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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第六章 作ろう獣人の国
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第78話 59日目 代償は目玉

 おはよう、フォルナです。今日からアイドリーによる『ぶーときゃんぷ?』というものをするらしいの。私は何も持たずに門の前まで来てくれと言われてその通りにしたのだけど、


「アイドリー……その恰好は?」

「気分かな」

「えぅ……?」


 何故か色がツギハギの暗色で纏まった服を身に纏っていた。森の中では隠れやすそうだけど。アリーナもその隣でキリっと敬礼してるし。もしかして制服なのかな?

 一応動き易い冒険者スタイルの服と防具をメーウに用意して貰ったけど、私も合わせた方が良いのかな?


「気にするでないぞ。妖精のノリに乗ったら帰ってこれなくなるからの」

「へーんだ、仲間はずれ~」

「はずれー♪」

「ぐぬぅぅ~~」


 レーベルはいつも通り赤いドレスの上から白いローブを身に纏ったいつもの服装だった。それも結構特殊な部類だと思うんだけどなぁ……





「さぁフォルナ。城のお仕事はとりあえずメーウさんに任せて、今日から1ヶ月私達と一緒に鍛える訳だけど、覚悟は良い?」

「うんッ!!どんな辛いことでもやるよ私!!」

「よし、じゃあ早速行こうか。レーベル、変身」

「うむ」


 レーベルを3人が乗れる程度の大きさのレッドドラゴンにして飛び立つ。元の大きさだとシエロに見つかった時かなり面倒だからね。そのまま森の方面に向かった。


 その途中、フォルナが私の服をクイクイと引っ張り、


「あの、どうやって強くなるのか具体的な内容とかは?」

「ん?簡単だよ。レベル上げは私達が動けなくした魔物にフォルナが一発攻撃して私が倒し、スキルのランク上げは私とアリーナで付きっ切りになる感じ。私もアリーナもレーベルも、皆戦い方が違うから、模擬戦もどんどんやっていくよ。勿論手加減はするけど、痛いだろうから頑張って」

「……はい」


 訓練の内容を聞いて多少顔が引き攣るフォルナ。うん、ごめんね。少女にこんな鬼畜なことしたくないんだけど、こうでもしないと多分オージャスに勝つのは非常に難しいのよ。



フォルナ(8) Lv.1


種族:狐人


HP 60/60

MP 8/8

AK   15

DF   10

MAK  17

MDF  18

INT  760

SPD  22


【固有スキル】狐火

 

スキル:無し


 ステータスがゴブリン以下なんだよね……。まだ獣人といっても身体の出来ていない歳だからしょうがないとは思うけど、これでは生半可な鍛え方じゃまず勝てない。ここは心を鬼にしてでもやらないと。


 そういえば1個気になったこの固有スキルの『狐火』は、フォルナの一族全員が持っているものらしい。


・狐火

『狐獣人だけが持つ固有スキル。ステータスの平均値に依存する火属性魔法の一種。イメージによる魔法なので、詠唱は必要無い』


 という感じなので、これは武器になるかなぁと考えた。火属性限定だけど妖精魔法と同じでイメージ重視だからね。使い様だと考えて戦いのメインにしようかと思ってる。





「はい、ということで到着だね。お疲れ様フォルナ」

「う、うん……ここは?」


 降り立ったのは、暗い森の中。空は木々とよく分からない何かの細かい枝の集まりで構成された巣ような物に覆われていた。そしてアイドリーは抑揚の無い声でフォルナに言った。


「産卵時期のワイバーンの巣の直下かな」

「……え?」


『ぎゅいぃぃぃいいいいいんッッ!!!!』



 甲高いワイバーン特有の泣き声が森に複数響き渡る。フォルナは即座に剣を抜いてガタガタ震え出すが、アイドリーは指先から光る輪を出してクルクル回しているだけだった。レーベルはレーベルでアリーナを抱きしめてほのぼのしてるし、アリーナに関しては眼を擦って眠そうにしているだけだった。



「き、緊張感とか無いのッ!?」

「勇者より強ければ多少は」

「そうだったぁ……」



 ワイバーンが一斉にこちらへ飛んで来るのに対し、アイドリーは指先から光輪を放った。その光輪が複数に分かれ、それぞれが大きさを変えてワイバーンを即座に捕縛してしまう。翼を広げられなくなったワイバーン達は、そのまま頭から地面に激突し、何匹かは首の骨が折れ虫の息になった。


 フォルナの眼の前に落ちたワイバーンなどは、白目を剥いてフォルナの顔を映していた。



「よし、フォルナ、アタック」

「ひ……ひぇ~~~~…」



 涙目である。戦いのたの字も知らない子供がこんな光景を見せられれば、普通なら気絶するだろう。それを耐えただけでもフォルナはそこらへんの一般人より余程勇気があるというのに、



