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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第四章 王都ガルアニアの武闘会
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第51話 本選第2回戦 ④

「んぅ~~……ふぃ~。よーし、行こ」


 軽く伸びをして首やら肩やら拳の関節を鳴らして私は立ち上がった。今日を越えれば後32回で終わりだ。勇者かレーベルか、どっちかとのガチバトルまで私も多少なりともちゃんと戦わないとね。



『さぁさぁさぁ、遂に2回戦最終組ですが、皆さんその目に焼き付いていることでしょう。あの巨大な氷の華を!! 愛らしい姿に秘められた情熱の炎を!!! さぁ皆さんお迎えしましょう、勇者に唯一勝てる可能性を秘めた少女を!! アイドリー選手、入場ですッッ!!!!!!!』



 歓声と供に外に出ると、誰もが私を笑顔で見ていた。込められた期待の何と大きいことか。けどきっと皆こう思っているんだろうね。勇者にあと一歩及ばないだろうけど、その健闘を皆で称えてあげようとか。強くて可愛いけど、勇者が負ければ皆損するから仕方ないよねって感じで。


 だがその幻想、粉々に磨り潰していく予定なので諦めてつかーさい。


『アイドリー選手といえば、やはりあの巨大なレッドドラゴンと氷華、そして何よりべらぼうに可愛い!!! 戦闘の方もまったくの未知数ですが、アイドリーちゃんの戦闘力に乞うご期待下さい!! 次はトゥイーレル選手!!』


 対面に出て来たのは、格式高い鎧を装着している彼女は、凛々しいい表情のまま誰の声援に応えることもなく、ステージ場まで上がって沈黙した。


『王立騎士団の人間であるトゥイーレル選手の技量も高いことは皆さんご存知ですね? そして情け容赦の無い勝ち方は正しく戦慄の騎士姫であります!!! 魔法が得意なアイドリーちゃんにどのような戦い方をするのか楽しみです!!!』



 予選であった時は。大鎌の人を斬り捨ててたもんね。トゥイーレルは私を見ると、こちらに指を向けて見下ろしてきた。というあこの人身長たけぇ。羨ましいな……


「アイドリーとやら。私は騙されてはいないぞ。あんなコケ脅しで私がビビると思ったら大間違いだ」

「……どういうこと?」


 この方は何を仰っていらっしゃるのでごじゃろうか?


「大方私を恐れて1回戦であんな張りボテを用意したのだろうがお生憎様だ。私はそこらへんの有象無象のように肝の小さい女ではないのだ。覚悟しろ」


 ……ああ、なるほどね。私がトゥイーレル恐れてるからあんなことをしたと思っていたのか。しょうがない。勘違いを解く為に同じ土俵で戦おうか。私は馬鹿重い自分の剣を取り出して構える。


「ほう……」

『なんとアイドリーちゃん!今回は剣で戦うつもりでしょうか!!!そんなことして可愛い顔に傷が付いたらどうするの!!?』


 いや、知らんし。付いても回復魔法士居るから大丈夫だよ。


「良い度胸だ貴様。私に剣で挑んだことを後悔させてやるぞ……っ!」


『あ~んもう気を付けてアイドリーちゃん!!試合開始~~~!!!』



トゥイーレル・アルダース(23) Lv.192

種族:人間


HP 5722/5722

MP 3751/2751

AK   4042

DF   3875

MAK  3996

MDF  2477

INT   700

SPD   3647


スキル:剣術(S-)体術(B)



 何か騎士の人って極端だなぁ色々と。というかこの人元副団長のダイオスより強いじゃん。名前と振舞いから貴族騎士って感じだけど、それだけじゃなさそうだね。まぁ特筆するべきは剣術の高さだけかな……?


「はぁぁああッッ!!」

 鋭く繰り出される攻撃をまずは弾こうとした瞬間、私は色んな意味でやってしまった事に気気付く。

(あ、私の剣って耐久度はどうなんだろう?)


 バキンッ!!

