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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第六章 作ろう獣人の国
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第70話 1日目 巫女、拾いました。

 素晴らしい門出だって思ってたら、突如現れた謎の馬車と大量の魔物達。


 私達は門を出たばかりだし、こんな大行進を急停止することは出来ない。なので目の前の脅威を瞬殺して押し通ることにする。


「た、助けてぇ~~~~~~ッ!」


 魔物の集団の前を走る荷馬車には助けを求める声があったが。うん、助けてあげるから、


「今すぐ反転してッ!!」

「そ、そんなッ!?」


 振り向けば魔物の集団に押し潰されるというのにそんな命令をしてくる私に、馬車を動かしている人間は悲痛な叫びを挙げるが、どっちにしろそのままこっちに突っ込んだら衝突だからね。許されないよ~


「死にたくなければ早くッ!!」

「~~~~っつ!!」


 仕方なくと言った感じで馬車を急停止させて反転させた。よし、魔法使って倒してしまおうか。


「流れろッ!!混ざれッ!!埋まれッ!!」


 いつかのように水を流し、魔物達の走ってくる地面に浸透させ、全員がその範囲に入った瞬間かき混ぜて泥沼にした。素材の回収が面倒なので、そのまま埋めて平地に戻す。はい終了。はい隣のレーベルさん「エグ過ぎるのぅ…」とか言わない。私は魔物に慈悲は与えない派だよ。

 後ろに居た獣人達はその光景を見て興奮した声を上げていく。さっきの余韻もあって恐怖とかはあまり無いみたいだね。


 にしても、何故魔物が全てオークだったのだろうか?商人達の護衛の時みたいに興奮してたし。ちょっと話を聞いてみようかな。


「レーベル、私ちょっとあの馬車に行って来るから、こっちでアリーナと待ってて貰って良い?アリーナ、馬車の御者任せるね」

「うむ、任せよ」

「おまかせ~♪」


 よし、私は前を走っている白い馬車まで走って御者の隣に座る。突然座られた御者にフレンドリーに話しかけてみた。フード被ってても分かるぐらいビクつかれた。


「はいこんにちわ。さっきは危なかったね?」

「え、あぇ?あ、いえ。助かりましたッ!!お嬢さん強いんですね!!」

「あ、あーうん。まぁね」


 ……何か初々しい反応だな。フードで顔が隠れてるから見えないけど、若い女性みたいだし。さて、じゃあステータスを覗かせて貰おうかな。何者か知りたいのだよ。



桜田 美香(20) Lv.52

種族:人間(覚醒)


HP 9599/9599

MP 1万0014/1万0014

AK   5516

DF   5888

MAK  1万1207

MDF  1万2330

INT   4200

SPD   7540


【固有スキル】自動回復 聖剣 自動翻訳 マジックボックス


スキル:剣術スキル(D+)隠蔽(C+)鑑定(―)


称号:勇者 転移者 女神に祝福された者 異端者



 ……わーお。もう3人目かぁ…しかも何か称号がおかしいね。『異端者』って、何かやらかしてんのかな?ああ、凄い厄介ごとの匂いがする……けど特性の媒体となる聖鎧は着てないの?最大の武器だろうに。


「そ、それでですね。……アイドリー…さん、ですよね?」

「あー…うん。そうだね。私がアイドリーだよ。それも後ろの人?」

「え、ああ、はい。と、とりあえず会って頂いても良いですか?」

「……うん。いいよ」


 テンションがタダ下がりしていく私に、おろおろしながらも使命を果たそうとする勇者。いいよそんな申し訳なさそうな顔しなくても…なんとなく馬車見た瞬間に予感はしてたからさ。


『レーベル、多分大丈夫だと思うけど一応警戒しておいて。アリーナも直感でいつでも『S.A.Tモード』(スペシャルアリーナちゃんモード)になれるようにしといて』

『『ラジャー』』


 じゃあ行ってみますか。私は馬車のドアをノックする。止めるのは面倒なので走ったままの状態で。すぐに返事は返ってきた。


「美香さん?魔物は撒けたのでしょうか?」

「そうだね。その危機は去ったよ」

「えっ?あ……貴方は…」

「初めまして………巫女さん」



シエロ・フォルブラナド・レーベルラッド(15) Lv.2

種族:人間


HP 94/94

MP 101/101

AK   13

DF   14

MAK  22

MDF  21

INT  280

SPD  10


【固有スキル】予言 神眼 限定魅了(呪い)


スキル:水属性魔法(D-)


称号:聖女 巫女



 馬車に乗っていたのは、私が今まで一番会いたくないと思っていた存在だった。やっぱりなぁ…そうなるよなぁ……いや、考えよう。銀髪でサファイアのような眼に歳には不釣り合いな程の発育が進んでいるお体の女性とお近づきになれるチャンスだ。今の内に全力で仲良くなって全力でイチャイチャするべきだと思うんだ私は。


