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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第一章 妖精郷
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第5話 かくれんぼとイメージ

「もう~いい~か~い?」

「「「もう~いい~よ~~!!!」」」


 さぁ始まりました。妖精全員参加による大かくれんぼ大会。見つける人はテスタニカさんチーム150人。そして隠れる鬼は私含めノルンさんチーム300人以上。ここまで大規模に出来るのは、やはり妖精の小さな体躯と、巨大な世界樹あってこそだね。


 後、かくれんぼでそれぞれの役割なんだけど。


(逃げる妖精が『ゴブリン』で見つける妖精が『冒険者』って役なんだねぇ~……)


 逃げ出した瞬間ゴブリン役達が「キーッ!!」って元気良く飛んでいくのが印象的だった。



 さて、なんでこんな事をしているのかというと、始まりは私の『隠蔽』のスキル取得に起因する。



「『隠蔽』ってどうやって覚えればいいのかな? 隠密行動的な?」

「ふむ、持っている妖精に聞いてみよう。そういうのに長けている者が居た筈だ」

「い、居るんだ……?」

「何かしらは極めているものだぞ妖精は。遊ぶ事に関して言えば、だが」


 とノルンさんが『妖精の眼』で『隠蔽』を持っている妖精を見つけて話を聞いてみると、彼等はかくれんぼでよく遊んでいるグループだった。なるほど、隠れるという訓練においてかくれんぼって効果的なのかと2人で頷いてしまう。


 そこでノルンさんは、手っ取り早く取得出来るように大規模でやろうと言い出したのだ。それをテスタニカさんが流れる様にゴーサイン。


 妖精達も全員快く引き受けてくれたので、こうしてイベントは開催に至る。



(さて、ただ隠れてるのも暇だし、早速練習でもしようかな)


 隠れるコツを妖精達に聞いたところ、『気配』を消すことが大事だと言われたんだよね。けど意識して気配を消すのってどうやってやるの?って言ったら、自分が元になっている自然を感じることが大切なんだとか。だから火とか水の妖精は隠れるのが下手らしい。一番目に見え易いから。


(私の場合、空間そのものだからね。比較的容易に出来る筈……)


 自分が空間の一部であると思い込みながら、周りを感じるようにに努めてみる。


 もやもや……ほにゃほにゃ……むにゃむにゃ……私は空気…………



(…………おぉ?)



 すると、ジワジワとだが、自分の存在が希薄になるのを感じ始めた。よしよし、この調子でどんどん自分を空間に溶かしてみよう。


 遠くの方ではテスタニカが次々と妖精達を見つけていく声が聞こえる。あ、アリーナも捕まった。テスタニカさん見つけるの上手いな。


「ありゃ~?」

「ふふ、中々うまく隠れたわねアリーナ? 才能あるんじゃないかしら?」

「ほんとー? んふふ~♪」

「さて、後はノルンとアイドリーだけね」


 そうテスタニカさんが宣言する。広場にはかくれんぼの為に用意したのか、どでかい鉄の檻がある。そこには鬼役の妖精達がしこたま入っていた。口々に「おたすけー」「やつらのほうがおにだー」「死して屍ー」と楽しそうに喚いてるね。


「ふふーん。後探してないのは玉座の間だけ♪」


 そう言って歩みを進めていくテスタニカさんは、玉座の間に入って室内を見渡す。一見して隠れるような場所は見当たらない。どこに隠れてるんだろう?


「さてさて………」


 テスタニカさんは耳を澄ますような格好になり、数分黙ると、満足した顔で歩き始める。止まった先は、いつもテスタニカさんが座っている玉座。誰も座っていない玉座に、テスタニカさんがゆっくりと手を伸ばしていくと、その部分だけ空間が歪んでいるように見えたのだ。


「ふっふっふ、ノルンみぃ~つけた♪」

「……やれやれ、敵わないな」


 おお、歪んだ空間が無くなると、そこから玉座で座禅を組んでいるノルンさんが出てきた!