「「えっ」」


 攻撃した方された方が同時に声を上げる。ただ受けただけなのに、トゥイーレルは剣を衝撃で離してしまったのだ。見ると、握っていた手が痙攣してしまっている。


「なんだその……とてつもなく重い剣は!! まるで鉄骨のようではないか!!!」

「えっ、えっ」


 私はすっかり忘れていた。私にとっては普通に扱える程度の程良い重さの剣でしか無かったが、相手にしてみれば、巨大な鉄の塊をそのまま受けるような物だということを。この剣は落とすとそのまま地面に潜り込み取り出せなくなるほど重たいのだ。


 だが、その反省会は後でしよう。今はそう、試合の真っ最中なのだから。


「えーっと……どうする? 続ける?」

「当たり前だ!!」


 後ろに跳び落ちた自分の剣を取り直すと、今度は刺突で攻撃してきた。私は今度は弾かず受け止めたが、


ガイィィ~~~ンッ!!


「か、かたっ!?」

(ん~、傷付きもしないか。材質なんだろうこれ?)


 全体重を乗せたであろう刺突の当たった剣は微塵もブレず、その衝撃は全てトゥイーレルの腕を痺れさせるだけで終わってしまった。バットを思いっきり地面に打ち付けた時の衝撃を私は思い出しながら、後退るトゥイーレルを見た。


「……~~~ッ!!」

「そんな可愛い顔で睨まれても」

「ふざけたことを言うなぁ……っ」


 んープルプルしながらも剣を手放さないのは立派だが涙目である。これは流石に可哀想なんてもんじゃないな。



「あーやっぱりこの剣は私には重過ぎて上手く扱えないしなーしょうがないから普通の鉄の剣で戦おうかなー折角買ったのにもったいないけどシカタナイナ~~~~……(チラッ)」

 そう言って普通の鉄の剣を取り出して、使っていた重い剣を仕舞った。反応を見てみると、うわ、凄い上機嫌になった。


「そ、そうだろうそうだろう、人間やはり使い慣れた武器は一番だぞ!? では仕切り直しだな!!」


 御免なさい、私は妖精なんでその言葉は当て嵌まらないっス。今度は彼女も安心して斬り込んできたので、私はそれを全て受け流すに努め激しい剣の応酬が始まった。しかし私は全て受け流すのみで攻撃をしない。

 それを良い方向に捉えたのか、トゥイーレルの顔には最初のような見下しが入り始めてしまう。


「愚者よっ!! 貴様の技量など所詮その程度よっ! 大人しく私に貫かれるが良い!!」

「痛そうだから遠慮しておくよっと」


 というかどうやって勝とうかな? あんまり綺麗な女性の血の流れる姿とか見たくないんだけど……また剣を斬り落としちゃうか。



「くらッ!!「せいっ」……え?」



 次の攻撃をしようと振り被った瞬間、トゥイーレルの剣の刀身が綺麗さっぱり無くなる。自分の武器を見てトゥイーレルはコテッと首を傾げてしまった。ちょっと可愛いな。刀身がどこに行ったのか気になっているんだろうね。


「ほら、探し物はこれ?」

「なっ!? ~~~~~っ!!」


 私が斬り落とした刀身を指でクルクルと回しながら見せると、トゥイーレルは顔を真っ赤にして激怒した。武器も無いのに、殴ろうとしてくるので、その前に私は剣を彼女の顔に向ける。動きが止まり、フルフル震えて振り上げた拳を振り下ろせない悔しさが滲み出ていた。


「くぅ、うぅぅぅうぅう~~~~~ッ!!」

 そんなに負けるのが悔しいのか、涙を流しながら両手を上げて降参の意を示した。私は静かに剣を降ろす。

『決着!!なんとアイドリーちゃん王立騎士団に剣での勝利を収めましたぁぁッッ!!!圧倒的勝利により、準々決勝進出です!!!!』


「ふぅ……」

「貴様……よくもこの私に恥をッ!!」

「いやいや、試合上の勝敗だし。それにほら、貴方を称える声だってあるじゃん?」

「えっ……あ」


 今まで気付いていなかったのが、トゥイーレルの健闘を称えて観客達から声援や拍手が送られていた。


「ほら、恥なんかじゃないよ」

「うぅ……そう、だな。良い、戦いだった。騎士らしく……またやろう。冒険者よ……緊張してしまって語気が強くなってしまっていた。すまなかったな……」

「いいよ、また機会があったら今度は遊ぼう」

「あそっ……それも良いか。ま、騎士団長ほどの美貌ではないがな!!」

「なんのこっちゃ……」


 固い握手を交わせば、また大きな拍手が上がった。はにかみながら笑うところは年相応で綺麗な女性だった。ちょっと高飛車なところが無ければ是非お友達になりたいところだよ。



