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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第四章 王都ガルアニアの武闘会
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第48話 本選第2回戦 ①

『皆さん、昨日のこともあって今日はより盛り上がっているようで、私司会としてとても嬉しい限りです!! さて今日から2回戦ですが、選手の皆さんもやる気満々です!!! それでは1組目といきましょう!!』


 レーベルが入場すると、黄色い声援で溢れかえった。所々には花束を持った男性女性も見える。あまりに大振り過ぎて花びらが散っていた。その惜しみない肉体美に目が奪われるばかりである。


『さぁ最初に出て来たのは我等がレーベルお姉様!! 今大会の華を飾る美しき紅姫です!!! 1回戦ではその戦闘力を見ることが出来ませんでしたが、今回の相手にはその力を示して頂けますよねお姉様?』

「うむ、我に任せよ!!」

『流石ですお姉様!! 次はホロミル選手入場です!!!』


 ホロミルは1回戦の時と変わらず防具を一切付けず、弓と矢筒のみを持って現れた。


『不可視の矢を放つホロミル選手、まだまだ本気を見せていません!! 彼女の弓捌きは、一体どこまで進化し続けていくのか!!!』


 熱気が1回戦の比ではない闘技場の中で、レーベルとホロミルは他の一切を目に、耳に入れずお互いの眼を見ていた。レーベルはハルバードを水平に構え、ホロミルは既に弓を構えていた。


『では第2回戦レーベル対ホロミル、試合開始ぃぃいいいいいい!!!!』


「ッ!!」

 銅鑼の最初の音が鳴った瞬間ホロミルは後ろに飛んで矢を放った。コンマ1秒にも満たない速度でレーベルの顔面に向かう不可視の矢に対してレーベルは、シンプルに動いた。


「おっと」

 水平に構えていたハルバードをグルンと1回転させる。そしてハルバードに何か当たったかのような音が鳴ると、真ん中から叩き割れられた矢が地面に落ちていく姿が現れた。


「やりますね……それでは次ですっ!!」


 ホロミルの2射目。2本の矢がレーベルの爪先と肩を狙った射撃である。寸分違わず射られた矢がレーベルを襲うが、


「甘い」


 今度はハルバードを2回転させて二本とも弾き折った。観客から感嘆の声が漏れる。

「2本までは防ぎますか。しかしここからは未知数でしょう?」

「いいから……撃って来い弓使い」


 人差し指を立てクイクイと挑発するレーベル。ホロミルは望み通りに次を放った。

「……ふっ!!」


 3射目。頭、腹、右足を狙って放たれた矢。レーベルは今度はハルバードを回さず、体を逸らすだけで全て避け切ってみせる。矢は全て後ろ奥にある壁に刺さり実体化した。


「なっ……見えているのですか!?」

「さぁ、どうじゃろうなぁ?」


 ゆっくりとホロミルに向かって歩き始めた。ホロミルは直ぐに4射目、両手両足に向かって時間差で放つ。


「まだ駄目じゃのう~」


 ハルバードの石突を真っ直ぐに構えると、押し出すように前方へ4回突いた。矢の切っ先が砕けた状態で全て実体化した。ホロミルの顔が驚愕で染まる。


『凄いですお姉様!! ホロミル選手の攻撃を華麗に捌いていきます!!! 余裕の表情をまったく崩しません!!!』


「では本気でいきましょうか!!」

 ホロミルは一気に矢の本数を増やした。その数16本。ホロミルが一度に放てる限界数である。神速とも言える速さで縦一列で放たれた矢。レーベルはホロミルの技に笑みを深めて応える。


「ならばこうじゃ!!」


 矢の側面に一瞬で移動し、縦に振られたハルバードで纏めて叩き折った。


 自分の最高の技を破られたホロミルは、近付いて来るレーベルに対して諦めた表情になると、ハルバードを首に突き付けられるまで無抵抗になった。無理も無い話で、矢筒の中身は、1本の矢も残ってはいなかったのだから。


『やりましたレーベル選手!! ホロミル選手の矢の試練を全て真っ向から打ち破り勝利しました!! 準々決勝進出ですッッ!!! おめでとうございますお姉様!!!!』


「まったく、まるで敵いませんでしたね。私の完敗です」

「うむ、これからも精進するのだ。次相まみえる時を楽しみにしておるぞ」

 二人は固い握手を交わし、ステージを後にした。観客達は2人の健闘を称え、姿が見えなくなるまで拍手の雨を降らせ続けたのだった。



「どうじゃアリーナ!! 我は格好良かったか!?」

「レーベル、とっても格好良かった!!」

「おっしゃぁあああああああ!!!」


 狂喜乱舞するのは良いけど此処観客席だから。色んな人にジロジロ見られてるから止めてくんない? 何かレーベル妖精に似てきたかな? いや、基本人間に対して警戒心バリバリだけどさ。




『続きましては、剣を新調したアビル選手対、巨大チャクラム使いのチャック選手の入場です!!』

 さっきとは対照的で、まったく目を合わさない両者。お互い自分の武器の調子を見ているようで、2人供相手の足の位置だけに集中していた。


『アビル選手はその場その場で戦い方を変えられるオールラウンダーな選手に対して、チャック選手は巨大チャクラムによる中近距離で戦うトリックスターです!!この戦いはどちらが勝つかまったく分からないので楽しみです!!!では2組目、試合開始いいぃぃいいいい!!!!』