「魔法で光を反射させていたのでしょうけど、気配を消すのがまだ苦手なようね?」

「むぅ……これからも日々精進するさ。後はアイドリーだけか?」

「そうなのよねぇ~ここにはノルンしか居なかったし、他は全て探した後だから、私でも分からないわねぇ」


 どうやらテスタニカさんでもお手上げのようである。その後。テスタニカさんチームが手あたり次第に探し回ったが、無常にもタイムリミットになってしまった。



「すごいわねぇあの子、全然分からなかったわ。アイドリーッ!!貴方の勝ちよ~、姿を見せて~~!!」

「はいよー」

「あひゃん!!?」


 呼ばれたのですぐ目の前に現れたら、テスタニカさんが尻餅付くぐらい驚いてしまった。ノルンさんもテスタニカさん程じゃないけどビクっと震えている。


「凄いな。まったく気付かなかったぞ」

「もう、吃驚させないでよ!!」

「アイドリー♪」

「ごめんごめん。けどあれだね、私空間に干渉出来るからやろうと思えばどこまでも気配を薄く出来るみたい。だからずっとテスタニカさんの傍に居たよ?」

(アリーナずっとこっち見てたけどね。すっごい抱き着きたいって顔でうずうずしてたしね)


「本当に? なら、私でも全然気付かないんだから『隠蔽』は習得出来たのかしら?」

 

 確認してみると……うん、無事取得出来ていた。それを確認したテスタニカさんも顔を綻ばせる。


「なら良いわ。さて、終わったから皆でご飯にしましょうか」

「「「Yahuuuuuuuuuuuuuuuuu!!!!!」」」


 今日の昼ごはんは、皆で作った世界樹の蜜アイスだった。





「残すところは『手加減』のスキルだけね」


 蜜アイスを舐めながらテスタニカさんは告げてくる。ペロペロしてる姿見てるいると、そこらへんの妖精と変わらないなぁ。美貌は段違いだけど。


「ステータスは基本戦闘にしか影響はされないから日常生活においては安心出来るわ。けど安易に対人戦闘すると、相手をミンチにしちゃうから。何度も言うけれど、習得するまで剣の練習は駄目よ? 素振りすらコントロールしないと何もかもがスライムよりも簡単に斬れちゃうんだから」

「分かってますよー」

「そう言って世界樹に傷を付けたのはどこの誰かしら? あん?」

「私です誠に申し訳ないっスはい」


 実は、レベルの上がった状態でどれくらい全力で動けるのか世界樹の裏で剣を振ってみたら、思いがけず斬撃が実体を持ってしまったのだ。そしてそのまま世界樹に直撃し、大樹とはいえ、小さなクレーターが出来た。



 それを見たテスタニカさんが本気の魔法をぶっ放してきて大惨事になった。自重大事、絶対。



「ということで、貴方にはこれを使って訓練をして貰うわよ」


 そう言って渡してきたのは、1本の枝。


「これ、そこらへんに落ちてる普通の枝だよね?」

「ええ、世界樹のではないわ。まぁいいから、試しに振ってみて?」

「ほいほ~い……せりゃっ、あっ」


 振ったら持っている部分から先が消失した。無くなった先っぽは遥か高くから落ちてくる。どうやら勢いで折れて飛んだらしい。


 ……空中でアリーナがキャッチしてこっちにブイサインをしてるね。うん、太陽のように眩しい。


「とりあえずこれを100回振っても折れないようにして頂戴。そうすれば『手加減』のスキルも手に入ると思うわよ?」

「これは中々難しそうだな。頑張れよアイドリー」

「ういーす」


 まぁこれなら疲れないだろうし、周りの妖精達にも迷惑掛けないから大丈夫だよね。ということでアリーナにも手伝って貰い、山のような枝を広場まで集めて持って行き訓練を始める事にした。









「……アリーナ、今ので何本目?」

「999本目!!」

「わーい、次で四桁の大台だぞ~……」

「わーいー?」

「はい、凹んでます。撫でてくだせぇ……」

「はいな~♪」


 うん、一度も成功せずにかれこれ数時間経ったね。


 むぅ……何が駄目なのかハッキリしてるんだけど、解決策が見つからないそんな状態なんだよね。豆腐を爪楊枝でゆっくり突き刺そうとしたら爆散するとかそんなレベルで、どんなに弱い力でやっても同じ結果になる。


