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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第九章 魔導学園都市テルベール
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第138話 レーベルの息抜き(死合)

 お久しぶり、ラダリアに居る本体のアイドリーだよ。私とアリーナの分身は現在テルベールに居るけど、その様子は全部こっちで把握してるから、今視界が2つあるんだよね。


 『複数思考』を切り離して作ったからか気持ち悪さとかは無いけど、なんだか不思議な感覚だねぇ。





「準備は良いか?主よ」

「ああ、うん。問題無いよ。そっちは?」

「我はいつでも」


 私は今、レーベルと一対一で相対していた。場所は人が絶対寄り付かない程辺境の平原だった。いつかの魔族戦を思い出すよ。あれは色んな意味でヤバかったしね。



 で、今から何をするのかと言うと、レーベルの『息抜き』である。


「結構待たせてごめんね、レーベル」

「良いんじゃよ。なんだかんだこの数ヶ月楽しかったしのう。これは我の我儘じゃ……」

「そう……じゃあ、始める?」

「うむ」


 私は『限定幼女』以外は全て使って戦う。それぐらいしないと、今のレーベルは倒せないって分かるからね。魔族程ではないにしろ……これは凄いや。



レーベル(1653)♀ Lv.2920


固有種族:レッドドラゴン(古龍)(覚醒):人間状態


HP 4006億3987万2533/4006億3987万2533

MP 1966億6888万0059/1966億6888万0059

AK   1830億4577万2500

DF   2684億3540万5711

MAK  4995億1111万1600

MDF  5001億8706万7775

INT   2000

SPD   8921億0021万3500


【固有スキル】龍鱗 炎獄 超同調 龍人化 龍装


スキル:龍魔法(EX)火属性魔法(EX)体格差補正(EX)


称号:古龍の子孫 龍王



 恐ろしいことになっていた。そして、私は『聖剣』を使っても勝てるか微妙なんだよね。レーベルが『超同調』を使ったらそのステータスの一部持ってかれるからね。まぁ、今回に限ってはレーベルの力を見るのが目的だから、レーベル自身もそれは使わないんだけどさ。


「そういえば、武器は?」

「む、そうであったな。では……『龍装』――」


 レーベルが腕を振り上げると、そこに深紅の魔力が集まり、一本の『武器』が形成されていく。形は前に使っていたハルバードに似ているが、装飾は大きく異なっており、龍の鱗が変形して付いていた。更に手を包むように鱗の盾が展開されており、明らかに普通の『武器』ではない。


 私はレーベルのその武器が何によって作られたスキルかを見た。


・龍装

『自身を体現する武器を生成する。龍の生態を宿すことが出来る』



 うへぇ……つまり、レーベルのあの馬鹿みたいな補正による固さをそのまま宿したような武器ってこと?破壊不可能だし、聖剣以外じゃ受けられないな。



「もう1つは使わなくて良いの?」

「それは、一度当たってから考えるとするのじゃ。さぁ……ゆくぞアイドリーッ!!!」

「はいよぉッ!!」


 遊び(死合)が始まった。



 地面を蹴り砕いて接近するレーベルに対して、私は後ろに下がって距離を取る。とりあえず確認として、『四属性魔法』を唱えてみようか。


「水よ、無数の槍となり、対象をぶち抜けッ!!」


『妖精魔法』の合わせ技。水の槍は、突っ込んで来たレーベルを囲みながら放たれるが、


「効かぬわぁーーーッッ!!!!」


 それを、レーベルはハルバードの一振りで霧散させてしまう。水蒸気となった水は、霧となってお互いの姿を隠すけど、レーベルには関係無い。


「まったく、魔族よりキツそうだッ!!」

「なら嬉しいぞッ!!うらぁッ!!!!」


 壮絶な一撃が、霧の中から飛んで来た。両手で持った横薙ぎを、私は聖剣を持って防ぐ。


 ガギギギギッィィイイイッ!!


