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概念神秘を身に纏う世界でのレポート  作者: おっさんしどるふ
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開戦(オープンウォー)

脳裏を過る妄想に支配されたなれの果て

バッチバチの戦闘モノも書いてみたかったんじゃが思いの外難しい

ここに一冊の本がある。うん?書きかけ?そうだろうとも。これは要するに現在執筆中という形だ。現代にいたるまでを綴った歴史書。言わば正史とも言うべきもの。人類が、知的生命体がその存在を消滅させるまで書き続けられる書物。

これはこれで面白い読み物なのだが、しかし読み続けるのは少し疲れるしちょっと飽きてきた。そういうこと、あるだろう?好きな作家、好きな作品なのだが、ちょっと展開的に冗長になってきた時とか・・。


それは置いといて。


まぁなんで急にそんな話をしたのか、そういう顔をしているね。ではその質問にお答えしよう。ここに正史と同じ背表紙バックボーンの本があるじゃろ?最初の方は正史のほうをパク・・・同じように書いたものだ。


なんだね、なにか文句がありそうな目をしているが。ない?よろしい。


そして、とある時代・とある時点でここに、こう・・・少し加筆修正したものだ。そう、正史ではない筈のものを書き足しのだよ。本来なかったものが、一体どういう結末へと導くのか。実に面白そうだろう?


何を足したのか?

そうだね、一言で言えば・・・


神秘・幻想といったものの存在、かな?


―――

――


ウゥゥゥ!と警報が島の基地に配備されているスピーカーから垂れ流される。フォークで刺したヴルスト(ようはソーセージだ)を口に含む直前だった手が止まり、忌々しそうにスピーカーを、名残惜しそうにヴルストを見たのち、深々とため息を零す。次の瞬間には自身の銀髪を揺らし椅子を倒しながら勢いよく立ち上がる。見れば同僚たちも立ち上がり、既に駆け足で走り始めていた。


屋外では既に教導士官が号令台の上に立ち、自分を含め集まった者達をぐるりと見まわして一つ頷く。それを確認した副官が声を張り上げる!


傾聴アテンション!」

「――緊急事態であるため早急に伝えよう。領域侵犯である。各員はこれより緊急進発する!魔導伝令具の電源を入れろ!直ぐに出るぞ!」

「「「ハッ」」」


胸に植え付けられた金属とその中央で紅く灯る宝石のような装置。軍服の上から身に着けた肘から先を覆う金属鎧・バンブレースと、脹脛から下を覆うグリーブが異様に映るが、胸につけられた装置から伸びるケーブルがそのエネルギーを送り込む。


「トートの心臓を起動、十三式・魔導強化外骨格マギ・ルストンへと動力供給を確認。進発します」


言葉に従って胸元の紅い光が一際輝き、手足を覆う黒い金属鎧に幾何学的な紋様もまた紅く輝くと、足底からの魔力放出によって瞬時に上空へと飛び上がる。ほぼ全員が一糸乱れぬ飛行で高度四千まで到達すると、四人一組の編隊をとる。


「軍曹、C班は一名欠員が出ております」

「ホルストの阿呆はそういえばケガで休暇中だったな。だが問題ない、俺がお前らの編隊長を務める」

「了解、カウニッツ軍曹を編隊長と設定」

「遅れるなよ、ひよっこ共!全員、視覚補助を入れろ!」


軍曹と呼ばれた厳つい顔の刈り上げ頭の中年男性が声を張り上げると、全員の首筋や目元に赤い光が流れ、虹彩をも紅く輝かせる。


「視覚補助、千里眼ヘルゼーエンの起動を確認」

「西北西、仮想敵影を確認!」

「焦るなひよっこ!おい、シュターミッツ訓練兵。オマエ、口回るだろ?勧告してみるか?」

「お戯れを。軍紀に基づき隊長が行ってください」

「おーおーかてぇかてぇ。そんなんじゃ嫁の貰い手がいなくなるぜぇ?」

「余計なお世話、と具申します。それより―――」

「わーーってるっての。オープンチャンネルに設定、あーあー・・うん。所属不明の者達へ告げる!こちら帝国軍ヘルゴラント島防衛隊!貴殿らは我が帝国の領域を侵犯している!直ちに進路を引き返せ!繰り返す、直ちに進路を引き返せ!」