「やっぱり振り方なのかな? けど剣術スキル的にそんなに酷いもんじゃないと思うしなぁ……」


 そしたらアリーナが身体一杯に何か表現しながらこう言ってきた。


「えっとねー? こう、ブワッてなってるの~~」

「……ぶわ?」

「力の収束が緩いと言っているのよ。アリーナは」


 テスタニカさんが呆れた顔をしながらこっちに来たと思えば、やれやれと首を振る。


「貴方は剣の扱いは上手くなったけど、剣に乗せる力を身体に頼り過ぎているのよ」

「???」

「INTが高いのに察しが良くないのね。つまり、ステータスだけを見るなって言ってるのよ。貴方は妖精なんだから、もっと簡単に考えても良いのよ。その為の妖精魔法だとは思わない?」

「……あっなるほど!!」



 私は思いつき様に新しい木の枝を握り、振り抜く………折れない。



「せいこう~?」

「うん、テスタニカさんありがとう。想像出来たよ」


 大事なのは、明確なイメージだった。妖精魔法はイメージで発動するものだ。だが、それ以外でだってイメージは大切だ。


「ようやくこの世界の理に近づけたみたい?」

「妖精魔法が万能ってことだけは分かったかな」


 どんなに弱く振ってもステータスは一緒なのだ。ならそれを抑制する為の物が必要だ。剣術だけじゃ無理なら、妖精魔法を使って無理やり物理法則を無視すればいい。手加減を何も剣術スキルだけで行う必要など無いのだから。


「妖精魔法無しで手加減して剣を振るなら、貴方の場合最低でも剣術スキルはSが必要よ。そこまで上げる間は、妖精魔法のイメージを乗せて戦うしか無いわ。魔法剣士で誤魔化しても良いけど」

「『手加減』にはその方法で定着されたみたい。無事、習得したよ」

「おめ!」

「ありがと~アリーナ~」

「わしゃわしゃ~♪」


 アリーナを揉みくちゃに愛でる。ああアリーナ、超アリーナ。


「それで、目標を達成した訳だけど、出発はいつ?」

「色々準備してライブもやるから~……」

「あ、やるのね……」

「大体一週間後ぐらいには行くよ」


 そこで、クイクイとアリーナが袖を引っ張ってくる。ん、どしたね?



「アイドリー、どっか行くの?」

「え?」

「え?」



 ……もしかして私は今までやってきたことの意味を知らずに協力してくれてたのかな?あらあら何かとても嫌な予感がしてきたよ。


「あ、アリーナ。私ね、1週間後に旅に出るの」

「うい、私もよく行くよ? 森とか草原!」

「それよりもっともっとも~~~っと遠くに行くの」

「……?」


 首を傾げてしまったので、私はテスタニカさんを引っ張ってアリーナから離れる。


「アリーナって、もしかして……」

「察しの通りよ。あの子はまだ若いから、世界がどういうものかっていうのをまったく分かってないわ。今現在アリーナにとっての世界は、この妖精郷と、周りの環境だけね」


 あーうん納得だね。考えてみれば、アリーナってまだ3歳だもんね。3年一緒に居たからこそ、アリーナの知識とか感性は子供そのものだし。疑いという言葉を知らなそうだ。


 振り返ってアリーナに向き合う。アリーナの頭が逆側にコテッとなった。あーちくしょう可愛いなちくしょう。


「アイドリー?」

「アリーナ、あのね? 私これから長い旅に出るから、妖精郷にはしばらく戻れないの」

「……どのくらい?」

「ちょっと分からないけど。多分数年、かな……」


 みるみる内にアリーナの顔から色が落ちていく。受け止めきれない現実を知った子供の顔だ。けど、こればかりは私も曲げられない。



「……………………わかった」



 とても渋々だが、アリーナは頷いてくれた。良かった……泣かれたら土下座して腹を自分で掻っ捌くところだった。



「なら、私も行く!」

「………おっと?」



 そうきたか…………そうきたかぁ~


「それ、良いわね」

「ちょっテスタニカさん?」

「聞いてアイドリー。実は私達って、とってもピンチなのよ?」

世界樹の蜜アイス レシピ


世界樹の蜜 ……お好み

世界樹の葉 ……10枚

世界樹の枝 ……1本


①:蜜と葉10枚をボールに入れる

②:枝で氷を魔法で入れながら10分全力で掻き回す

③:完成


アイドリー「え、これどうなってんの?」

テスタニカ「長年の研究の結果らしいわ。理由一切不明だけど」

ノルン「葉を一枚減らすと塩味になり、加工した枝棒にするとよりまろやかになるぞ」

アリーナ「世界樹ななふしぎー♪」

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