「おぉぉおらっ!!」

「喰らわないねぇ!!」


 アビルの速さを活かした側面からの一撃は、チャックのチャクラムの刃が受け止めた。チャックはアビル程速くは動けないが、体捌きと視力の良さが売りの冒険者だ。例え至近距離のレッドベアの爪でも彼には止まって見えることだろう。


 今度はチャックのチャクラムがアビルの腹に一閃。何とか返しの剣で防いだが、無理やり防いだ為に手首に激痛が走った。アビルはそのまま自分から後ろに跳ぶが、それもチャックの距離内。


「下がったな!?」

「ちぃっ!!」

 巨大チャクラムを回し投げるチャック。凄まじい風圧で迫るそれををしゃがんで避けた。そしてチャックに肉迫しようとするアビルに、チャックは笑いながら後ろに跳ぶ。

「飛び道具が投げて終わりだと思ってんのか?」

「武器の特性ぐらい御見通しに決まってんだろうが!!」


 後ろから旋回して戻って来たチャクラムを、今度は走ったままのスピードで跳んで回避したアビルは剣を振りかぶる。手元に戻ってきたチャクラムでチャックは迎撃しようと防御したが、


「幾ら大きかろうが脆いのに変わりねぇだろうがよ!!!」

「はっ、馬鹿がっ!!」


ガギィィィッギギッ!!!


「「―――ッ!!」」


 渾身の一撃を…………チャクラムは見事に耐え切った。アビルは、仄かにチャクラムが魔力を帯びているのが見えて歯噛みする。

「くそ、ミスリル入りか。魔力を込めて硬度を上げやがったなっ!!?」

「ご名答!!」

 大振りの反動で隙の出来たアビルに、チャックの攻撃が入った。肩からザックリと鮮血が舞うアビルに、観客から数人悲鳴が出た。


「ぐぅ……へっこの程度かよ!! かすり傷なんだよ!!!」

 アビルは直ぐに不適な笑みを浮かべて戦闘を続行した。またチャックは受けようとするが、

「遅い!!」

 直前で攻撃を止めて切り替えし、チャクラムを持っていた手を剣で斬った。

「ぎぃいッ!! ゆ、指がぁあ!!」

「おらぁッッ!!!」

 そしてチャックのチャクラムを蹴り上げ、そのまま男らしい頭突きをチャックの頭にお見舞いする。チャックの頭が凹み、大きく一回痙攣した後、ズルズルと倒れて意識を失う。


『けっちゃぁぁぁあああくッッ!!!アビル選手、苦戦しながらも見事チャック選手を下しました!!!準々決勝進出ッッッ!!!!!」


「今年は、まだ上がれっかな……」







「で、何の用よ日野。態々携帯魔道具使ってまで連絡してくるなんて」

『いや、ちょっと気になっている選手が二人程居てな』

 勇者、高坂 彩音はアイドリーと同じような魔道具を使って、もう一人の勇者、日野 栄樹と話していた。彼女は現在隠蔽スキルを使って身を潜めている為、誰にも見つからずに堂々と話せている。高坂はこの携帯が極端に魔力を消費するから嫌いだった。といっても、他の勇者も皆使いたがらないが。


「さっさと用件言ってくんない?」

「わかった。先程戦ってたレーベルという女と、Bブロックのアイドリーとかいう目立ちたがりについてだ。その二人ともう一人でパーティを組んでるというのを知ってな」

「へぇ…」


 それについては、高坂も気になっていた。というか気に入らなかった。勇者よりも目立とうとするやり方も、自分よりも優れた美貌も、勇者への宣戦布告も、何もかもが。

『それでな、将来的にハーリアに歯向かう者と俺は見ているので、ここら辺で潰したい』

「どうするの?」

『俺は――』

「……へぇ」

 一切の躊躇い無く言った日野の言葉に、高坂も顔を醜く歪めた。


「どのくらい? 殺すのは無理だから、腕とか足とか?」

『そんなところだな。斬った瞬間に傷口を塞いでしまえば繋げることは不可能だからな』

「顔は? ぐっちゃぐちゃにしたいんだけど?」

『好きにしろ。では攫ったらまた連絡する』


 そう言って通話は切れた。高坂は上機嫌に鼻歌を歌いながら、誰にもバレずにその場を後にする。


 このところ暇で暇でどうにかなりそうだった高坂は、今回の武闘会でストレスを発散する気でいた。なのにいざ出場してみれば、自分よりも目立ち客に色目を使って声援を浴びる女や、勇者に愚かにも宣戦布告した馬鹿女が居たのだから、高坂は殺したくて仕方が無かった。だが命令がある以上、優勝は最低目標なので殺すのは無理だと諦めていた。


 だが、2人の人生をぶち壊せるチャンスを得た高坂は、一気に機嫌を直し、次の連絡を心待ちにし始める。




「どんな顔して泣くか楽しみだなぁ~♪ ……はぁ~~~……歪んだなぁ、私」

ジェンガで勝負してみた。


「ぬ、抜けぬ……だと?」

「というかどういうバランスで立ってるのこれ……?」

「限界への挑戦ッ!」


 最後には全て角で立ち、アイドリーの手番で倒れました。


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