強化された視覚によってズームされた先には、正史でいうなれば水上バイクのような機体に跨った男達が映し出されており、カウニッツ軍曹の勧告でその動きを止める。


「我が編隊の誘導に従い即刻領域を脱出せよ」

「――――」

国籍不明目標ボギー、返答なし。されど動きもありません」

「分かっている。焦るなよひよっこ共。直にパトロール中の329魔導中隊が戻ってくる。俺たちは奴さんらのエスコートだけすればいい」

「エスコートに従わなかった場合は?」


水平姿勢となって空中を飛行しながらシュターミッツと呼ばれた銀髪の女性が問えば、カウニッツ軍曹がその厳つい顔を凶悪に歪め(笑顔)て答える。


「訓練の成果の見せどころになるだけだ。各員に通達、・・・油断するなよ」

「――了解」


紅く輝く光―魔力光―の軌跡を残しながらどんどん相手へと近づいていき、それにつれて軍曹以外の者達の形相が険しくなっていく。それは互いの有効射程圏内へと近づいていることを示し――


「――ッ!『敵機バンディット』、魔力収束を確認!!」

「来るぞ!!散開ブレーク!!


機首に碧色の魔力光が灯った瞬間、それは弾丸の様に・・否、まさしく弾丸となって飛来する!

半年以上の怒号が体に染みついたこともあり、軍曹の命令にまず体が反応し緊急回避行動をとり、雨霰と飛来する弾丸を避けていく。


「HQ!こちらイエーガー1!所属不明改め敵機より攻撃を受けている!ただちに反撃許可を!」

『こちらHQ、発砲は許可できない。交戦規定に従い行動せよ』

「くそったれぇ!!こちらヘルゴラント島防衛隊!これ以上の発砲は敵対行動とみなす!!直ちに攻撃を止めろ!!」


相手に掌を向けた勧告、その返答は迫りくる雨霰の魔力弾。舌打ち一つついた軍曹は十三式掌部魔弾砲を向け、魔力を充填する。


「HQ、こちらイエーガー1!銃口での威嚇勧告を失敗、これより警告射撃に入る!」

『了解イエーガー1』

「止まれオラァ!」


掌から放たれた一条の光は、しかし相手に当たることはなく機体のすぐ横を通り過ぎ、相手も回避行動に入る。


「繰り返す、直ちに引き返し帝国領空から脱出せよ!!」

『――』


再度の返答も、やはり光弾による斉射であった。それに対し、まさにオーガの形相で睨み返すと、マギルストンへ魔力を流し込む。


「HQ、こちらイエーガー1。威嚇射撃効果なし。これより交戦に入る!」

『了解、イエーガー1。交戦を許可する。・・・現在329魔導中隊がそちらに急行している。持ちこたえろ』

「ハッ!持ちこたえる?聞いたか野郎共!!飯の時間だ、食っちまえ!!」

「「了解!!」

「相手は旧型!訓練通りペアでやりゃ倒せる!!シュターミッツ!お前は俺とだ!!」

「了解、イエーガー1。当機はこれよりイエーガー2としてバックアップします」

「いくぞオラァ!!」


部隊全員のマギルストンに赤い紋様が強く輝き、キィィィンと甲高い音が戦闘空域に響き渡る。そして次の瞬間、各員が即時に最高速へと至り相手へと迫る。


「イエーガー2、フォックス3!」


超高速飛行に入ったイエーガー1の後方から、イエーガー1とは違い単発の光弾を両手で連射し弾幕を張るイエーガー2。回避行動に入った水上バイク、〇四式魔導航空機のその真下に入り獰猛な笑みを浮かべたイエーガー1が掌を天に向け―


「イエーガー1、フォックス2!!」


掌から輝く光線が相手の全身を貫き、そして天高く伸びていく。次の瞬間、爆発を起こす。


「バンディット1、沈黙。っ!イエーガー2、フォックス2!」


離れた位置から観測していたイエーガー2だが、イエーガー1へと機首を向けるバンディット2,3に向けて中距離魔晄砲を放ち牽制すると、イエーガー1がチラリと彼女に視線をよこす。それに一瞬動きを止めるが、次の瞬間には頷き高速でバンディット2へと魔弾式魔晄砲をバラまきながら接近する。

バンディット2も熟練のパイロットなのだろうが、機動力の違いが如実に現れ、さらには腕の向きによって攻撃方向を決められる新型の自由度の高さに苦戦し、回避行動を余儀なくされる。

飛び交う紅い弾丸が頬をかすめ、機体を掠めていくことに焦りと冷や汗が体を巡っていく。そして、機体後方に衝撃を受け、何事かと一瞬振り替えれば自身の僚機が焦った表情で自身を見た。