「…とりあえず自己紹介から良い?」

「は、はい…」


 仕切り直し。私達はお互いの名前を言い合うと、彼女のことについて聞いてみた。可愛い女の子の言葉はなるべくなら聞いてあげたいからね。私のステータスが諸バレするけど。

それに……


「えっと…巫女さん。どうしてそんなに震えてるの?」

「あ、あの……あまりにその、強い方を見るのが初めてでして……妖精様とは、皆そのようにお強いのでしょうか?後、名前で呼んで頂けると嬉しい、です」

「あ…ああ、なるほどね。シエロ、そんなことはないよ。私が馬鹿みたいに特別になっちゃってるだけ」


 そうか、やっぱりこのステータスは異常だもんね。おそらく御者の勇者はボディーガード的な役割も持ってるんだろうけど、私が敵に回ったらまず勝てないし。


「今のところは……よっぽどの理由でない限り貴方に敵対するつもりは無いから安心して欲しい。それでシエロ。ハバルで少し聞いてたけど、貴方は討伐隊の傷を治した奇跡を視察しに立ち寄ったんだよね?おそらくだけど、それを行った相手に会いたかったんでしょ?」


「……そうです。予言によって見て、どうしてもとお父様に懇願して。勇者様に同行をして貰って……お会いしたら、その御業を是非お聞きしたくてんむッ――」



 シエロの口に指を付けて、私は警告をする。



「シエロ……私に嘘は通じないよ。妖精の眼は、そういうの分かっちゃうからさ」

「うぅ…」


 そしたら目を逸らして黙り込んでしまった。これは危険性が増したかな。何が目的か知らないけど、本人を目の前にして隠し事をするってことは、後ろめたいんだろうけど。


「…本当は、逃げてきました」

「逃げてって、レーベルラッドから?反逆でも起こされたの?」

「違いますっ!!あっ…すいません」


 私の言葉に一瞬だけ大きな声で否定するシエロ。すぐに自分が声を上げたことに対して謝罪するけど、今の私が悪かったな。自分の国の人間を悪く言われたら怒るか。この子は国民を愛しているようだ。


「いや、ごめん。今の発言は無神経だった。じゃあ何から逃げてたの?」

「……勇者です」


 はい、確定入りました。今回は重複イベントかぁ…同時進行可能な案件だと良いなぁ……


「逃げた理由は?」

「勇者が……教会の力が欲しいから、私に政略結婚を迫ったんです。私と結婚すれば、事実上その人が次の教皇になりますから」

「つまり、政治利用されるのが嫌だから逃げたってこと?」

「逃がしてくれたのは、現教皇のお父様です……付いてきてくれた勇者様は、唯一私の味方になってくれた方でした。彼女がその勇者に反発して、私を守ってくれたのです!!」


 それが『異端者』の称号の理由かな?他の勇者に反発して逃げたから付いたんだろうけど、その勇者の悪行の方がよっぽど異端でしょうに。シエロは涙を流してスカートを握り締めている。



「アイドリーさん、貴方にお会いしたかったのは、逃げ出す直前に予言スキルが発動したからです。そこには、ピンク色の髪の人が、見たことも無い魔法を使って冒険者達の治しようがないと思われた傷を完全に治してしまったところが映し出されておりました。予言は女神からの啓示なのです。だからこそ、私はそれに賭けました」

「で、会えた訳だけど。これからどうするの?」

「………」


 わかんない訳だね。まぁその光景を見せられても何すれば良いかは言われないんだもんね。不親切にも程があるだろう神様。私に紙束握らせる並みに酷いぞ。馬車の中に沈黙が流れるので、私は次の質問に移行する。


「それで、貴方の固有スキルに『限定魅了(呪い)』ってあるけど。これって昔からあるの?」


 調べてみたいところ、なんとこのスキル、雄の魔物限定に発動する鬼畜仕様だった。1匹の魔物を発情させ、その付近に生息する同種族の雄を集めてしまうとかなんだそれ。というか呪いスキルとかあるんだねこの世界。



「これは、私が逃げる際、追いかけて来た勇者の聖剣特性によって受けたものです……その勇者は特定の呪いを相手に付与することが出来るそうで。それで……自分の物にならないなら、魔物と結婚でもしてしまえ……って……国は彼が民を焚きつけて……無理やり乗っ取られました…」



 私はシエロの横に座って静かに抱きしめた。腕の中でフルフル震えて涙を零す姿は見てられない。というかその勇者のアレは潰そう。神を敵に回そうが潰そう。ありえない程に女性軽視発現だ。許せるものじゃない。


「その勇者、多分まだ私を追いかけてるんです……呪いを辿って来れるそうなんです。だからきっと、一緒に居たら襲われます……」

「それは何とかしてあげるよ。私としても貴方の境遇には同情する。会ったばかりだけど、私を信用するなら助けるよ。人間は信じられなくても、妖精は信じられるでしょ?」

「……すいません…本当に、ありがとうございます」


 涙目でニコっと無理しながらも笑うシエロ。絶対に腹筋が釣る程笑わせよう。勇者を散々ボコった後でね。


「まぁ、とにかくこの一団が休憩を始めたら改めて聞くことにするよ。私も止まってられないし。貴方も私から離れたくないんでしょ?」

「……はい、ごめんなさい」

「いいよ……よし、じゃあちょっとお姉さんと遊ばない?」

「お…ねえさん?」



 あ、私まだ3歳だった。じゃあロリと遊ぼうお姉さん?

「あ、あの…この態勢は?」


 シエロの膝に座って自分の膝にボードゲームを広げるアイドリー


「え?駄目だった?」

「い……いえ」

「じゃあ、落ちないようにギュッてしてくれると嬉しいな」

「……」ギュ

「~♪」

(凄く良い匂いがする……)


 

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