「うぉぉおおっとぉおお!?重たッ!!?」

「受けきるかッ!!流石じゃのうっとぉッ!?うげぁッ!!」


 押し込もうとしてきたので、私は即座に『妖精』となって逃げた。振り抜かれたハルバードの攻撃は、炎の斬撃となって地面を抉っていく。


 私はレーベルの後方を取り、その姿のまま後頭部に跳び蹴りを喰らわして吹っ飛ばした。やっぱり打撃は通じてくれたか。


 平原をバウンドしながら数百m程転がると、態勢を立て直してこちらを見るレーベル。恋する乙女のように嬉しそうな顔だった。な、なんか照れる……。



『レーベル凄い可愛いッ!!』

『あの子、本当に戦闘では妖美だよねぇ……』


『同調』で観戦しているアリーナはレーベルの楽しそうな姿を見て大変ご満悦な様子。


「くひひ♪、良いのう。この感じ……こうでなくてはなぁ~……♪」

「楽しそうで何よりだよ……じゃ、ちょっと踊ってみる?」


「嬉しい申し出じゃな……是非、お願いしようかぁぁぁあああッ!!!」





 アイドリーとレーベルは、数十分今の全力で打ち合った。レーベルは龍の特性を持ったハルバードによる力押し、アイドリーは『妖精』状態も含めながらの剣の斬撃で。


 そしてアイドリーが躱せば炎の斬撃が飛び周囲を火の海に変えてしまう為、もう平原はとっくに焼け野原である。



「くふふ♪楽しいッ!!楽しいぃのじゃぁああああッ!!!はーーはっはっはっはぁッ!!!」



 満面の笑みを浮かべて全身から魔力を放出するレーベル。アイドリーも気分が高揚しているのか、身体からピンク色の魔力が滲み出しており、2人の魔力で周囲が歪む程濃密な空間になっていく。


「はぁぁッ!!!!」

「ぐっはぁッ!!」


 一瞬の隙を付いて、レーベルの顎を蹴り上げ、拳で殴り抜いて後ろに退けさせると、ようやくお互い動きが止まった。


「ふー……まったく。レーベルとのダンスは良い汗掻くよ」

「……しかし、まだまだ……と言ったところかのう?」


 戦いの場の際にだけ、レーベルはアイドリーを名で呼んでいた。それがなんだか嬉しいのか。アイドリーは優しい笑みで頷く。



「いいよ……今日はレーベルの為に、私が幾らでも……付き合ってあげる」


「ッ!!…………クフ、クフフフフ♪……なら、イクまで倒れてくれるなよっ、アイドリーッ!!!」



 更にレーベルの身体から魔力が吹き上がると、今まで広がっていた周りの魔力も全てを使い、レーベルはスキルを発動させる。大口を開けて、スキルで空気中に散布された魔力を操作し呑み込んでいく。


「あ~~~~~むッ!!」


 ゴックンと喉を鳴らすと、先程まで噴き出していた魔力が全て無くなる。そして、



 ニュルン、と、尻尾・羽・角が生えてきた。


 更に身体の所々が鱗で覆われ、眼も龍に近い物に変わる。



『「何それカッコイイッ!!?」』

「ふふん♪」


 アイドリーはその姿を見てアリーナと一緒に目を輝かせて興奮する。だが、その姿の強さは、先程とは比べ物にならない程だった。



・龍人化

『ステータス10倍+龍形態の特性の付与。持続時間:3分 クールタイム:1週間ステータス1/1000』



 武器の固さが、そのまま身体にも追加されたようなものだった。しかもステータスは聖剣を発動したアイドリーよりも高いのだ。龍のスキル補正込みなら、今のレーベルのDFとMDFは20兆を超える。


「さぁ、地獄の3分間じゃぞ主よ。耐えてみせいッ!!」

「上等ッ!!」


 一振りするだけで大地が大きく抉れるハルバードの一撃をアイドリーは『妖精魔法』全振りの防御で対応する。当たった瞬間の凄まじい衝撃波で、一番近い木々達が消し飛んだ。


 武器同士が当たる時に鳴り響く轟音は、遥か先で待機しているアリーナの耳にも届いている。


「これでも耐えるかッ!!く~~~~さいっこうッ!!!!♪」


「こっちの手は痺れっぱなしだよッ!!!そらぁッ!!」



 全力の刺突でレーベルの首を狙った一撃。だがそこにも竜鱗があり、多少罅を入れる程度でしかなかった。だが多少は苦しいようで、喉を抑える。


「げっほ、ステータスに補正も付けて尚これか。聖剣はやはり恐ろしいのう……♪」

「碌なダメージも与えらてないんだから、嫌味にしか聞こえないかなッ!!」



 アイドリーは『妖精魔法』と『空間魔法』の合わせ技で短距離転移を乱発しながらレーベルを翻弄しようとするが、レーベルは超感覚でアイドリーの出て来る場所を先読みして攻撃してくるので、アイドリーは防戦一方になる。