「イエーガー1――」

「イエーガー2――」


その声にハッと視線を戻せば、新型の二人が離れた90°違いでその砲口をこちらに向け、魔力光を輝かせている。


「「フォックス1!」」


十字に交差した特大の魔晄砲がその奔流に二人を飲み込み、パイロットを蒸発させ機体を爆発させる。爆風に髪を揺らされながらイエーガー2、マルグリット・シュターミッツは周囲を見渡し、次々と撃墜されていくバンディット達に目を細める。


「中々やるじゃねぇかシュターミッツ訓練兵」

「――軍曹」

「俺と十字砲火を合わせられるとは思わなかったぜ」

「お言葉ですが、アイコンタクトなどという非合理的な伝達方法は容認しかねます」

「そう言うなよ、ひよっこ共とは言え新型を使える選び抜かれたエリートだろ?」

「その新型を受領後三日で使いこなしたという貴方に言われると皮肉としか思えません」

「オマエ、仮にも上官に向かっていうのな・・・」

「これは失礼しました軍曹殿。私は正論しか話せないものでして」

「コイツ・・・。はぁ、まぁいい。各員、報告!」


軍曹の言葉に、全員が編隊を組みなおして空中で姿勢制御を行う。その中で各小団体の先頭二名が敬礼をしながら返答する。


「A班、敵機撃墜を確認、班員に損耗なし!」

「B班、同じく敵機撃墜を確認!班員損耗なし!」

「・・・C班、敵機撃墜。損耗ありません」

「よォし!上出来だひよっこ共!まっ、旧型を相手に損耗するようじゃ訓練をやり直す必要があったんだが・・」

「軍曹殿!御免被るであります!!」

「よォぉし、諸君!ハイキングは帰るまでがハイキングだ!俺よりおせぇ奴は筋トレメニューその5だ!」

「全員、直ちに帰投!!」

「「「「了解!!」」」

「え、はやっ!なんだお前らのその連帯感!!訓練中にもそれを見せろ!!」


ギャーギャー騒ぐ声をかき消すようにキィィィンと爆音を轟かせながら全員が赤い魔力光を残しながら飛んでいく。


―――


ザァァとシャワーから流れる温水が自身の出るところは出て引っ込むところは引っ込んだ体を流れ落ちていく。訓練ではない・・演習ですらない実戦の空気に触れた手は、微かにだが震えていた。


「初陣に緊張、か?なんだ、存外まだまだ『人間らしい』じゃないか私も」


頭上から降り注ぐシャワーにその長い髪が濡れて顔や体に張り付き表情を、そして同性ですら見惚れる様なスタイルをも隠している。


「戦闘行為による精神的高揚を認めるものの、思考能力全般の低下は見られず。しかしアレだな――」


視界に入る銀髪を払いのけ、その表情を晒す。戦闘中は能面にすら思えた無表情は、今では口元をそして目元を三日月状に歪めていた。


「フ、フフフ・・!アリを踏み潰す、というのも楽しいモノだな!」


帰投後、基地司令部から降りた言葉は『開戦』。その言葉を思い出す度、胸元に埋め込まれた金属の台座とその中央に光る宝石、『トートの心臓』が熱くなる。それと同調するように瞳や体の各所が赤く光を発していく。


「戦争、戦争!屍山血河を築くのは果たしてどちらになるのか!フフフ!」


パシュっと軽く弾ける音がした直後、彼女の髪や体を流れていた水滴がすべて弾き飛ばされ、それと同時に彼女の表情が歪んだソレから無表情へと戻る。


「―――魔力使用による精神汚染を確認。『トートの書庫ライブラリ』共め、面倒なものを・・・」


胸元で光る宝石をにらみ、抑揚すら消えた言葉を口から吐き出しながら脱衣所に戻り手早く着替えを済ませていく。下着代わりに着込むタイツ状の魔力同調着アンダーウェアを着こみ、さらにはその上から軍服でその肢体を詰め込んでいく。

襟元や裾に赤いラインが特徴的な黒い軍服を着こなし、男装の麗人とでも言えそうな彼女は颯爽と廊下へと躍り出る。


「――どこの誰に手を出したのか、連中に理解させてやる」


鋭利な刃を思わせるその瞳は、やはり赤く輝いていた。

優先順位はもう一つの作品の方なので、こっちは妄想が滾った時の更新になるかも

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