第十五章
三月一日、第八十八期生の僕達は高校を卒業した。女子生徒も保護者も泣いている人が随分多い。いつもポーカーフェイスの僕でさえ、気合を入れていなければ涙腺が緩んでしまいそうだった。小学校より、中学校より、妙に胸に迫るものがあった。全国に友人達が散らばってしまう。これきり会えなくなる同級生が一体何人いるんだろう? 僕は学友達の顔を一生記憶に留めておこうと目を凝らして辺りを見回した。
校門のところで下級生に花吹雪をかけられ、拍手で見送られた。混雑を掻き分けそのまま帰ろうとすると、誰かに腕を掴まれた。担任の横田先生だった。その隣には田辺先生がいる。
「卒業、おめでとう。大学に行っても頑張れよ」
「はい」
「汐見、残念だったな」
「そうですね。でも、もうすぐ退院出来るそうですよ」
「そうか! それは良かった!」
「先生、あいつのこと頼みます」
「分かってるよ。俺に任せとけ。お前も頑張れよ」
そう横田先生は言うと、僕の背中をバンッと思い切り叩き、田辺先生はにっこり笑い、親指を立てそしてこう言った、「桧垣、絶対後悔せんようにな」と。僕も田辺先生と同じように親指を立てて、笑い返した。
第十六章に続く