「ただま~トゥイーレルは正しく女騎士だったね」

「くっころ~?」

「私はオークじゃないよ?」

「天晴な終わり方であったな。あの者は周りを見渡せば己を見つめ直すタイプと見た」

「いや、闇は深そうだったよ中々」

「?」


 いつものように観客席に居る2人の元へ戻ってきた。んー久しぶりに運動した気分だね。試合時間的には10分少々だったけど、やっぱり武器を使うと適度に疲れる。ここら辺はちゃんと生物してるなぁ。


 この世界にあるステータスという物が物理概念全てに作用するのを考えると、もしかしたらスタミナみたいな物も数値として見られるのかな? いつか試してみよ……


「明日からは私もレーベルも居ないけど、アリーナどうする?」

「応援する!!」

「ここに居れば周りの観客も観ておるし、何かされるということもないじゃろうて」

「まぁそうか」


 アリーナは翌日からは1人で観客席に居るけど、私達が同調していれば何かあった時にすぐ対処も出来るだろうしね。

「よし、今日は宿屋で将棋三昧といこうか。レーベル、今日こそアリーナに勝とう」

「任せい!!」

「しょうぶ~」


 2人揃って20連敗しました。つぇー……つぇーよ……





「我の武器の補強じゃと?」

「うん、必要だと思って」


 その日の夜、私はレーベルのハルバードを借りていた。ちょっとねぇ、勇者と戦うからには、このハルバードも良い物だけどきっと聖剣には敵わない。だから私が妖精魔法を使って補強することにした。


 私の剣は逆に対人に使うには重過ぎるし硬過ぎるけど、彼女のはそれぐらいがきっと丁度良いと思ってたんだよね。


「どんな感じにするかご所望は?」

「むー頑丈であれば特に言うことなど無いぞ? 下手な効果加えたところで、我の攻撃力で粉砕する以上の物にはならんじゃろうし。重さもあると尚良いが」

「人間状態でなら役立つかもじゃん? 概ね期待している物を作ってあげるって」

「そう言われてものう……じゃあ全体的なステータスアップも良いかのう?」

「いいよ。それじゃあ……」


 イメージは肉体強化で、込めた魔力で増減するようにして、私の魔力で判断出来るように……発動。

ガギッ!!


「ふぐぅ!? あ、頭がぁ~~~ッ!!」

「アイドリー!?」

「どうした主よ!?」


 いや、だ、大丈夫。ダイジョーブだから。何かこう、物凄い計算式? みたいなことを頭で一気に解いたような感じで頭から変な鈍い音が響いたけど平気だよ……いや、平気じゃないど。


 ハルバードを見ると、姿形は変わってないけど、なんとなく私の魔力を感じた。成功みたいだね。


「レーベル。私は大丈夫だからそれ握って魔力流してみて」

「う、うむ。主がそう言うなら……おぉ!? これは凄いぞ!! 全体的に2割増しになっておる!!!」


 事前に魔力へ変換して8000万のMPを丸ごと使って2割か。予想よりも少ないけど成功したから良いか。失敗してたらハルバードが粉微塵になっただろうし。多分私への負荷の原因は、使った武器素材の所為だけど。


「主のは何かやらんの?」

「今日はもう限界だから、また今度かなぁ」



 頭の熱は引いたけど、まだちょっとフラフラするからね。後はこのまま寝てしまおう。


「てことで寝る。アリーナ~抱き枕にならない?」

「なる~♪」

「我もなるのじゃ~」


 抱き枕を抱いて抱かれながら寝ました。前も後ろもやわっこいやぁ~………ぐぅ…

 寝起き時


「ぼさぼさ~♪」寝癖爆発

「あーあー直さないと……」寝癖爆発

「か、髪が……ん、絡まって……動けん……んぅッ!」寝癖巻き付き

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