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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第六章 作ろう獣人の国
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閑話・5 友達の約束

 ハバルにてアイドリー達と別行動を取ったアリーナは、一目散にパッドの家に居るであろうヤエに会いに行った。会う約束すらせず、実は知り合ってすらいないが、アリーナは妖精の時からヤエと友達になりたかったのだ。


「こーんにーちわー♪」


 パッドの家に辿り着き、数回のノック音が鳴ると、中から女性の人が出てきた。ヤエの母マエルである。白いローブに妖精のブローチを付けたアリーナを見て、マエルはもしかしたらと対応する。


「貴方は……もしかして、アイドリーさんのお仲間さんかしら?」

「うん、これお手紙!!」

「あらあら……アイドリーさんからですね。ああ、どうぞ中に入って?」

「お邪魔しまーす♪」


 アリーナが渡したのは、アイドリーからの紹介状のようなものだった。マエルはアリーナに果実ジュースを出すと、早速その手紙を読んでみる。


『そちらに私の仲間が行くと思いますが、ヤエちゃんと友達になりたいそうなので、もし良ければ会わせてあげてください。おそらく一生物の友人になると思います。


PS:今度少し離れたところに国を建てるので、良かったら遊びに来てください。


 ―パッド一家の友人アイドリーより―』



 前世なら止められそうなものだが、ここは異世界アルヴァーナ。こんな文書でも納得してくれるのである。マエルは友達が遊びに来たようなものかと判断し、目線を美味しそうに果実ジュースを空にしていくアリーナに向ける。


「アリーナちゃん。今日は何をしに来たのかな?」

「ヤエちゃんとお友達になりに来ましたッ!!」

「そう……ヤエは今日、他のお友達とも遊んでるから、混ざってきなさいな」

「はーいっ♪」


 アリーナはマエルから普段ヤエ達が遊んでいる場所を教えて貰うと、お礼を言って風のように去っていった。アイドリーの仲間らしいと、マエルはまた家事に勤しんでいった。




 アリーナがたどり着いたのは、路地にある建物の建ってない空き地だった。端っこには木材が置かれており、そこに子供達が座っている。アリーナはそこで限定的な『スペシャルアリーナちゃんモード』を使用した。容姿以外を強制的に100年後にしたのである。


「こんにちわー。私も仲間に入れてくれないかな?」

「ん?お姉ちゃん誰?」

「私はアリーナ。アイドリーの親友で、一緒に旅をしている仲間なの」

「お姉ちゃんの!?」


 途端にヤエが反応し、アリーナに飛び付く。アリーナは抱き止めると。諭すように言葉を続けた。


「アイドリーが、ヤエちゃんは凄い良い子だって言ってたから、私も友達になりたいなって。後、アイドリーは用事で寄っただけだから、こっちには来れなくて、だから代わりに私が今日来たんだよ」


 他の子供達も驚く。アイドリーと言えば、レッドドラゴンを倒した街の英雄だと皆が讃えている存在だ。そんな人とヤエは友達だというのだから、羨ましいと感じない筈が無い。それを見越してか、アリーナはそちらにも笑顔を向ける。


「勿論、私は皆とも友達になりたい。今日は面白い遊び道具もあるからね。一緒にやろ?」


 そして取り出したのは、人数分の独楽と長い紐。

「なにこれ?」

「アリーナお姉ちゃん。どうやって使うの?

「これはね〜こうやって紐をグルグル巻き付けて〜〜〜〜こうだッ!!」

「「「おおおぉぉおおぉぉおおおおお〜〜〜〜〜ッ!!」」」


 独楽は綺麗な回転をしながら子供達の周りを移動していく。アリーナは地面を妖精魔法でなめらかな円のくぼみを作ると、そこにもう一つ独楽を投げ入れた。独楽同士がぶつかり合う。

「凄い凄い!!」

「うわぁ〜〜♪」


 子供達も早速やり始めた。最初は中々上手くいかず、紐が投げる途中に解けたり、あらぬ方向に飛んだり、上手く回らずすぐ止まったりしたが、すぐに皆回せるようになる。


 さて、次はとアリーナは豆の入った袋を3つ取り出した。女の子達にも遊び道具を用意してきたのだ。しかもこっちは家庭でも簡単に作れる為、是非にとアイドリーに渡されてきたものだ。


