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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第九章 魔導学園都市テルベール
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第148話 日常の終わりまで

 数週間後、あの花火の立役者であるバゴットに、あらゆる国から手紙が来ていた。どれもあの花火の打ち上げ方と魔道具の製造方法を買い取り相談だったんだけど、彼はそのどの国にも行くつもりはなかった。

だって既にガルアニアに行く決心がついてるもん。フェルノラが彼を離すとは思えないし。



「……あー、どうしたもんかね」

「いやぁ、まさかこんなに認められるなんてね」

「皆の努力の結晶だからね。それに、バゴットのはそれを抜きにしても凄いし」


 確かに魔導弾砲はとても高い評価を得ている。なにせあのマートン理事長が発想で被ったぐらいだからね。けど、それにしてもこれは多いね………何百通あるんだろう?


 それについては、フェルノラが手紙をサッサと書きながら答えてくれた。流石王族、超スピードである。


「当たり前ですわよ、あんな派手な物を作り出す技術など、この世界のどこを探しても中々見つかるものではありませんわよ。あらゆる国の、あらゆる機関が欲しがるに決まっておりますわ。例えば……ほら、これとか。一体どうやって送られてきたのか、非公式の魔道具研究会ですわね。こういうのに返事は要りません。ポイですわ」


 そう言って破り捨てると暖炉にポイしてしまう。ああ、だからその位置で書いてるのね。



 私達が今居る場所は、森田と相澤が住んでいた教員棟の隣にある一軒家だ。なんとジブス理事長代理がフェルノラと及川君へのお詫びとして使わせてくれることになったんだよね。


 本当は今日此処でお祝いする筈だったんだけどなぁ。


「まったく、朝になって貴方に泣きつかれた時は天変地異の前触れかと思いましたわよ。普段なら絶対そんなことしませんのに」

「しゃあねぇだろう~こいつらじゃ真面な文章書けないんだからよぉ~~」

「「ほぇ?」」

「今この場に限ってはそれは通用しませんわよ。可愛い妖精さん方……それに、奏太さんの方が可愛いですわ。大人しくそこらへんでイチャついていなさい」

「「は~い♪」」



 お言葉に甘えて、私達はくんずほぐれつしながらソファでじゃれ合い始めた。


 私達も色々変化があった。本体達がお互いの『何か』で繋がって大変な事が起こったし、それが私達に更新されて関係が変わってしまったのだ。今の私とアリーナの関係は、口では言い表せない事になっている。


「アイドリ~、今日も可愛がって良い?」

「おっとアリーナさん。可愛がられるのはどっちかな?」


 向こうの子供アリーナは益々私に対して好意を超ストレートに表すようになったんだけど、こっちの大人アリーナは、とにかく積極的にスキンシップが入るようになった。いや、元々どっちでも多いんだけど、こっちのは事情が違う。


「ふふ♪じゃあ今日は耳朶食べちゃお~、はむッ!ちゅりゅる……」

「うわひゃぁッ!そ、そこは反則でしょ!?あっ、んひぃッお、音を立てて吸わないで~~ひぁっ!?」


 こんな感じで、何か性的なのだ。耳朶だけじゃ飽き足らず、穴の中まで舌を入れられて脳がトロける。


 危ない、それ以上は危ない。けど本人の言い分では、ひたすら私の可愛い声が聴きたいとか言われてしまって私にはどうしようも出来ないし……って、



「反対側もッ!?くぁっッ……!」

「貴方達もう少し健全な遊びをなさいッ!!!」

「「さーせん」」


「……」

「フェルノラ落ち着いて、はい紅茶。バゴット、アイドリーさん達を凝視している眼が犯罪的だから止めておいた方が良いよ?」


 そこに及川君が人数分の紅茶を持って現れた。彼はバゴットとはそこまで馴染みが無いが、それでもフェルノラの学生生活を聞けるということで一気に興味を持ち打ち解けてしまっていた。

 それでなくとも彼は愛らしく誠実な人間なので、大概の人間とは仲良くなれるんだろうけどね。そんな彼をフェルノラが急かす。


「ほら、貴方はさっさとお座りなさい。人手が足りないのですから」

「あ、うん。じゃあお邪魔して……」


 ストンっとフェルノラに背中を預けるようにして座ると、同じように作業し始めた。それをアイドリー達がニヤニヤ見つめているが、2人は気にする事なく作業に集中している。バゴットも構っている暇は無かった。




