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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第一章 妖精郷
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閑話・1 テスタニカとノルン(幼少期)

テスタニカとノルンが『ごっこ遊び』をやり始めた原因です。

「ノル~ン、ちょっとこっち来て~」

「ん?どうしたんテスタニカ?」


 幼き頃のテスタニカは、とにかく娯楽に飢えていた。私はいつもそんな彼女に付き合っていたのは、私も娯楽に飢えていたからに他ならない。そもそも、私達は他の妖精達と違って好奇心は妖精一倍なのだ。


 そして、自分達で思いつく限りの遊びは全てやってしまっていた。チャンバラ、鬼ごっこ、隠れんぼ、達磨さんが転んだ、枝蹴り、氷鬼etc……まぁとにかく色々やっていた。しかし妖精である自分達にこれ以上の遊びを思いつくことが出来ずにいた。


「なんかね~、女王様が呼んでるの~」

「女王様が?」


 女王様とは、私達を統率している人だった。当時既に300歳を超えていて、精神的にもかなり人間に近かったと思う。ただ、凄い天然でいつもおっちょこちょいで回りの物を壊したりその場ですッ転んで鼻を打っては泣いている可愛い人だった。


 王座の間に行くと、女王様がいつものように王座に座ってニコニコと微笑んでいた。


「呼んできたよ~」

「ちょりーす女王様」

「ありがとうテスタニカちゃん。おはようノルンちゃん。今日は二人に良い事を教えてあげようと思って呼んだのよ?」

「「ほんとッ!?」」


 女王は私達にある物を見せた。一冊の、人間サイズで読むような本だった。こんなに大きい物を見たことが無かった私達は、吃驚して女王の後ろに隠れてしまう。


「これはね、人間の世界の子供が読む『絵本』ってものなの。ほら、見てごらん?」


 女王は指を振って、本を開いた。

「「わぁっ………」」


 一ページ目には、美しく若い女王と、それを守るようにして立つ純白の鎧を着た騎士、そしてその二人に襲い掛かるようにして書かれた黒いドラゴンの姿が描かれていた。タイトルには『愛の戦い』というものだった。

 それから女王は一ページずつ演出掛かった読み方に私達は引き込まれていき、物語の中の人物に惹かれていく。煌びやかな衣装。雄々しき英雄譚。


 そして読み終わって本が閉じられると、女王は私達に振り返った。


「お話、どうだった?」

「騎士様マジかっこよかったっ!!」

「女王様素敵だったッ!!」

「あら、なら良かったわ♪ じゃあ貴方達、実際にやってみない?」

「「えっ?」」


 女王が私達にやらせようとしていたこと。それは『ごっこ遊び』だった。私は勿論騎士役で、テスタニカが女王役、そして何故か女王がドラゴン役をやることになった。女王は私達にそれぞれ衣装と道具を用意し、更に自分は妖精魔法でまるで本物のようなドラゴンになってしまう。


 女王はこうやっていつも何かしら新しい遊びを考案しては私達に教えてくれる。そして私達から仲間達に広まっていく。別に特別扱いされている訳ではなかったが、何かと呼ばれることは多かった。今考えれば、最年長だしINTが高かったからだろう。


「じゃあ、始めッ!!」



「女王様、私が貴方をお守りしますッ!」


「ああ騎士殿、どうか無理をなさらないで。貴方に死なれたら私は悲しみの涙で日々を過ごすことになってしまいます」


「私は死にません。愛する貴方の為ならば、険しい山道も、荒れ狂う海も、そして怒り狂るドラゴンという障害も乗り越えてゆけるのです」


「騎士様……きゅんっ」

(はわぁ~わたしマジかっけぇ~……っ!)



 ノリノリだった。今思い出しても恥ずかしい程のノリノリ具合だった。今思えば何故あの『絵本?』はあそこまで愛に過激だったのだろうかと今でも不思議に思う。そして何が一番不味かったかと言えば、役に成りきり過ぎて、本当にお互いを愛していると思っていたことだ。



『ギャオー♪』


 そこに、見た目にはまったく似つかわしくない可愛い鳴き声と供に黒いドラゴンが現れた。私は木剣で構えてテスタニカの前に立つ。


「さぁ、この愛の一撃に倒れるがいい。邪悪なドラゴンよ~!」


『ギャオー♪ や~ら~れ~た~』


 若干3歳の私達の演技なんてこんなものだと思うが、それにしても酷い演技だな女王。私のヨレヨレの振り方でもポコンと頭に当てさせると、無駄に大演出と大根演技で消えていくドラゴン。


「女王様、貴方は私が永遠に守ります……」


「ああ騎士殿。愛しておりますわ……」


 そして、お互いの頬にキスをして終了。もうごっこ遊びというより演劇だったが、私達は楽しかったので気にしない。ドロンと女王が再登場すると、私達は顔を輝かせて抱き付いた。



「「これ、凄く楽しいッ!!」」



 『ごっこ遊び』の醍醐味、それは自由性である。話は自由に考えられるし、演出は全て妖精魔法で出来る。衣装は布切れから作れるし、妖精魔法で配色も可能。配役も増やせば無限に物語を作れることを悟ったのだ。


「良かったわ気に入ってくれて。レベルが上がるともっと色々出来ると思うから、上げたい時は言ってね?一緒に外に行きましょう」

「「はーいッ」」


 私達は燃えた。女王に沢山の物語の描かれた絵本をおねだりし、一作ずつ穴が空く程読み込んでいったのだ。そしてどうすれば格好良い感じになれるのか、一つ一つの所作を研究し、言動を作り出し、言葉遣いを変え、遂にはお互いの関係すら変えてしまった。


 更にごっこ遊びに磨きを掛ける為、暇さえあれば女王に頼んで魔物を一緒に倒していた。その内もっと騎士っぽくもっと女王っぽくを目指して戦闘技能も鍛えに鍛えた。残念ながら教えてくれる者は妖精郷には居ないのでランクを上げるのにかなり時間が掛かったが、その時間すらも楽しかった。



 最終的に100年掛けて私達は理想の女王様と騎士を完成させた。今では毎日の生活の中でも常時騎士としての動きが出来ると自負出来るぐらいに…………そして103歳にして気付く。



「「超恥ずかしい……」」



 妖精の100歳は、人間で言うところの成人に近い歳だ。つまり大人なのである。精神的にも成熟した身で自分達の行動を改めて見た時、私達は物理的に穴を掘って2人でそこに1ヶ月程埋まっていた。だが、100年続けたごっこ遊びは最早剥がれようがなく、2人の性格になってしまっていたのだ。



 物語はいつだってハッピーエンドで、役の主人公とヒロインはいつも私達。あらゆるパターンで話を作ったので、それはもう濃厚なのも沢山あった。それ等を私達は完璧にこなしてしまえば……


 …………数年は、お互いの顔をまともに見れそうになかった。それでも背中を合わせていたけれど。



 そんなこんなで、どうにかこうにか2年間矯正し、まともな言動が出来るまでに治して今に至る。





「とまぁ、あらましはこんなものだな」

「濃厚な部分詳しく」

「勘弁してくれ……」

そらぁもう色々しました。

そしてテスタニカの女王の顔が剥がれると、アリーナと同じ性格になります。

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