「女の子集合〜♪」

「な〜に〜お姉ちゃん?」

 ヤエを筆頭に5人の女の子が集まると、アリーナはその3つの玉を見せた。


「今からこれで遊ぶよ〜」

「……どうやって?」

「こうやって、ほいっ」

「「おぉ!?」」


 アリーナは、子供達の前でそれを投げ回し始めた。『お手玉』である。最初は3つでやっていくが、腰からどんどん新しい玉を補充していき、最終的に8つのお手玉を片手に4個ずつ片手でやり始めたのだ。器用とかそんなレベルではなく、曲芸である。


 それを見ていた女の子達からは、当然切望の眼差しを向けられる。


「ほら、皆んなは3つからやってみよっか?」

「「「はーいッ!!」」」


 よって、返事も元気になっていく。そうして男の子と女の子で別れて、それぞれがその遊び道具に夢中になり始めた。その様子を見てアリーナはご満悦になる。

「んよ?」

「アリーナお姉さん……」

 ふとローブを引かれたことに気づき、顔を向けると、ヤエがこちらに不安げな顔を見せていた。アリーナは膝を折り、目線を合わせる。


「あの…アイドリーお姉ちゃんとは、もう会えない……のかな?また、会えるかな?」

「大丈夫だよ」


 頭を撫でて笑顔のままアリーナは続ける。


「アイドリーは、自分が気に入った子にはとことん優しいの。だからヤエちゃんが良い子にしていれば、アイドリーは必ず来るよ。それに、大きくなったらヤエちゃんから行っても良い。きっと歓迎してくれるし、私も嬉しい。その時は、皆で遊ぼう?」

「……うんッ!!」


 元気が出たのか、ヤエも子供の笑顔を見せた。アリーナはそのままヤエの頭を撫でくり回し、立ち上がると、2本の細長い加工された木の棒を取り出した。先が尖っている棒を地面に置くと、独楽を2つ出し、どちらも回す。


「ほいっと」


 そしてまた棒を取ると、上手い具合に独楽を棒に乗せてしまった。子供達が歓声を上げてそちらに目を向けた。


「ほいほいっと」


 そのまま尖った先の方に独楽を動かしていき、真直ぐに立ててお手玉を始める。様々なポーズでお手玉をしていく度に拍手が溢れていく。路地裏の空き地で観客は子供達だけだが、妖精は遊びに関しては全て本気である。


「はいはいはい、はいや〜〜〜〜…はいっ!!」

「「わぁぁ〜〜〜〜〜ッ!!!」」」


 フィニッシュを決めてやりきった感を滲ませる。だが、最後に何故か3つ目の独楽が突然頭に当たり、「ありっ?」と戯けると、皆んなでお腹が痛くなる程笑っていた。アリーナも一緒になって……




「お、そろそろ行かなきゃだ」

「「「えぇ〜〜〜〜〜ッ!!!!!」」」




 こんな面白くて楽しいお姉ちゃんと離れたくないと、子供達は皆んなアリーナに縋り付いてくる。珍しく困った顔になるアリーナは、一人一人の頭を撫でて言った。


「私は行っちゃうけど、この道具は皆んなにプレゼントだよ。これから出来る新しい国でも売り出す予定なんだ。今日ここに来てない友達も、その行商人の人にハバルへ来て貰うようにするから安心して?後、私はまた絶対来るよ。今度は、アイドリーも一緒に、ね?」


 その言葉に、渋々と手を離していく子供達。ヤエも涙目だが聞き分けた。アリーナは「皆んなありがとう」と輪から抜け出す。


「ヤエちゃん。また遊ぼうね?」

「うん。待ってるからね、アリーナお姉ちゃん?」

「私も楽しみにしてるよ、それじゃ、またね〜〜〜〜ッ!!」



 子供達もアリーナも、お互いが見えなくなるまで手を振り続けたという。


 そしてその日、子供達は自分達の家に帰ると、大人にその道具を見せて実際に使い、大いに驚かせたとか。



「ヤエ、絶対に会いに行こうな?」

「うん!!」

 そしてパッドは娘の新しい友達とアイドリーの手紙に感謝し、絶対に会ってお礼をしたいと心に誓った。

「ヤエちゃんと友達になれた?」

「うんッ!また遊ぼうって約束してきたッ!!」

「そっか……パッドさん、結婚のこと考えてくれたかな」

「何を言っておるんじゃ主よ?本当に何を言っておるんじゃ主よ?」

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