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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第三章 レッドドラゴン討伐
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第34話 お祭り:先お披露目とパーティ名

「ということで、今すぐ広場の方に集まって下さい!!」

「……うい~す」


 まだ……日も登ってないよレーナさん。早い…眠いって…見てみなよ部屋の外から顔を覗かせている女将の娘さんの顔を。大きな欠伸しながら目を擦ってるじゃないか可哀想に。

 しかもこっちは妖精状態だったから、ドアを叩かれた瞬間に起きれて本当ラッキーだった。すぐに人化してローブ被ったし、アリーナはフードの中に入れておいた。レーベルは布団被ってるからバレないだろう。

 

「じゃあ、2人起こして準備させたら行くよ~、ふあぁ~~ぁ……」

「はい、よろしくお願いしますね?」


 あー…眠い。また忙しなく去っていくレーナさんの後ろ姿を見届けると、女将の娘も頭を下げてドアを閉めた。さて、じゃあ起こすかー


「アリ~ナ~寝てても良いから人化してー」

「……ん~……ういっ、おはす~アイドリ~~♪」

「うん、おはよう」


 フードから出したアリーナのお腹を擽りながら言うと、眠気眼で人化してくれた。お腹の出た状態の人化アリーナ登場である。そのまま更にお腹を擽ると、「わひゃ~」とクネクネし出した、可愛い。……おっと危ない。

 アリーナはローブを着せてベッドに座らせておく。次はレーベルだ。レーベルは起こすの簡単だ。ちょっと可哀想だけど。


 布団を顔が見えるところまで剥がし、顔を近づけて耳元で囁く。


「レーベル~起きろ~……思いっきりぶん殴っちゃうぞ~?」

「我が何をしたというのだっっ!! ぬっ……良かった、夢であったか」


 ガバァっと起き上がり即座にしゃがみガードをするレーベル。しかしベッドの上だと知ると、足を崩して深い溜息を付いた。そして私は何事も無かったかのように朝の挨拶をした。


「おはようレーベル」

「む、うむ。おはよう主よ」

「朝早いとこ悪いけど、広場に行かなきゃなのよ。アリーナ背負って一緒に来て?」

「おーなるほど、お安い御用じゃぞ。ほれアリーナ。我の背中に掴まりながら寝ているがいい。子供は寝た分だけ大きくなるんじゃぞー」

「ういふ~…むにゃ~~」


 まったくもって微笑ましい光景である。っと、急がないとね。ドロア達が待ってる。



 広場に着くと、冒険者ギルドのドロア、商人ギルドのヒルテさん、そして領主のダブルさんと息子のシグルが待っていた。その後ろにはそれぞれの職員や兵士達が勢揃いである。

 広場の中心には巨大な鉄製の横幅の広い台が置かれて、等間隔で溝が掘ってあり、外型に傾くように広がっていた。台の下にはその溝に合わせて何百本もの瓶がケースで置かれていた。


「よう、こんな朝早くから悪いな」

「いいよ。で、そこの台に出せば良いの?」

「ああ、頼めるか?」

「はいは~い」


 大々的にやりたいらしく、今の内にレッドドラゴンを此処に置いときたいんだってさ。確認したら職員達の手で縛り付けて布で覆い隠すらしい。そして昼になったらお披露目という流れだ。まぁ私が皆の前でいきなり出したらパニックだもんね。


「じゃあいくよ~ほいっ」


ドスンッ!!!


 背中から引き摺り出すようにして、私は台の上にレッドドラゴン(皮)を置いた。周りから「「「おおっ!!」」」と驚きの声が漏れる。というか台が鉄製なのに凹んじゃったね。ドロア達が引き攣った顔になってしまった。


 レッドドラゴンはギリギリ台に乗り切っているけど、ドラゴン解体用ってやつなのかな?


