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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第四章 王都ガルアニアの武闘会
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第57話 命名:スペシャルアリーナちゃんモード

私は今、幸せの絶頂かもしれないと言っても過言ではない、過言ではないのだ。


「アイドリーが私より小さい……凄い新鮮だなぁ~♪」

「主よ、もちっと強く抱きしめてくれぬか?魔力の補給がまだ足りぬ」


 ベッドの上で、私は後ろから水色美女となったアリーナに抱きしめられ、そして前に居る赤髪美幼女を抱きしめていた。前門も後門も天使である。あ、愛が……愛が溢れそうだよ……。


 アリーナの体形は、レーベルのような抜群なスタイルになっていた。お陰で着ているワンピースがぱっつんしちゃってるんだよね。しかもこの世界に上の下着って布だからさ……うん。

 しかもスキルの影響で精神が大人びており、お姉さん気質になり、私のことをヌイグルミのように愛でてくる。私が日頃しているかのような感じで。


 ハッキリ言おう、いけない世界に入ってしまいそうだった。耳元で囁かれる声で脳がとろけそう……っはッ!


「あ、あの、アリーナさん? そんなにひっつかれるとですねぇ……んひゃ!?」

「な~に~いつもアイドリーがやってたことでしょう? それとも攻守逆転したら恥ずかしいのかな~?」


(……くぉぉぉぉおおお!!!、くぉぉぉおおお!!!。襲いたい!!その無垢な身体にむしゃぶりつきたい!!頭が幸せな感触に包まれて死んでしまう!!いけない、落ち着け。目の前の少女を見て心を……)


「……ん?なんじゃそんなジロジロ見て?」


 ……うん。


「レーベル、お姉さんといいことしない?」

「我の方が遥か年上なんじゃがのう?」

「あー、アイドリーえっちぃ事考えてる? するなら私としようよ~?」

「ナチュラルに何言ってるのかな!!??」

「色んな意味で今の主では敵わぬなこれは」



 いや、だって……控え目に言って天使だよ?髪が足元まで伸びてしまっているのに枝毛一本すらないし、ドレスがズル脱げで今にも卵肌の裸が見えちゃいそうなんだよ?


 今ならお迎えだって言われて手を引かれても私付いていく自信がある。駄目だ。どっちを見てもめくるめくイケナイ世界への扉が開いてしまう……私は話題を出して自分の妄想を弾き出すことにした。ていうかアリーナが色々柔らかく包み込んで来て負けそう。


「はふぅ~~~……で、あれが勇者?」


 光の環で簀巻きにされているボロボロの男が部屋の真ん中で転がっているのを指差すと、アリーナが指で何かを操作し始めていた。


「うん、今は私の光輪で拘束してる。今の内にアイドリーに所有権書き換えとくね?」

「……なんか、私より妖精魔法使いこなしちゃってるね」


 さっき聞いたけど『限定成長』強過ぎるよ。というかアリーナのINTが私を超えてて吃驚だよ。私7100から動かないのに、アリーナ今1万超えてるんだもん。それで1日の間だけ規模に寄るけど妖精魔法をほぼ無制限に使えるとか。ステータスで勝ってても脅威だね。



 なので、アリーナのこの状態を『スペシャルアリーナちゃんモード』と名付けた。他意は無いよ? 何か状態の名前ももそれで定着してたけど知らないよ?




「にしても主よ。こやつどうするのじゃ? 我は消し炭にしたいのじゃが」


 今にも燃やし尽くしそうな炎のオーラがレーベルから見え隠れしているが、駄目だよレーベル。めっ。


「これは、明日王様の前にこのまま持って行くつもりだからね。私達のパーティメンバーを襲ったのは確実だし。明日正々堂々もう1人の勇者をフルボッコにして、2人一緒に交渉の材料にしちゃおう」

「むぅ、そうなるか」

「人の命はなるべく、ね。私もアリーナも、狂気に駆られた魔物を倒すのは躊躇しないけど、人の命をそれと同列には扱えないから……」

「優先順位は妖精にだってあるからねぇ~~。だから、せめて何もかもを無駄にはしたくないよね」

「そういう感じか。うむ、分かったのじゃ」


 勿論事情によっては王様には死ぬより怖い借金だけ背負って貰うけど、共犯ならギルティ。脅されてたならお話は聞こう。次いで通行手形も発行して貰おう。他の国に顔パス出来るぐらい凄いの。図書館にも入りたいね。この世界の歴史とか知らないし。


「じゃあ後は、これどこに仕舞っとく?」

「主の収納に入れられるかの?」

「生きてるのは無理だからなぁ……ああ、妖精魔法使えばいいか」


 私は部屋に置いてあったタンスに勇者をぶち込む。そしてタンスをロープで縛り、妖精魔法で完璧な無機物として認識させ、収納に成功する。


「何か倒れる程使いまくると、段々慣れてきたよね」

「アイドリーはやっぱり私より凄いと思うんだ」

「我もそう思う」




 私達は明日に向けてやることが無くなったので、その後は3人で色々話した。アリーナの決意とか、レーベルが認識を改めたこととか、私の考えなしの行動とか。


 私はいっぱいいっぱい二人に謝った。だって、これは私が始めた旅だから。それに着いて来てくれたアリーナを危険に晒すリスクを考えていなかった。その結果、レーベルに辛い思いをさせてしまった。自分だけが強ければ良いなんてこと、そんな傲慢しちゃいけなかったのに。


