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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第九章 魔導学園都市テルベール
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第143話 妖精VS『増殖』&『加速』の勇者

 理事長は激しく憤慨していた。


 自分が作り出した『レブナントボード』と『魔光剣』を解析し、生み出した魔道具に2人を乗せて送り出した。魔道具自体に戦闘記録が残るようにしてある為、次回への改善策として活用するつもりだったのだが、



 そこに、最悪の知らせを教員から受けたのだ。


「くそ、くそ、くそ、何故防衛機能が作動していないのだッ!!一体何が無くなっている!!?」

「とにかく一緒に見て下さいッ!私達では判断が付かないのですッ!!」


 向かった先は、魔道具研究塔の最上階。『神代魔道具』が保管されている部屋だ。最初から彼も危惧はしていた。何せラダリアには勇者が居るという報告は受けていたのだ。つまり、及川の存在が知られているかもしれないという可能性が有る。


 それを思えば、ガルアニアと結託して魔道具を取り返しに来る事も十分考えられた。正規の方法で来れば門前払いも出来たし、その存在は理事長だけが知っているのだから隠すのは容易だと考えていた。


 

 盗み返すのも、当然通常の方法では不可能だ。塔の最上階は教員でも上の立場の人間にしか入ることが出来ないようパスが設定されているし、部屋自体もオリハルコンを混ぜた石材で出来ている。例え勇者であっても突破は不可能だ。


 AKが人外の領域にでも入っていなければの話だが……



 そして、塔の最上階にある窓1つ無い通路の奥、神代魔道具が納められている部屋のドアを開け、理事長が中に入ると。



「いやーお宝が多くて良いね~♪」

「ういふ~いっぱいいっぱ~い♪」



 妖精が2匹、壁に穴を空けて侵入していた。部屋の中にある魔道具を根こそぎ盗みながら。






 いやぁ、あれがテルベールか。『複数思考』を介して色々見てはいたけど、実際に見るとやっぱり違うなぁ。


 さっきは私が『妖精』のアイドリーズを出して『不可視性』を使って2人をこの場所に転移させた。で、私は『妖精』の存在を目印にして今この場に転移してきた。


「とうちゃ~く♪」

 勿論アリーナと一緒にね。片付けたら2人で花火見ようね?

「ういっす♪」



 にしても、まさか及川君の隠していた事をこいつらがペラペラ話すとはね。本当なら本人に直接フェルノラへ言って貰う予定だったのになぁ。失敗したなぁ……


「てめぇ、俺達の邪魔すんなら殺すぞ?」

「いや、待て。どうせ及川は死にぞこないなんだ。こいつ犯してから行こうぜ?顔見てみろよ?すっげぇ可愛いぞ?」

「あっはっは、清々しい程に下衆いねぇ~」


 そんで、2人の付けている魔道具の装備は、んーこれは興味深い。試作機って感じであちこちに細いチューブが付いてて試作機って感じだ。


 まず、靴のような魔道具が『レブナントボード』を参考にした物かな?靴底を加工したレブナント鉱石にしてるのね。確かに術式をそのままそっくり真似すれば作れるだろうし、靴にしたことで出力を一点集中させてるから速い軌道も描けるだろう。名付けるなら『レブナントシューズ』か。


 次に肩に着いている筒。さっき少し見た時は拳大の光の弾が放たれていた。あの弾の生成は『魔光剣』の刀身生成を少しだけ弄った術式なんだろうね。それをバゴットが造ったような『魔導弾砲』のような物で撃ち出している訳だ。『魔力弾砲』と呼ぼう。


 共通しているのは、どちらも魔力があればこそ、その力を発揮するということ。当然それを『勇者』が使えば、常人の何倍もの出力で操作出来ることだろう。

 ああけど、あの身体の所々に装着されてる装甲のような物は一体なんなんだろう?赤いラインが入っててちょっとだけカッコイイな。



「兵器としては中々だけど。如何せん使える人の魔力量に左右され過ぎてるね。それで?貴方達は及川君を倒したら卒業させてもらえるんだっけ?」


「ああ、そうだよ。だが部外者に見られるのも不味いからな」

「そういうことだ、じゃ早く降参することをお勧めするぜ?どっか欠けたんじゃ興醒めすっからなぁッ!!」


 勇者達は飛び上がり、私に魔力弾砲を向けて光弾を乱射してきた。おー、結構上手い連携するね。練習時間そんなに無かったと思うんだけど、もしかして見えない努力とかはするタイプなのかな?