「……すげぇ」

「これを、本当に1人で倒したというのか……?」

「討伐隊では敵わぬ訳だな……」



「「「そして、何処からこれを取り出した???」」」

「……ぷいっ」

「「「……」」」



 それぞれの代表が言葉を零す。ドロアは感嘆を込めて、ヒルテさんは夢を見ているかのような顔で、ダブルさんは悲観の籠った表情で。誰が見てもそれがレッドドラゴンだったものだと分かる程完璧な状態だ。唯一損傷している頭も、脳天から顎まで貫通しているだけだからね。


 そして倒し方、収納方法については黙秘権を行使しますとも。


「あれ、おいアイドリー。聞いた話じゃこいつ額に赤い宝石があったと思うんだが、それはどうした?」


 あれか。あそこから人が出て来たとは言えないから、嘘を付くしかないね。


「あれは不意打ちで砕いちゃってね。破片も魔力となって散っちゃったんだ。けどそのお陰で弱体化したみたいでさ。ギリギリで勝てたんだよ」

「ほう……なるほどな。力の源だったのか」

「砕いて消えるなら。倒した後でも消えていたであろうからな。気にするなアイドリー」

 ヒルテさんのフォローもあって、ダブルさんも納得した。流石おじいちゃん、言葉に重みがあるね。シグル、見習いなよ~? さっきから顔が固まってるけどさ。


「僕の目標は……どれだけ高みに居るんだ……」


 そんなことを呟いていた。いや、貴方の目標はダブルさんだからね? 冒険者を目標にしちゃ駄目だから思い留まってね?


「……確認は取れた。アイドリー、これが依頼達成の証明書だ」

「うん、はいドロア」

「おう、レーナ頼んだぞ」

「はいはい、行ってきますね」


 盥回しにされた証明書が、最終的にレーナさんの手元に行き、彼女は冒険者ギルドの方に歩いていった。最後の最後まで損な役回りさせて御免ね。


「祭りの時間は? いつ始まるの?」

「あー……準備始めは街の門が開く時間と一緒にしといたから、まぁ昼前ぐらいからだな」

「私はお披露目にどのくらい居なきゃいけない感じ?」

「解体が終わるまでは居てくれ。販売はこっちで勝手にやっからよ。後、お披露目の前に報酬を渡すからな」


 ということは、アリーナ達と買い物は一緒に回れないなぁ。あの大きさを解体するのは相当時間が掛かるだろうしなぁ。非常に残念である。


 というか、あのステータスのドラゴンの身体に、ただの解体用の器具の刃で切れるのかな? と思ったら、そういう種専門の物はそれなりの素材を使っているらしい。値段を聞いたら背筋がゾワッとした。


「レーベル、そういうことだから私は一緒に買い物に行けないや。アリーナと街を回って買い物とか出来そう?」

「我は平気じゃが。アリーナは主と離れて平気なのか?」

「大丈夫じゃないけど? アリーナ分が足りないけれど?」

「んぅ? ぎゅーする~?」

「しとく」


 ぎゅぅうぅ~~~~……よし。寝起きで何も把握していない天然癒しさんめ大好きだよ。あ、レーベルが呆れた顔してる。


「はぁ……まぁ通貨も変わっとらんみたいじゃしな。一日あれば街も回り切れる。アリーナの御守もしとくから安心するがよい」

「うん、お願いね」

「お願い、か……ふふ、任せい」


 まぁ暴漢とか冒険者が絡んで来ても楽々に返り討ちだろうしね。レーベルならちゃんと手加減出来るだろうから殺したりはしないだろう。


 けどなんだか嬉しそうだから、頭は好きに撫でらせておいた。



 私達はレッドドラゴンが布に覆われていくを見届けると、宿屋に帰って昼まで時間を潰すことにした。まだ日も上がってないしね。二度寝したいよ……








 残ったおっさん三人は悩んでいた。あの化け物染みた強さを持つ少女について。


「俺は最初、勇者の一人なんじゃねぇかって思ってたんだよな。目立ちたくねぇっていつも言ってたしよ。勇者としての身分を隠して活動してぇって感じなのかって」

 ドロアからしてみれば、それは別に責めるべき理由ではなかった。冒険者なら一つや二つ隠したいものもある。身分や、ステータス、出身や種族。皆そういうものを隠しても良いのが冒険者だ。