「もういいよアイドリー。レーベルの言っていた通り、いつかはこうなってたと思うよ?」

「そうかもしれないんだけど……私のノリに巻き込んだ以上こう、ほら、責任というものがさ」

「それが好きだから我等は付いてきているんじゃろうに。だからアリーナもこうやって力を得て立派になった。違うか?」


 そう言われてしまえば、何も言い返すことが出来ず……確かに私はアリーナを守ることばかり考えていたからなぁ。


「ということで。私達は仲間なんだから、アイドリーはちゃんと私やレーベルに守られること!!良いよね!!?」

「は、はい!!」

 アリーナにゴリ押しされるとは思ってなかったよ。もう勝てる気がしない……



「私はアイドリーとレーベルを守る」

「我は主とアリーナを守る」

「そして私はアリーナとレーベルを守る」



 一蓮托生、私達は手を重ねて仲間の誓いを立てた。楽しい旅をしよう。厄介ごとは皆で協力して乗り越えよう、と。



 朝起きると、私達は抱き合ったまま寝ていた。レーベルはお姉さん体形に、アリーナは私と同じ少女体形に戻っている。3人でぐっすり寝たからか、既に日は上がっていた。2人を寝かせたままにすると、私は下に降りてアグエラさんに挨拶をする。


「おはようアグエラさん」

「おう、おはよう。今日は遅いな。決勝なのに余裕か?」

「そんなとこ。ちょっと相談なんだけど、部屋のタンス買い取って良い?実は壊しちゃって。はいこれってあいたッ!?」


 そう言って金貨1枚渡したら、頭を叩かれた。痛い…


「弁償は良いが多過ぎだ馬鹿野郎。銀貨10枚で十分だ」

「は、はい……」

 改めてお金を渡すと、アグエラさんは懐に仕舞ってまた奥に消えて行った。さて、じゃあ2人を起こしますかねぇ。



 部屋に入ると、レーベルが丁度起きたところだった。長い髪の毛なのに癖毛になってアホ毛が出ているのが可愛い。眼をクシクシしながらこちらを見ると、柔らかい笑顔で「おはよう、主よ」と言ってきた。


「おはようレーベル。アリーナは起きない感じ?」

「多分もうしばらく起きんじゃろうよ。あのスキルはあまりに非常識じゃからな。聖剣の特性すら書き換えるなど神の所業じゃよ」


 そうだねぇ……私もその内そのくらい使えるようになるんだろうなぁ。まぁいいや、私達は出る準備をしてレーベルにアリーナを担いで貰い部屋を出た。



 入口ではアグエラさんが待っていた。


「今日で最後か。勝てとは言わん。頑張って来い!!」

「うん、ありがとうアグエラさん。行って来ます」



 いつかまたこの国に立ち寄った時は、この人の宿屋に泊まりたいと思った。




 闘技場に向けて様々な人達から一言一言声援を貰いながら歩いていると、私は見知った人を発見する。あれは確か、Aブロックの…スビアって人だったかな?なんだか途方に暮れた顔してるけど、どうしたんだろう?


「えっと…スビアだったよね?どうしたのそんな顔して」

「え……ああ、君は。いや、ちょっとモリアロがな……」


 聞くと、準々決勝の時に勇者と戦った後、勇者が勝手に傷口を閉じた所為で、千切れた手足を繋げての回復が出来なかったらしい。それで、来年から彼女と戦えないという焦燥感と、今になって自分の中にあった想いの所為で、どうすれば良いか分からなくなっていたそうだ。


「なるほどのう……主よ」

「分かってる……ねぇスビア、今日の決勝戦。もしも私が勝ったら、夜にモリアロのところに行ってあげてくれないかな?」


 突然の申し出に、スビアの眼に光が戻った。彼はこちらの顔を見て、また俯く。


「それは……けど、今更何を言っても彼女の人生は…」

「それは貴方の決めることじゃないし、それに、貴方が支えてあげれば問題無いじゃん。そう思わない?」

「………弱気になってても仕方ないか。そうだよな……期待してるよ、決勝」

「うん、それじゃあね」


 まだ暗い笑顔だけど、私達に声援を送って彼は歩いていった。

「今日の決勝含めて全部終わらせたら、治しに行こう」

「そうじゃの。我はハッピーエンドが好きじゃからな」

「私もそうだよ。というか、妖精は皆そうかな」


 その後も色んな選手達に声を掛けられながら、闘技場に辿り着いた。



「……んあ?」

「む、起きたかアリーナ。おはよう」

「おお、おはようアリーナ。昨日のこと覚えてる?」


 アリーナは眠気眼で「あーうー…」言いながら頭の底から記憶を掘り起こしていく。




「あー……助かったやーつー?」

「「あやっふや」」




 アリーナはレーベルの背中から降りてぐいーっと背伸びをすると、頭をポリポリ掻いて私に抱き着いてきた。んーどしたどした。久々の感覚で感涙しちゃうぞー



「アイドリー、がんばって?むちゅっ」(至近距離+上目遣い+吐息+頬キス)

「レーベル、今日の私は輝いているかい」

「これ以上無いぐらい輝いておるぞ主よ。じゃから勇者との前に我と一戦やろうか?」



 ふははは、今日の私は無敵である。

小さくなったレーベルと大きくなったアリーナの体格は、丁度あべこべになった感じです。

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