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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第三章 レッドドラゴン討伐
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第36話 買い物チャレンジ

 広場からアリーナを引っ張り出し、我等は商人達の店を回っていた。布は大きい物を買ったので大量に買っても安心じゃな。


「レーベルー行っちゃだめー?」

「主が離れていろと言ったのじゃ。それに、我等は我等で任務があるじゃろう?」

「はーい」


 本当にこやつは主が好きじゃな。主も買い物頼む時に金貨300枚渡そうとしてきたりの。お互いがお互いの為に命を張れる関係のなんと尊いことよ。我には無い物故に羨ましい限りじゃ。


 それでも主の放った声は町中に広がったのじゃろう。どこもかしこも楽しそうで、アリーナの笑顔は崩れぬ。流石、じゃと言っておこうかのう。


「ほれ、まずは野菜じゃ。行くぞアリーナ」

「うい~」


 色鮮やかに配置されている野菜に目を付けて、我は店主に声を掛けた。恰幅の良い身体じゃが、もう少し運動した方がよいなこやつは。


「おう、いらっしゃい。何が欲しいね?」

「うむ、店主よ。このメモに書かれている物を我は所望するぞ」

「はいよ、どれど……これマジか? 持ち切れるのかこんなに?」

「問題無い、全てこの布で包むのじゃ」

「お、おう」


 合計金額、銀貨35枚と銅貨13枚で大量の野菜が手に入ったのじゃ。アリーナはこういうのが上手いようで、より新鮮な野菜をどんどん選んで布の上にポイポイ投げていって早めに終わったのう。


「では、店主よ。さらばじゃ」

「おっちゃん、ばいなぁ~♪」

「……」


 我が大量に詰まった布袋を担ぐと、店主は目玉が飛び出す程驚いてしまっていたのじゃ。長い年月生きてればそういうこともあるものじゃよ店主よ。気にするでないぞ。


「次は武器じゃな。我は長物を適当に選ぶとして、アリーナよ。お主はどんなのが良いんじゃ?」

「んー……んー………んー?」

「思いつかぬならそれで良い。適当に探すとしよう。ほれ、武器屋はあっちじゃ」

「あいあいー」


 幾つかの路地を通って、武器屋と思しき店を発見したのじゃ。外に荷物を置き、龍魔法で固定させて中に入ったのじゃが、店主の姿が見えんの。


「おーい、客じゃー、店主はおらぬのかー? 店を破壊するぞー?」

「何をおっかねぇこと口走ってやがる!!??」

 おお出て来おったな。無精髭なのに頭がツルピカとは、過去に辛いことがあったのかのう。不憫じゃ。まぁよい、早速買い物といこうかの。


「我は長物を見たい。こっちは武器が決まってないのでな、取り回しの良い物を頼む」

「……おう、長物はそっちだ。そっちのちっこいのはこっちの方でも見てろ。で? でけぇのはどんな長物が良いんだ?」


 我の身長そんなに高いかの? まぁ確かにアリーナに比べれば頭一つ分以上高いが。


「なるべく重い物を望む。頑丈だと尚良しじゃな」

「ほう、力自慢か……なら、これとかどうだ?」


 見せられたのは、一本の戦斧。両刃で長く、刺し貫けそうじゃ。持ってみるが……うむ、長いが軽いな。これだと振ったら折れるのう。

「これでは駄目じゃ。もっと重い物を」

「あん?本当に女かお前?じゃあそうだな……こいつはどうだ?」


 次に渡されたのは、極端に刃の大きいハルバード。意匠を凝らしているのか、細工も良い。重さも先程よりもあるしの。片手で回してみるが、ブレぬしこれで良いな。


「そいつを片手で……軽々持つのかよ……?」

「うむ、丁度良い。店主よ、こいつを所望するぞ」

「あ、ああ……分かった。んで、もう一人はどうすんだ?」

「む? アリーナ、アリーナどこじゃ?」

「こっちー」


 アリーナは先程店主に言われた武器コーナーを見て回っていたようじゃ。何本かの短剣を持ってこちらに来る。シンプルじゃが素材の良さそうな得物じゃな。刀身を見ると、何やら文字が刻まれておるな。