「フォルナ、貴方のステータスだと鱗に傷を付けられないから、攻撃するなら眼にしてね」


 アイドリーは鬼だった。






「うふふ……目玉の感触ってあんなんだったんだなぁ……ふふ。刺す度に聞こえる絶叫が耳から離れないや……グスッ」


「あー……ごめんね?いきなりあれは私でもちょっと酷いかと思ったけど、耐性は早めに付けるべきかと思って」

「フォルナ、頑張ったね~」

「うぅ……アリーナ~」


 虚ろな目をしたままアリーナの胸で泣くフォルナに、私の罪悪感はマッハである。アリーナによってメンタルケアは出来るけど、私への信用度が地に落ちていくよ確実に。この訓練が終わった時のご褒美に何か言う事一つ聞いてあげよう……


「それで、今のでどのくら上がったんじゃ?」

「えっと……80ですね。こ、こんなに上がるんだ」

「ワイバーンのレベルは70~90ぐらいだしね。逆に考えれば、あれぐらいの魔物ならオージャスでも勝てないことはないんだよ。勿論単体でだけど」


 つまり、最低でもあれを1人で倒せるようにならなければオージャスとは渡り合えないってことなんだけど。フォルナはレベルが上がった事で多少自信が付いたのか、涙を拭って立ち上がる。


「やるよ。どこまで出来るか分からないけど、私が決めたことだもん。それに、アイドリーに頼ってばかりになりたくないもん」

「うむ、その意気じゃフォルナよ。鬼畜な主に負けるでないぞ」

「うんッ!!」

「ほう、じゃあ次はドラゴンいってみようか」

「……」


 顔が青褪めているけど、やるからね?



 今日1日はドラゴンを1匹仕留めて終わった。その時点でフォルナの精神が限界だったのでしょうがないけど、やっぱりドラゴンの眼玉は駄目だったか……今はアリーナの膝枕でダウンしている。


「まぁ1日で100まで上げられたのは僥倖。明日は身体を慣らす為に模擬戦をしようぞ。精神的にまたあれをやったらフォルナの心が持たんのじゃ」

「だね。じゃあ私はメーウさんに今日の報告してくるから、晩御飯の準備頼んで良い?」

「任せよ。フォルナも色々学べるしの」


 私は空間魔法でさっきからブルブル振動しているであろう石に向かって転移する。場所は執務室か。メーウさん初日からお疲れ様です。



「アイドリー様!フォルナ様はご無事でッッ!?」

「あ~だいじょ~ぶ~だから~揺らさな~いで~~」



 メーウさん結構強いな。肩を掴まれて凄い勢いで揺らされたよ。私は気を取り直して今日の報告をする。内容を聞いていく内にメーウの顔が強張っていくが、フォルナの意志を聞いて目頭を押さえてしまった。本当に好きなんだなぁ……


「くれぐれも、お願いいたしますぞ。私はフォルナ様を無事に見るまでは仕事を完璧にこなしますので。アイドリー様達もご無理はなされぬようお願いいたします」

「うん、絶対に無茶なことはしないから安心して。それじゃあまた明日」




 帰って来ると、丁度レーベルが料理を作り終わっていた。良い匂いが鍋から発しているねぇ~。今日はワイバーン鍋だから豪勢だ。


 にしてもレーベル、同種では無いにしろドラゴン種を普通に料理に使ってるよね……


「あ、お帰りアイドリー。メーウ心配してた?」

「してたけど、フォルナの意志を全面的に尊重してくれてたよ。良い人だね本当に」


 あんなに心から信じてくれる人は人生の中でそうは居ないからね。フォルナもそれが分かっているのか、照れ臭い顔をしながらも誇らしげだった。


「さぁ、明日は模擬戦だから沢山身体を使うよ。美味しいご飯一杯食べてぐっすり寝よう」

「おーッ!」

「フォルナ、夜だから静かにね」

「……ごめんなさい…ふふっ」



 4人でクスクス笑い合い、静かに食事を楽しんだ。


現在のフォルナ……


フォルナ(8) Lv.100

種族:狐人


HP 710/710

MP 707/707

AK   431

DF   299

MAK  721

MDF  655

INT  760

SPD  578


【固有スキル】狐火

 

スキル:無し

「い~ちっ…に~~~~いっ」

「ほら、ファイトだよー」

「ふぁいお~♪」

「無理せんようになー」



「ふにゃ~きもひぃ~♪」

「おー凝ってるねぇ。最近座ってばっかだったもんね」

「……zZ」

「……zZ」


 食べた後は筋トレとマッサージをして就寝。

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