寝かせない彼女
彼女と付き合い始めたのは、ほんの一週間ほど前だろうか
コンパの帰りに、泥酔している彼女を、そのまま自分のアパートに連れ帰って
無理やり寝室に、運び込んだのが、始まりだが
どういう訳か、それから彼女は、自分にべったりであり
僕の友人にそのことを話すと
「ストックホルム症候群じゃないのか、それか、情が湧いたか」
何でもストックホルム症候群とは、あまりにも緊迫した状態
過度のストレスが加わると、それを、引き起こした相手を、好きになってしまうらしい
そういう話を聞くと、祟り神を、信仰してしまう日本人みたいなものだが
しかし、彼女はどういう訳か、仕事にもいかず
常に、僕の周りを、うろついた
性欲が、高まると、彼女を捕まえて、トイレに、引きずり込むなんてことは、しょっちゅうだったが
困ったことに、家に帰っても、彼女は、僕のそばにいた
そして、絶えず、僕に話をし
体を許した
ただ、それも、三日を過ぎると、僕の体力と精神力は、限界を迎えていた
三日連続で、寝ないと、さすがに精神がおかしくなる
会社の中に、彼女は平然と、入って来るし
僕が眠ろうとすると
肩をつつき話を始める
で、また眠ろうとすると
先ほどよりも強く体を揺さぶる
僕は眠ることを許されなくなった
四日目
僕は、全力でアパートに帰ると、鍵を閉めた
窓全てに、鍵をしているのも確認済みである
軽い夕食を済ませていたとき
戸が開いた
彼女は、手に、鍵を持っていた
僕は、愛想笑いを浮かべながら
彼女の横を通り過ぎると
外に出ようとした
が、何か強い衝撃が、手から体を、引き留めた
銀色の手錠が、僕と、家の柱をつないでいた
「眠れない、眠れない、眠れない」
一週間が過ぎようとする
彼女が脱いでも一向に反応が無い
彼女の会話が、頭の中に、蓄積して
感情 意識が、押しつぶされ混ざり合い
思考が混濁してきている
眠りたい