 まぁなんにしても、


「聖剣特性も使わないなんて舐められたものだね。もしかして『鑑定』も使わずに勝負を仕掛けて来たのかなっとッ!」


 開放もしてない聖剣で一振りすると、光弾は風圧で全て吹っ飛んだ。やっぱり魔力だからか、速いだけで軽いなぁ。



「はぁ!?」

「うっわ、マジかよ……おい、森田。中々高いぞあいつのステータス」

「……勇者以外にあんの居るのかよこの世界。けど、ここまでは来ないだろうしな。癪だが、とっとと及川を殺しに行くぞ」


 2人には偽装のステータスで2人より多少高い程度にしたからか、少しだけ尻込みして私から離れるように飛んでいく。あらあら、そっちは危ないよ~


「おい……何か、壁みたいなもんが……ちょ、止まれッ!!なんだこりゃあ!?」


 踏ん切りが早いってのは良いことだけど、そう来ることも分かっていたので、ドーム状の結界を張らしてもらったよ。使ったのはダンジョンの戦利品、『魔導金属体』である。


 これに『妖精魔法』を使って魔力を込めた分だけ強度を上げて細かく糸のように張った。なので気付かず通ろうとすると細切れになるよ。挽肉がお好みかな?



 ……お、諦めてこっち向いたね。さぁ、思う存分ヤリマショウ?


「お前、勇者2人閉じ込めてまで戦うとか正気か?」

「お生憎様。少なくとも貴方達がそこまで強そうには見えなくてね。逃げられるのも面倒なのよ。DFに自信があるなら無理やり通ってみれば?」

「こんな高密度な魔力込めやがって何言ってんだてめぇ……」

「相澤、聖剣特性使ってとっとこいつ殺すぞ。何かされる前にやった方が良いかもしれねぇ」

「ああ」


 そうそう、そうやって来ておくれよ。私も聖剣を構えて相対する。光らせてないから相手には分からないけど、別に聖剣開放してなくても切れ味は最高だしね。


「「聖剣特性ッ!!」」




 聖剣を発動した瞬間、眼に見えて分かる変化が1つ起きた。それは、2人が4人、8人、16人と、どんどんその『人数』を増やしていくのだ。まるで『分身』のように。だが、それ等は全て質量を持った存在である。


 そして片方128人ずつの計256人にアイドリーは囲まれた。更に、


「俺達がお前を挽肉にしてやるよッ!クソガキッ!!」


 その256人が先程の何倍もの速さで空中を走り出した。先程とは比べ物にならない量で、こちらも比べ物にならない速さで光弾が放たれた。


 視界を埋め尽くすように撃たれるのだ。2人の連携は息がピッタリなことに、アイドリーは素直に関心した。



 森田の能力は『増殖』。自分とまったく同じ存在を作り出し、又、特定の1人に対して同じ事が出来る能力だ。ステータスもまったく同じ、スキルは聖剣と聖鎧が無い以外は全て同じになる。単純な戦力としてはこれ以上無く便利な能力だった。


 次に相澤の『加速』。これも簡単な話で、自分と特定の1人に対してSPDを100倍まで引き上げる事が出来る。これにより現在256人の彼等は約500万のSPDで移動している。まるで螺旋を描くように回りながら。



「これで終わりだぁーーーッ!!!!」

「消し飛べやぁぁーーーーッ!!!」


 

 そして光弾が直撃しようとした瞬間、


 アイドリーはその場から消えた。



「うぉッ!?また消えたぞッ!!」

「さっきの俺達を跳ばしたスキルだろ、そこらへんに居る筈だッ!!」

「その通り」

「「ッ!?!?」」


 空中という戦術の差など『妖精』には関係無い。短距離転移で彼等の中心に表れたアイドリーは、人数分の光のリングを出現させる。


「てめ、なんだその姿ッ!?!?!?」

「人間じゃなかったのかよッ!!?」


「言ってる場合かな?ほーら、鬼ごっこ開始だよ~♪」


 呆気に取られている間に、1人目が空中に浮かぶリングにバチっと捉えられ、雁字搦めになって地面に落ちて行った。高速移動している筈の自分達に当てたのだ。


 そして増殖体と感覚が共有している森田は、どれだけ力を入れてもそれから抜き出せないと分かり、顔が青褪めていく。ようやく、自分達が既に詰みの状態に入っていると知ってしまったから。



 光のリングはどんどん増える。そして高速で動いている筈の森田達よりも遥かに速く飛び回っている。逃げようにも、周囲は金属の檻で出られはしない。



「う、嘘だ。こんなアッサリやられるなんて、勇者なんだぞ?聖剣特性を使ってるんだぞ?それが、それがッ!!」

「おま、お前ッ!!何が目的なんだよッ!!?金ならやるぞッ!!このガラクタが欲しいならくれてやるッ!だから――――っ!?」



 笑っていた。ニコニコと、罪を裁く権利を当然の如く行使出来る者が、天使のような笑みを浮かべて指をクルクル回している。


 その顔を見て一瞬256人も笑顔になったが、答えは一言。



「だーめ♪」



 そして無慈悲な光輪が、全てを覆っていく。逃げ場も言い訳も失った2人に残された行動は、断末魔の悲鳴を上げることだけだった。




「「いやだぁぁぁぁぁぁああああーーーーーーーーーッ!!!!!!!」」

 最初に見つけたレブナントボードを馬車に送ったアイドリー達の行動。


「お、レブナントボード以外にも沢山あるんだねぇ~、よ~しぜ~んぶ持ってっちゃおうね~♪」

「ね~♪」


 ノリである。

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