「「「おわった~……」」」


 暖炉の中に積まれ炭になった残骸と、机の上に積まれた手紙は大体同じ数になっていた。この手紙をまた全ての国の全ての機関に送られる事になるんだってさ。


「それってお返事して終わりなの?」

「いいえ、その後追求の手紙が来ますわ。だから完全に諦めて貰うまでお断りの手紙を送り続ける必要があるのです。卒業まで」

「……逃げて良いか」

「私の国に来たいのなら頑張りなさいな。学友のよしみで付き合ってあげますから」

「僕も手伝うよバゴット。頑張ろう?」

「すまねぇなお前等。頼んだぜ本当に……」


「「私達は~?」」

「外で遊んでろ馬鹿野郎ッ!!」



 さて、本来なら『花火』を作り出した私達が何故こんなに余裕綽々な感じなのかと言うと、私達はそもそもどこの国にも所属しないし、研究していた訳じゃないから、そもそも研究レポートが存在しない。

 勿論やり方は説明出来るから、それを書いた紙はある。渡したところで理論通りにやるには魔法士数十人が全力でやって1日100個ぐらいしか作れないだろうけどね。


 そもそもな話、バゴットの発明品が大前提だからそれが無いと作れないもん。そして、これを渡す場合にはある事を条件にして貰うから、それ以外では絶対に渡さないことにしている。


 その条件は2つ。


・人同士の争いでは使わないこと。

・自国で魔物被害の出ている街や村では積極的に貸し出すこと。その際使うのは必ずバゴットの魔道具であること。


 これだけである。だから私達はバゴットが信用して技術を渡せる国にしか渡す気は無い。よって全部総スルーした。何か言ってきても、私達は消えるのみなので、誰にも知られることなく消える事が出来る。


「けど、もうイベント無いから暇になっちゃったね~~」

「何しよっかねぇ。フェルノラ、何か無い?」


 仕事が終わって及川を胸に抱いてほわほわしているフェルノラが、少し考えて答えた。すっかりそこが定位置になったね及川君。


「そうですわねぇ。後残っていると言ったら、それこそ卒業式ぐらいですわ」

「それって演奏とかある?」

「……無いですけれど」

「よし、やるの決まったねアイドリー」

「うん、まずは楽器から決めないとね」

「こらこら参加しませんわよ私は」



 えー駄目なん?って顔しても駄目ですって顔された。しゃあない2人でやるか。ピアノって私でも作れるかな?まぁ後で考えよう。


 けど、来年の春には卒業かぁ。実質半年も居ないけど、この1ヶ月でも結構楽しかったよ。


 掛け替えの無い友人も出来たし、及川君の誤解も解けたし、何よりバゴットという魔道具繋がりの友達が出来たのが嬉しかった。あの製作期間中は色んな議論が出来て最高だったもん。



 そういえば及川君とフェルノラの今後についての話。彼はこれから侯爵の養子に入る事が決定した。そこで彼は侯爵家を継いで正式にフェルノラを嫁に迎える為に、ひたすら勉強の日々になるらしい。


 フェルノラとしては駆け落ちという選択肢は無責任なので在り得ないし、及川君は本気で彼女を愛しているので、決して不幸な生き方はさせないと意気込んでいる。私も応援するので、頑張ってモンドールを説得しようね。



「で、貴方達はどうなりますの?確か分身だと聞いておりますが」

「卒業したらその時点でお別れかな。私達ってあくまでスキルだからね。本体とリンクしてるし『複数思考』の1つだから戻るってのが正しいけど」

「……それって、死ぬってことでは無いですわよね?」

「物騒な事言わないでおくれ。割りと多用してるんだから……」



 ホントね、アイドリーズの件もあるけど、別に痛みとか無いからね?私達だって肉付けはしたけど、HPが0になったら肉体も含めて全部魔力になって霧散するんだから。グロ駄目、絶対。



「記憶もリンクしてるから、ちゃんと本体に会えばフェルノラ達も事も分かるよ。安心してくれて良い。ただ、アリーナだけは今よりもかなり幼いから、それだけ気を付けてね」

「幼い?」

「私の今の状態もスキルなの。だから本来はアイドリーと同じぐらいの体形なんだよね」

「色っぽいアリーナから可愛いアリーナに「じょぶちぇんじ~」みたいな感じだと思ってくれて良いよ。及川君より可愛いのは確かだね」

「奏太さんは負けませんわッ!!」

「僕を基準にするの止めてくれないか!?流石に泣くよッ!!?」



 そんな感じで、私達の時間は卒業まで続くことになる。この私の思い出は漏れなく本体に伝えられるから、また直ぐに会えるよ。多分、もっとパワフルな感じでね……

「次はここ~♪」

「鎖骨の窪みは玄人過ぎないアリーナぁんくッ!?」

「……」

「だからバゴット」

「止めなさいったらッ!!」

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