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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第十章 里帰りと龍騒動
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第162話 黒龍アグアド

『うぐぉ~……』


 アグアドは顔面に重厚な扉が当たって悶絶していた。いや、そんな巨大な身体でゴロゴロ転がらないでくれないかな?折角レーベルと格好良くいけたと思ったのに。


 いや、あれだよ?妖精達のヒーローショーに似た感じで私もちょっとやってみようかなぁって思ったらレーベルがノってくれたからさ。だからこうドドンと対峙する予定だったのに。


 

「なのに態々顔面に喰らうとか……それってボスキャラとしてどうなの?」

「言ってやるな主よ。我もそう思うが」


『き、貴様等好き勝手言いおって……ッ!!何者だッ!!!』


 ようやく顔を上げたアグアドは、私達を見下ろして呻きながらも叫ぶ。ほう、名を問うたね?なら応えなきゃいけないよねぇ。



「妖精、亜人を救う為。何でもかんでも拳で解決ッ!『妖精の宴』リーダー、アイドリーさんだよッ!!」

『「うわ」』


 必殺カッコイイポーズを決めながらウインクペロ出しのアイドリー。しかも一瞬で早着替えし、いつものアイドル服になった。それにレーベルとアグアドがドン引きしてしまう。








「いや、何でレーベルまで引いてんの?纏めて相手してあげようか?おん?」

「あー、うっさいとりあえず黙っとれ頼むから…………で、久しいのうアグアドよ。随分と好き勝手やっていたみたいじゃから来てやったぞ?」

『……っち、全てお見通しという訳か。配下が1匹たりとも来ないのは、貴様達の仕業だな』


 確認するかのようにアグアドはアイドリー達の顔を見た。その表情は生温い笑み。明らかに何かやったという顔だった。それが確認出来たなら既に用済みである。


『なるほど、各地の配下達をやったのも貴様等か。よもや宝玉の力を得た軍団を全て始末するとはな。一体どんな手を使った?赤トカゲ』



 侮蔑を含んだ言葉に、レーベルはピクリと眉を動かす。昔からアグアドは彼女をこうした呼び名で話し掛けてくる。それも大体喧嘩を売る時だけに限って。


 つまり、それ程まだアグアドには余裕があるということだとレーベルは判断した。だからこそ自分も笑みは消さない。飄々とどこ吹く風だと笑い飛ばして見せる。



「な~に、ちょっと妖精達に協力して貰っただけじゃよ。しかしそのおかげで、全てのブラックドラゴンを目出度く討伐出来た訳じゃが」

『……貴様の配下ではないのか?』

「なんじゃ、勘違いしておったのか?確かに眷属はおるが、皆仲良くラダリアで人生を満喫している最中じゃよ」


 余裕はあっても、アグアドは驚きを隠せない。あの羽虫如きが自分の最強だと思っていた軍団を倒したというのだから。レーベルの配下ならば不可能ではないかもとは思ったが、その事実も遺憾だった。


 しかし目の前に居る妖精からは、途轍もない力を感じていた。


 アイドリーは少しばかり魔力を放出している。しかもワザと、超高密度で。そしてレーベルも同じぐらいの質を身体に纏わせていた。



「まぁその顔が見れただけでも今の話は儲けものじゃが、我が聞きたいのはそれではない。貴様の、ついでに『勇者』の目的についてじゃ。結託しとったのだろう?コブリンから聞いておるぞ」


 勇者の名を出され、バツの悪そうな顔になった。もう少し平常心保ってポーカーフェイスで喋られないのかと、2人は内心で苦笑いになる。


『っち、それも知っていたか。耳だけは早いようだな……なに、互いに利害が一致しただけの話よ。我は宝玉が欲しかった。奴は人類全てを滅ぼしたかった。ただそれだけの関係だ。我にしてみれば、人間など滅びようとどうでも良い。我はただ『龍神』に至れれば何も問題は無い」



「ぶはッ!!」

「おっとレーベルさん、ここで噴き出しました」






 腹を抱えて大爆笑し始めてしまったので、しょうがない。とりあえず私の聞きたいことを聞こうか。


 私が知りたいのは、勇者の目的だ。そいつは間違いなくあのド畜生の朝比奈の筈。魔王から世界を守った彼が、どうして人類を滅ぼすなどという事を仕出かそうとしているのか、何としてでも突き止めなければならない。


 何故なら、それが『世界樹』が止まった理由に繋がる。根幹とも言えるべき情報だと思っていたから。



 レーベルの大爆笑に顔を真っ赤にさせて怒りに震えるアグアドだが、私に対するその答えは―――――――――無情だった。



『知らん、我は宝玉さえあれば良いのだ。『勇者』がどう動こうが知ったことではない。我は有象無象の虫をただ握り潰すのみよ。契約故に、それに従わねばならぬのが誠遺憾ではあるがな』


 …………これは手遅れだなぁ。


 っと、ここでレーベルがやっと大笑いから復帰し、何とか痛い腹筋に鞭打って身体を元に戻す。涙眼になるほど面白かったか。


「ひー、ひー……あー笑ったのう。さて、ではもう1つを聞こうアグアドよ。お前、宝玉を持って『龍神』になるまでは良かろうが、その後はどうするのじゃ?何を成すつもりなのじゃ?」