「また高いもん選んだな嬢ちゃん。そいつはMDKを上げる魔術式が組まれてんだ。っていうか持ってるやつ全部そうじゃねぇか。魔法主体なのか嬢ちゃん?」

「うん!!」

「なら持つのは2本にしとけ。あんまり沢山持ってても動き難いしな」

「はーい♪」


 店主はその中から特に良いという短剣を2本選んだ。良かったのうアリーナ。これから供に研鑽を積もうぞ。


「で、もういいのか?」

「ああ待て、後もう一人分選ぶ必要があるんじゃ」

「ほう、そうなのか。良いのか勝手に決めちまって?」

「許可は得ておる。店主よ、オリハルコンも両断出来る剣を持って参れ」

「ねえよそんもん!!」

「何でも構わぬ。いっとう頑丈な奴が良いな。そやつは我以上に力持ちじゃし」

「マジか……しゃあねぇ、ちょっと待ってろ、ったく……」


 店主はぶつぶつ言いながら奥に引っ込むと、一本の剣を台で運んできおった。おお、中々に威厳溢れる装飾をしておるではないか。全体的に黒ずんでいて汚いが。


「こいつは頑丈だがとてつもなく重い……多分だが、魔剣の類だ。昔売りに来た上級冒険者の物だが、それ以来埃を被っててな。持てんなら持ってみろ」

「ほう?」


ヒョイッ


「はっ?」


 ふむふむ……確かに、我が買おうとしている武器の10倍は重たいの。これを持つには最低でもAKが1万は必要じゃろうて。まぁ主なら余裕じゃな。


「うむ、これで良い。全部で幾らじゃ?」

「マジで持っちまった……そいつだけタダで良い。売りの値段もタダ同然だったしな。お前さんの武器は金貨3枚、そっちの嬢ちゃんは2本合わせて金貨5枚だ」

「アリーナ、金を持て」

「はいこれー」


 金貨の入った布袋から一枚ずつ金貨を机の上に置いていく。ピッタリ8枚じゃな。店主も頷いて笑顔になったのう。


「では店主よ、良い買い物であったぞ。さらばじゃ」

「おう、こっちも良いもん見せて貰ったぜ。気いつけてな」

「ばいばーい!!」

 店主はこっちの姿が見えぬようになるまで見送ってくれたのじゃ。なんじゃ、人間にも良い奴が居るものよなぁ。



「アリーナよ。人間とは分からぬ生き物よな」

「そかなー?」

「そうなのじゃ。さて、後は自由に回ってみるかの。アリーナよ。行きたい店はあるか?」

「お飾り見たいっ!!」

「うむ、では行こうぞ」


 飾り物か。女子ならば皆欲しいじゃろうて。確か露店は表通りの方にあったかのう。


 表通りに出てしばらく歩いておると、装飾品を打っている露店を発見した。金属品の加工かのう。昔は木製や銀が多かったが、金の物も一般で出るようになったんじゃなぁ。


「おぅ……凄い荷物だね。いらっしゃいローブの方々。好きなように見てってよ」


 少々後退った店主のお言葉に甘えて、2人で壁に掛けてある装飾品を見ていく。花に似せた飾りが多いのう。買っていく客が男ばかりなのを見ると、なるほど、女子へのプレゼント用と言ったところかの。


 我は別にこういうのは使わんしなぁ……


「レーベル、レーベル」

「む、気に入った物を見つけたか?」

「これっ」


 アリーナの手の平に収まっていたのは、三つのブローチであった。これは……妖精じゃな。青、赤、ピンクの宝石を持っている妖精という形じゃ。ほう、こんな物もあるのじゃな。

(しかし、こんな時代でも妖精を知る者が居るとはのう……?)


「パーティの証!!」

「なるほど。『妖精の宴』のシンボルにしたいんじゃな」


 笑顔で頷いてきおった。愛い奴よのう……


「ではそれを貰うとするか。店主よ、包みはあるかのう?」

「プレゼント用ってことだね。箱代掛かるけど良いかな? というか持てるのかい? その大荷物で」

「構わぬよ」


 そうして、3つのブローチを銀貨30枚で、箱代を銀貨1枚で買ったのじゃ。箱は木箱で、白布で包装して貰ったのじゃ。アリーナの顔がご満悦になっておるな。なんにせよこれで買い物は終了にしておくかのう。宿屋に一度この荷物を置かぬと、周りから奇異の目で見られてしまう。


「アリーナよ。一度宿屋にて荷を降ろそう。それも無くしたりでもしたから大変じゃからな」

「うんっ!!」



 その後数時間街を彷徨ったが、買い食いばかりしていたらアリーナが寝てしまい、結局宿屋に帰ったのじゃ。ベッドの上にアリーナを置いて、我は反対側のベッドに座る。そろそろ夕暮れじゃな。


「にしても、主はいつでまで戻って来ぬのじゃろうか? ちょっと勝手に同調して様子を見てみるか……ん?」


 何やら、大勢の人間に光る棒を振られながらひたすら歌い踊り続けておるな。なるほど、これが主の妖精特有の本能か。誠に面白い奴じゃのう。だがフードまで取って良いんじゃろうか? まぁ外したということは、必要無いと思ったんじゃろう。


 しかしあれじゃな。従魔契約してみると、思った以上に我は楽しんでいるのう。契約した相手に意識が引っ張れることがあるとは知っておったが、相手が妖精じゃとこんなにも心が穏やかになれるものじゃとはな。


 昔は人間は皆我を恐怖し、恐れ、手には剣を持ち、口からは罵詈雑言の嵐じゃったからなぁ。我も人間が戦力的にではなく、精神的に恐ろしかったしのう。まぁ数百年経って、奴等が我とそこらへんの魔物が同一だと思っておったのを知ったから、どうでもよくなったじゃがの……


「……ふふ」


 後は、あんな面白い主みたいな人間を見つけていたらと思うが、あんなのがそう何人も居る訳無いしのう。


「精々楽しませてくれよ? 我が主よ……」

「さぁ皆、まだまだ行くよぉーーーーッッ!!!」



「あいつ、いつになったら終わるんだ……」

「まぁ……レッドドラゴンが売り切れば無理やり止めればよかろう」


 その後、誰も止められず夜中までコンサートは続いた。

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