 空に飛んでも同じで、羽の生えたレーベルは空中でも変幻自在に飛び回り追い詰めて来るのだ。


 それでも、全力で追い詰めて尚、アイドリーを倒すのは至難だが。




 そして、『龍人化』のタイムリミットも残り僅かというところで、アイドリーは傷だらけの身体をレーベルに向けた。


「ふぅ……はぁ……このまま終わるのも、癪じゃない?」

「……同意じゃな」


「なら一撃勝負で、どう?」


「…………ふふ、分かっておるではないか……承知したぞ」



 空中高く舞い上がり、雲の上で『妖精』と『古龍』はお互いの顔を見る。


「「……」」

 笑っていた。友達と語らっているかのような、楽しそうな笑みだった。




 間もなく終幕する戦いに大きな華を添える為に、2人は動き出す。


「……ゆくぞッ」

「来い、相棒ッ!!」


 レーベルは全魔力をハルバードに込めた。前の物なら熱に耐えられず溶けたが、今度の武器は自分自身なのだ、十二分に耐え切り、その威力は際限なく高まっていく。


 一方アイドリーのしたことは、『妖精魔法』と『空間魔法』の合成技。自分の全面に『盾』を形成し、『位相』を捻じ曲げる。本来ならこれを抜ける攻撃は同じ『空間魔法』を使う者にしか出来ないが、レーベルなら、そんな理屈はねじ伏せてしまうだろうということは分かっていた。だからこその全力である。


 頭は死の警報を鳴らすが、こんな楽しい事を止めるぐらいながら、死んだ方がマシだとアイドリーは無理やり止めた。



「おぉぉおおおおおおおおおッッ!!!!!!!!!!!」



 そして、神速の一撃が、レーベルの最強の矛が、アイドリーの『盾』に放たれた。



 その時、2人の空間から音は消える。その一瞬後に、遅れて爆音が周囲の空気を吹き飛ばした。


「………ッ!!」


「ぶぅぅぅちぃぃぃぬぅぅぅけぇぇぇーーーーーいッ!!!」



 『盾』にヒビが入り始める。レーベルの最後の攻撃が、予想通りアイドリーの捻じ曲げた『位相』を突破しようとしていた。

 ヒビはどんどん大きく、深くなり、そして……




 バリンっと……『1枚目』の盾を砕く。



「―――――――――――――――はは、やはり主は……強いのう」


 そして、レーベルの矛も砕けた。





 全てが終わった戦地の中で、小さくなったレーベルをアイドリーは膝枕していた。既に傷は治し終わったが、どっちも動けないぐらいに消耗している為、アリーナの救助待ちである。


 しかし、2人の様子は疲労による疲れよりも、清々しさで一杯だった。


「くふふ……また、負けたのう」

「ギリギリだったけどね……もう少し時間があったら、全部割られたかもしれないし」

「そしたら、次の手を打つじゃろ、主なら……のう?」

「まぁ、ね…………息抜き出来た?」


 頬を撫でると、まるで子供のように笑うレーベル。


「うむ♪……また、やってくれるかのう?」

「良いよ。貴方は、私の相棒だもの」



 お互いの頬を撫でながら、2人は感情を重ねる。『同調』よりも尚深く、それは繋がっている。


「……クフフ♪大好きじゃ、主よ……」

「私もだよ、レーベル……」




 2人が疲れて眠った数分後、アリーナがひょこっと姿を現した。


「おー…………うしッ」


 2人の状況を見て、アリーナは直ぐに行動に起こした。崩れた2人の態勢を直して、自分の膝に頭を乗せた。全てを使い果たした2人の寝顔を、アリーナはニコニコしながら見つめる。


「くか~~…ぐ……ごぁ~~~」

「くー………スー……」


「クスクス……~~♪」


 そして『妖精魔法』に子守歌を乗せて歌い始めたのだった……





「「「ただいま~~」」」

「あ、お帰りなさい皆。何か色んな爆音とか振動が響いていたんだけど、何かしていたの?」

「ちょっとレーベルと遊んでただけさ」

「とっても楽しかったのじゃ~♪」

「……地形変わった?」


「「ちょっとだけ」」


「……国民になんて説明すれば良いのさぁ~~~~!!」


 創造神の魔物討伐、ということにしておいたらしい。

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