校の先生は素晴らしい! 中学の時と違って、なんでこうも一気に緩くなるのか? もしかしたら、その劇的変化に生徒の方が戸惑っているということを、先生達は知らないのかもしれない。

 小夜子と自転車でコンビニの前を通ると、ほとんど条件反射のように腹の虫が鳴り出すので、僕はとにかくコンビニの中へ直行して惣菜パンやおにぎりにがっつく。一方、小夜子はと言うと、いつもドーナツやらメロンパンやらやたらと甘いものばかり食べていた。

「お前、よくもそう毎日毎日甘いもんばっかり食えるな。俺なんか空きっ腹にそんなもん食ったら吐くぞ」

「女は男とは違うんだってば。毎日、チョコレート食べてるし。チョコが無かったら、私生きていけない」

「だったら、バレンタインのチョコは女が男にやるんじゃなくて、反対だったら良かったのにな」

「でも、それだったら、商売上がったりだよ。イベント好きなのは女の方だからね」

「そうか。……あ、忘れてた、ホワイトデーに小夜子に返すの」

 小夜子は僕のその言葉で気分を害したのか、暫く僕の顔を睨み付けていたが、急に「ふん!」と言いながら踵を返すと、僕を残してさっさと家に帰ってしまった。藪蛇だったと後悔しながら、八月の彼女の誕生日はどうにか忘れないようにしなければと、「八月三日、八月三日」と念仏のように唱えながら帰路についた。


第四章に続く

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