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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
最終章 貴方と私の物語
401/403

エピローグ 永劫に続く未来の果てでも

 妖精歴100年 今年も世界は平和に回っているようで……





「先生、それから創造神アイドリーと聖母アリーナはどうなったんですか?」


 1人の獣人の子供が元気良く手を挙げてそう言うと、教卓の上でスーツを着こなして飛んでいる妖精は得意気に話しを続ける。



「どうもこうも、最初に旅立つ時の目的通りだよ。世界中を練り歩いて、様々な冒険を繰り広げたの。財宝とか大自然の作り出した美しい風景とか見て感じたり、他国の文化に染まってみたり、逆に文化を作ってみたり、美味しい料理も沢山食べて覚えてレストランをチェーンで展開してみたり。ああ、世界遺産とかも見つけてたね。神代魔道具のゴーレムが封印されている遺跡とか」


 1週間に1度ある先生の講義。ラダリアに50年前出来た学校で、あらゆる種族を受け入れるという広告を打ち出して世界的な学校になりつつあるこの場所では、能力さえあれば同じく様々な種の者達が生徒達に勉学を教えている。


 今この名誉教授が教えているのは歴史。それもとある伝説に関する歴史だ。



 毎回ピンポイントに話しをしており、有り得ない程詳しいので生徒からも評判だった。


「その数年後に龍神レーベルと妖精王クアッドが結婚したんだけど、当時は子供が作れるのかどうか謎でね、怖いから元創造神のユニスに相談してたんだよ」

「答えはなんと?」

「気合とノリでなんとなるってさ」

「雑ッ!?」

「彼も妖精になってもう100年近いからねぇ。感性が完全に染まっちゃったんだと思うよ?結局それで出来たし」

「「「えぇー……」」」


 その後は『妖精の宴』は一時解散。レーベルとクアッドは出産と子育ての為に20年離れる事になる。その間にアイドリー達は暴走し出す。


「それでさっきの話、浮遊島だけど」

「世界樹に引っ掛かった奴ですね」

「そうそう、勇者日ノ本が間違って当てて大精霊と戦争が起こりそうになったけど、アイドリーとアリーナがそこに割って入って、結局あの島に20年のんびり暮らす事になるんだよね。色々作って都市群みたいになってたけど」


 どんどん大地を引っ付けて、最終的に1つの大陸が出来上がる始末である。大きくなり過ぎたので今は星の周囲近くを周回させている状態だった。日ノ本は御年122歳だが、溢れ出る魔力の所為か昔と変わらず瑞々しい肌のままだとか。


 他の勇者達も未だに現役。何人かは隠居しているが、皆それぞれ楽しくやっている。


「そして現在に至る訳だね。さて、もう良い時間だから終わりね。14週続けて行ったこの講義の感想が課題だから忘れない様に。ではかいさ~~ん!!」








「ん~~、終わった~~♪」

「お疲れ様です『コーラス』先生」

「あれ?どうしたのフィール先生?」

「いえ、僕も今終わりまして。昼御飯御一緒しても?」

「どうぞどうぞ」



 私は今、パパとママの下を離れてラダリアの学校で名誉教授をしている。この約90年、私は2人の愛を受けながら世界漫遊の旅をしてたんだけど、自分で何かしてみたいなぁと思ってたの。


 それで偶々ラダリアに帰って来てたらフォルナが新しく誰でも入れる学校を作るって言うから協力してたんだけど、これが楽しくて初めてパパとママに許しを貰って働く事にした。凄い心配されたし低学年の授業参観に何故か来てたけど、思いの他上手くやれていると思う。



「けどあれだね、100年経てば神話になるもんだねぇパパ達」

「コーラス先生のご家族はコーラス先生も合わせて世界の歴史に名を残していますからね……私には先生も眩しいですよ」

「もう、そうやって恐縮されるのは嫌だよ?私なんてただの妖精なんだから」


 そう、私はパパとママの想いの中で生まれた存在。それ以外は何処にでも居る妖精と変わらないと自分では思ってる。それでも力が強過ぎて偶に失敗しちゃうけど。


「それよりフィール先生、またテスタニカ理事長が呼んでたよ?来週実施される行事についてお話があるんだって」

「ほ、ほんとですか?えっと」

「良いから行って来なよ?また後で」

「は、はいッ!!」


 彼は顔を赤くしながら弁当をそそくさと片付け、理事長室に走って行った……青春だねぇ。


 テスタニカさんは成熟した妖精に工場長の地位を渡し女王も退位。今はフォルナの願いでラダリア学校の理事長をしている。ノルンさんは学校の警備隊長兼未だにテスタニカの騎士を続けているらしい。本当に良い親友同士だと思うよ。よくフィール先生の恋愛相談も受けて頭を悩ましているようだった。






 午後は講義が無いので城に帰ると、わらわらと沢山の狐とドラゴンが混ざった様な子供達に抱き付かれた。


「あらあら、王子様とお姫様達どうしたの?」

「「「遊ぼ~~コーラスせんせ~~?」」」

「妖精達はどうしたのかな?」

「今日は集会だから行っちゃったの~~」

「だから遊んで~~」

「ああ、今日はその日か」


 集会というのは、今の時代に人と供に生まれた妖精達限定の座談会みたいな物である。月に一度行われるんだけど、子供達との触れ合いや人間との付き合い方について話しているんだよね。


 今もやっぱり犯罪を犯す人が偶に居るから、それに対する対処とかも良く話し合ったり、人数が必要な場所にすぐ行ける様に人間用のインフラ整備を受け持ったりなど結構真面目。フォルナの所にしっかり議事録持って来るし。ただ文字可愛いし雰囲気は超柔らかいけど。