『知れたこと、世の全ての魔物を支配し、君臨するのみよ。我の力はただ示されるのみ』



 即答のドヤ顔でそれが覇道だと豪語してみせたアグアドを見て、やはりとレーベルは呆れたようにまた笑いながら私に言う。


「見よ主、あれが前に美香に教えて貰った『厨二病』という奴じゃ。しかもあやつ、千年前からあんなんじゃぞ?」

「うっわ」


 つまり、この古龍は『最強』を誇示する為に『無敵』を手に入れようとしている。ただそれだけだった。そうあればあらゆる障害は必然的に排除されるだろう。立ち塞がる者は皆平伏す結果になるだろう。



 だがそれだけ。漫画にもよくある展開であり、その先にあるのは真っ暗闇である。



「……借り物の力で強くなったつもりか?本来の貴様など、我に遠く及ばぬ雑魚であったろうが」

『ほう、負け惜しみか?』

「試練を勇者頼みで切り抜けた腰抜けであろう?事実を言ったまでじゃ」


 剣呑な雰囲気が……いや、元々そんな雰囲気だったけど、それが更に濃くなる。


 そもそも、レーベルはアグアドを生きて返す事は無い。彼女は始祖の命を受けて見つけ次第討伐する予定だった。ただでさえ腸が煮えくり返り過ぎて熟成されているのだ。今は真剣で純粋な殺意だけが残っているのみである。


 止めはしないよ。私も、こいつは完全に魔物認定したしね。



『そこまで言うならば、やってやろうではないか。どちらにしろ殺し合う宿命、今此処で決着をつけてくれるわ…………この『宝玉』でなぁッ!!』




 掲げた虹色の宝玉が力強く輝くと、アグアドはそれを『呑み込んだ』。



『ォォォォォオオオオオオオオオォォーーーーーーーーッ!!!!!』



 ただでさえ大きい巨躯が、再現なる巨大に成長していく。大地を震わせる咆哮と供に、加速度的にそれは増していく。


「主よッ!!」

「分かってる、出ようッ」


 即座にレッドドラゴンになったレーベルに飛び乗り外に出たと同時に、宮殿が崩壊した。だがまだまだ止まらない。


 宝玉を取り込んだドラゴンは、島で最も大きな龍の頭よりも尚高く伸びあがり、雲を突き抜け、空に出た。遂にその全貌を見る事が不可能になってしまう。


 正直私は「あれ、これちょっとヤバいかな?」と思い始めていたが、同時にワクワクが心中で渦巻き始めていた。レーベルもさっきから頭の中で楽しそうに「くひひ♪」と笑っている。


「もしかして、煽った?」

『当たり前じゃ。奴だけは一片の悔いなく叩き潰したいからのう。だがこれはまっこと予想以上じゃ♪あやつ、ほぼ完璧に近い精度で宝玉を制御しておるぞ』



 アグアドの成長?は、レーベルを楽々に握りつぶせる程の大きさになっていた。まるで巨大な山だ。鱗の一枚ですらレーベルより大きい。



 そして私は、そのステータスを見た……この巨体にしては低いとは思ったけど。



アグアド(1125)♂ Lv.15600


固有種族:ブラックドラゴン(古龍):龍神状態


HP 50兆8200億5050万/50兆8200億5050万

MP ―/―

AK   165兆9501億4688万

DF   172兆1005億1121万

MAK  180兆2222億8923万

MDF  180兆6544億1993万

INT  500

SPD  125兆3980億0030万


【固有スキル】龍鱗 闇獄 宝玉


スキル:龍魔法(EX)闇属性魔法(EX)体格差補正(EX+)


称号:古龍の子孫 龍神



 いや、確かに強い。レーベルの10倍以上のステータスだ。何もかもが絶望的なまでに最強と言えなくもない。けど多分、私が『限定幼女』を使ったら確実に負けないだろう。今回は討伐が目的だから素直には使わないけどね。


 さて、問題はあれの効果だ。


・宝玉

『ステータス超上昇。開放段階:7』



「レーベル、宝玉の開放段階ってなに?」

『簡単に言えば制御出来る度合いじゃよ。10になれば全ての力を開放出来るが、それより下ならステータス上昇のみよ。それでもかなりの脅威じゃがな』


 てことはあれが今の限界か。今の内に倒さないと危ないってことだね。


『もし完全に開放されてしまったら、その時は世界の終わりじゃな』

「ああ、やっぱそんな感じなんだ……」


 そりゃあ怪獣も吃驚な大きさだもんね。あの大きさで地上を歩かれたら、それだけで人類は滅びるだろう。



 そして、当の本人の声が、聞こえてきた。というか、あんなに高いところに頭があるけど、こっち視認出来るんだね。


『クハハハッ、どうだ赤トカゲッ!!?これが至高ッ!!絶対不変の力だッ!!!!』



「なんて言ってるけど、どう?」


 安い挑発だと、私でも思う。だが既に開戦の狼煙は上げている。残って言うのは闘志のみ。なればこそ、レーベルは最高に良い笑みでそれに応えた。


『くふふ♪『龍装』も『龍人化』も持たぬ半人前が抜かしおったか……上等じゃ。主よ、供に教えてやろうぞ。奴が一体何を敵に回してしまったのかをなぁ……』

「あいよー」


 それじゃ一丁、黒トカゲの退治といこうか。


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