「だがあいつは、ランクを上げればある程度の露出は構わない振舞い方をしていやがった」

 そこにダブルの補足が入る。彼はある程度アイドリーからその一端を聞いていた。


「奴は王に会う為にランクを上げていると言っていた。つまり、国のトップに話す必要があるのだ。それが何かは分からんが……」

「一ヶ月も時間を使ってランクを上げ、国からの信用を確固たるものにしたかったということか。商人に聞いた話じゃが、小娘は商人や捕まえた盗賊に獣人について聞いていたという話もあったぞ」

 ヒルテはアルバやパッドからも一度話を聞いていた。自分の管轄している商人の命を預けた相手だったので、事前に情報を集めていた。


「田舎の出とか言ってたからな。獣人の奴隷化について王に問い質すとかしそうだな」

「十分に在り得る……だが、それだと結局、あの少女は何者なのだ……?」

「獣人では?」

「「……」」


 アイドリーは一度ステータスも偽装している。隠蔽スキルが高ければ獣人の耳や尻尾も隠せる。レッドドラゴンを倒す程の実力が、獣人の高い身体能力を極限まで鍛えて行ったものならある程度の納得も出来た。一気に三人の考えがそちらの方で纏まり始める。


 だからこそ心配になっていた。彼女が王に出会った時、その話を聞いて何を思うのか。自らを晒した結果、何が起こってしまうのか、と。


「王都で獣人だとバレたら、嬢ちゃんは罪人になっちまうな……」

「王都に匿う場所を用意させておいた方が良いか?」

「その方が良いじゃろうなぁ」


 街の恩人であるアイドリーに、おっさん達の話し合いは続いた。それを見ていた職員達は、全て聞かなかったことにして粛々と作業を進めていく。






「行けないのー?」

「ごめんねアリーナ」

 私は宥めるようにアリーナをあすなろ抱きしてベッドに座っていた。アリーナは足をパタパタして不機嫌な様子である。最近こういう感情も出してきてくれたので嬉しいのだが、困りもしている。


「むーいいもん! レーベルと仲良くするもん!!」

「え、レーベルマジ許すまじ」

「我は悪くないじゃろ!?」


 それはそうとアリーナさんや。昨日頼んでおいたパーティ名って決まったかな? すっかり忘れてたけど。

「んーと、これー」

 そう言って、昨日手渡した書類を見せられる。えーと、



「『妖精の宴』か…いいじゃん。私達にピッタリだね」

「そうじゃな。我が仲間外れじゃが気に入ったぞッ!」

「んふー♪」



 それじゃあ決定である。そういえば書類よく見てなかったな。えーと、ランクの違う人間がパーティを組んだ場合、一番高いランクの人間のランクに合わせるのか。つまり、私達は『妖精の宴』っていうSランクパーティになる訳ね。

 アリーナはちょっと心配だけど、これから連携して魔物討伐していくだろうし、すぐに実力も見合うだろう。二人のランクも早く上げないとね。


「今は……お、良い時間だ。朝ごはんにしよっか?」

「する~♪」

「我も腹が減ったのじゃ」


 時間は8時頃。偶には宿屋の食堂で食べないとね。この宿のウルフ料理美味しいし。お米が欲しくなっちゃうのが玉に瑕だけどね。米も探さないとなぁ……


「ところで主よ」

「ん、なに?」

「アリーナがベッドにダイブして動かなくなったぞ」

「はい起きてねー」

「や~……」


 寝過ぎも駄目よアリーナさんや……

レッドドラゴンの素材を丸々売った場合の利益………金貨5万枚


レッドドラゴン(古龍)の素材を丸々売った場合の利益……金貨50万枚


「我が皮を出し続けて主が魔力を供給し続ければあっという間に億万長者じゃな」

「やる?」ギュッ

「……すまんて」


 身体が死なないと素材として宝石から剥がせないので諦めた。

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