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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第一章 妖精郷
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第7話 旅立ちの空

旅立ちだけなので短めです。

しばらくは二話投稿する予定ですので、よろしくお願いします。

 旅立ち当日、私とアリーナは大勢の妖精に囲まれていた。場所は妖精郷の出入り口の前である。お見送りだと思う? 違うんだなぁ……


「「「いっちゃや~だ~~~っっ!!!!」」」


「み、耳が」


 待ち受けていたのは、引き止める声の大合唱大号泣の嵐だった。いやいや、何で私達が行く時間知ってるの?前日に宴会で全員酔い潰したのに。朝になって全員姿を消したと思ったら、出入り口を固めてるんだもん。


 そういえば主要人物以外に旅に出るって言ってなかったっけ。まさかこんなに強く引き止めてくれるとは。わ、私はこんなに愛されていたんだね!!



「宴のこうじつ~」

「おにく~」

「われらがアイドル~」


 見事に欲塗れか。分かってたよ快楽の申し子達め。しかし私に抜かりはない。こんなこともあろうかと新しい娯楽を用意していたのさ!!


「皆、ここに新しい遊び道具があるんだけど」

「「「欲しい!!」」」

「はいこれ道具と説明書ね。皆で読んで遊んでねぇ~」

「「「わ~~い!!」」」


 そう言って空間魔法で全員分の遊び道具と説明書を配った。三年前からチマチマ作ってたからね。実はこれで大会とかも開きたかったけどしょうがない。受け取った妖精からワラワラと蜘蛛の子を散らしていく。


 数年間過ごしてみて分かったけれど、妖精は人数が集まっていないと知能が高くならない。遊ぶ為に必要な知識しか総動員させないから、基本的に楽しければ考えるということを放棄してしまう。ノリで出来ちゃうからね。


 なら考えながら楽しめるゲームがあればどうなるのか。同じく考えながら楽しい【演劇】を実践し続けているテスタニカさん達で実証されている。ああ、どうなるか楽しみだね……


「最後まで本当に面白いことをするのね。これ、なんていうゲームなの?」

「テスタニカさん。これは『将棋』というボードゲームだよ。簡単に言えば。駒を使って相手と取り合うって感じで、取った駒を自分の手駒として使えるって感じ」

「へぇ……頭使いそうだし面白そうね。後でノルンとやってみるわ。ほら、貴方達!!仲間をしっかり見送るわよ!!!」


「「「は~~い」」」



「アイドリー、アリーナ。旅の祈願に2人へこれを送ろうと思う。受け取ってくれ」


 ノルンさんから渡されたのは、妖精文字がびっしり刻まれてもはや模様にしか見えない首飾りだった。ノルンさんが自ら付けてくれる時気付いたけど、これ銀素材だ、初めて見たよ。そういえば私、前世も今世もそういうの付けた事無かった……


(なんか、こういうの嬉しいな……)


「それは妖精が旅立つ友人へと送るお守りなんだ。困った時や命の危機に陥った時、それに祈れば打開出来るとされている」

「ありがとうノルンさん……大切にするね」

「ああ……寂しくなるな。たった数年だというのに」


 妖精は長命だ。しかも力が強い程に。ノルンさんもテスタニカさんも、最低でも後数百年は生きるらしい。その中での数年なんて微々たる期間なのに、それでも寂しいと思ってくれているのは凄い嬉しかった。


 私も凄く寂しい。人間の心じゃない、妖精の心が泣きそうなぐらい。妖精はとっても寂しがり屋だからしょうがないのかもしれいない。けど同時に、皆と繋がっているって分かっているから。誰よりも頑張り屋さんになれちゃう。


 だから私は泣かない。行く時は、何時だって笑うんだ。



「何言ってるのさ。数年後に一度は戻って来るんだからそんな顔しないでよ。襲うよ?」

「怖いわ!! まったく……」


 いつものやり取りで私は別れたい。私は人化し、皆を見下ろした。全員の顔を見たいから。



「無事を祈るわ」

「気を付けて行くんだぞ」

「「「いってらっしゃーーい!!!!」」」


「皆、行ってきます!!」


「いってきまーす!」


 そうして私達は、新たな一歩を踏み出したのだ。







「テスタニカ、コブリンからはなんと?」

「手は尽くしてくれているけど、まだ見つからないみたいね……」

「そうか……」

 テスタニカの持つ手紙には、人間族の文字で『未だ見えず』と書かれている。その字をノルンは恨みがましく見つめてしまう。その言葉の意味を考えるだけで、暗い気持ちを抑えられなかった。


「先代が見つからないとなると、本格的にこの世界樹は我々だけで守らざるを得なくなるな。難儀なことだ」

 

 実は、アイドリーには伝えていないことがあった。世界樹から妖精が生まれないということは、ただそれだけでは終わらないということを。


「後どれ程持ちそうだ?」

「この分だと、消えるまで後2年ってところかしら。良い勝負だと思うわ」


 それは、『世界樹の結界が消えるカウントダウン』という意味。結界が消えれば、妖精郷は外から丸見えとなり、様々な魔物達に襲撃されてしまうだろう。


 そのことを二人に言えば、特にアイドリーがここに釘付けになってしまう恐れがあった、だがそれだと誰も外の正確な状況を知ることが出来なくなる。コブリンでは妖精種の間でしか情報を得られない。これまでも先代の情報が無かったということは、人間の営みの中に潜伏している可能性も大いにあるのだ。だからこそ二人に託した。


「まぁここは私とノルンが居るからね。大丈夫大丈夫♪」

「だな……」

 これからも二人は自らを鍛え続けるだろう。スイレンとエンドルも実力がノルンに追いついてきていた。後2年もあればこの周辺の魔物とも対等にやりあえる。


「守るわよ。あの子達の帰る場所を」

「誰一人欠けること無く、な」


 





 外に出て初めて知ったこと。実はここ、広大な大空洞の中だった。


「テスタニカさんが秘境だって言っていた理由がようやく分かったね。これは人来れそうにないや」


 妖精郷から壁際まで歩いて約3時間。そこから妖精の身体で飛んで出て来られたのに10分。深さも広さも相当なものだ。独自の生態系だったんだねあそこは。


 そこから森の中を歩いていけば、地平線の向こうまで続く草原が見えた。



 肩には一匹の妖精。空は晴れ晴れ。気分は揚揚である。


「どこいくのー?」

「そうだなぁ。まずは草原をまーっすぐ進んで、街道を探そう」

「どのくらいまっすぐ~~?」

「い~~っぱい、まっすぐ!!」

「おぉ~~~♪!!」


 この世界の文化レベルがどの程度か分からないが、国が存在している以上貿易とか流通だってしている筈だ。まずはそれらが通っている道を探そう。


「行こうアリーナ!! 大冒険の時間だよ!!」

「やっふぃ~~~っ!!♪♪」

「あっ結局コブリンに会えてないや」

「ふわふわ~?」

(アリーナにクマの着ぐるみ……よし、作ろう)

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