 フォルナの孫達に手を引っ張られ庭園に行くと、フォルナとその子孫達がお茶会を開いていた。こっちを発見すると、申し訳なさそうな顔を親御さん達にされてしまう。


「すいませんコーラス先生、子供達がどうしてもって聞かなくて」

「ええ本当に、やっぱり相棒が居ないと楽しさ半減な様で」

「ああ、良いんだよそんなの。私も楽しいからさ」

「ごめんねコーラス?」

「フォルナも謝らないの。いつもの事なんだから。それとも老婆心?」

「む、まだ若いもん、ピチピチだもんッ!!」

「「「お母様。それは死語ですわ」」」



 フォルナもすっかり大人の女性だけど、獣人も寿命が長いからか特に女性の獣人は私の知っている知り合いは全然若い。フォルナも20代に見えるよ。


 あれからフォルナはそのままアルカンシェルとゴールインし、3人の子宝に恵まれ、更に9人の孫が生まれている。ドラゴンの尻尾だったり狐の尻尾だったりはまぁ……血かな。


「そういえば今回アイドリー達は何処行ったのか知ってる?また急に居なくなったから……もう手紙は各所に送ったんだけど」

「この100年でほんと手際良くなったね……パパ達は今地下世界を探索してるよ。アモーネのダンジョンと繋がっちゃってるらしくて、その対処してるんだって」

「地下世界……もしかして新たな種族とか」

「地底人が新たに加わるだろうって言ってた」

「……後は任せたわ娘達よ」

「「「働いて下さいッ!!」」」



 そんな感じで今日も皆でボードゲームをして遊んでいた。








「ふぃ~~さて、手紙書くかなぁ~~♪」


 場所は、昔パパ達が使っていた城の一室。今は私の部屋になっているのよね。


 先生になってラダリアに定住していると、私の耳には色んな話が入って来る。レーベルラッドでは美香お姉ちゃんは今教皇として働いてるんだけど、遂に世界から『勇者教』が無くなって『妖精教』に統一された。

 シエロお姉ちゃんは天寿を全うし、何と美香お姉ちゃんの相棒妖精として転生したとか。美香お姉ちゃんが泣き笑いしていたのを思い出すよ。今でも2人とは手紙で文通をしている。



 もう『魔王』も『魔族』も、『女神』も『邪神』も居ないこの世界で『勇者』という存在は必要無い。だからゆっくりと、混乱が起きない様に『勇者教』は静かに衰退していった。

 それでも100年前の勇者達は今も英雄達の1人として語り継がれている。何人かは偶に武闘会に記念選手として出てるし。



 幼獣グループエネクーの元メンバー達は、世界中で歌劇団の結成をして、今もラダリアに総本部を置いている。孤児院に来る子供は居なくなっちゃったけど、代わりにその本部長にジェスおじさんの子孫が経営を任されているらしい。先週その世界的祭典をハーリアでやっていたところだ。

 それに合わせてレッドドラゴン達は数を増やしてエネクーの警備隊を組織し、今もラダリアを拠点に活動していたり。


 ヤエちゃんとメルキオラちゃんは、レブナントボードの全記録保持者。最終的に全て同点となって引退してしまった。2人とも長生きおばあちゃんになったけど元気一杯で、アイドリーの分身体だった子達と幸せな老後を暮らしている。



 そしてルイナはユニスと仲直りして、偶に多世界の事について色々と話しているらしい。色んな世界に行ってるけど、何処にでも妖精を見る様になって平和なんだってさ。





 さて、此処まで話したけど、私は臨時教師で明日からお休みである。だから春休みに入ってパパとママに会いに行こうかと思っていたんだけど……









「やっほーコーラス」

「コーラスおーは~~♪」

『久しいのコーラスよ。元気しとったか?』

「お疲れ様でございますなコーラス嬢」

「コーラスおばさんこんばんわ。夜遅くにごめんね?」


 もう既に来てたりしている。一番最後のはレーベルとクアッドの息子さんでミドル君だね。


「パパ、ママ、皆久し振り♪明日辺り会おうかと思ってたんだけど、どうしたの?」

「いやぁ、ちょっと皆で月に旅行しようと思って。ああ、何か隣に迷彩で隠れているもう1つの月も見つけたからそっちにも行こうって話になってるのよ。それで誘いに来たんだけどさ。月と言えばやっぱり月兎だから探しに行きたいんだよね」

『我が宇宙空間でも飛べる様に頑張ったから、その試飛行も兼ねてじゃ』

「……目白押しだなぁ~~」

「まぁね、にしし♪」

「にしし~~♪」



 パパは昔と違って素でもとっても無邪気に笑う様になった。それは『妖精の宴』と一部の人達だけが知っている事だけど、無邪気に、初々しく私達の世界を楽しんでいるその姿がとっても愛おしく思う。



 だから、私は私の意志でその手に『妖精』となって飛び乗る。




 う~……やっぱりこれが一番楽しいみたいだ、私。


「パパ、ママ」

「ん~?」

「どしたの?」

「……とっても楽しみだね♪」

「「だね♪」」

「「「んふ~~♪」」」




 再結成『妖精の宴』は、今日も今日とてノリと勢いで楽しく世界を股に掛ける。私達の旅はまだまだ終わらないらしい……

 此処まで読んで頂けた読者の皆様に感無量の感謝を込めて、ありがとうございました。次回作も是非出したいと思いますので、また読む機会があれば幸いに思います。

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