表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第九章 魔導学園都市テルベール
162/403

閑話・14 心の行方 ②

短めなので、もう一話投稿したいと思います。

「はいよっと」

「ゴァァ……」


 ドスンと音を立てて倒れるオークを見る事も無く、私は助けを求めたパーティに目を向けた。これで3つ目。ここらへんはオークの巣があるみたいで、何匹かで来られると苦戦している人達が出て来たね。


「あ、あの、ありがとうございます先輩ッ!」

「どういたしまして。ここらへんはまだオーク多そうだから、気を付けてね?」

「はい、助かりましたッ!!」



 初々しく頭を下げる男生徒と女生徒の混合パーティに手を振って別れを告げると、向こうでもアリーナが助けを求めていた生徒達を救出して戻ってきた。


「お疲れ様、アイドリー♪」

「アリーナもお疲れ。後輩達は大丈夫だった?」

「うん、1人だけ軽く足を捻ったぐらいだから、ついでに治しておいたよ」

「それはナイスだね」

「えへへ~♪」


 よし、可愛い。こっちのアリーナもええなぁ……。幼いアリーナも好きだけど、こっちの大人アリーナも私は好きだ。どっちかを選べと言われても、迷いなくどっちも大好きだから選ばないという選択肢を選ぶぐらい好きだ。


「えい♪」

「おぷっ」


 けど、大人アリーナだと、抱き付かれたら大体こうやって胸の中に埋まるんだよね。いや、それ自体は至福の時間なんだから良いんだけどさ。こう……なんだろうね、最近親友の境界が曖昧になりそうで怖い。


 だって妖精なんだもん。人間みたいな本能で言うところの好きとかじゃなく、純粋に気持ちだけの好きだから、そもそもそこに他の何かが介在する余地が無いんだよね。


 それに、私は思考が人間だから、女の子であるアリーナをそういう眼では見てはいない……多分。


「ほら、アリーナ。お日様が真上だ。そろそろご飯にしよう?」

「お、いよいよ私の手作り弁当を振る舞う時が来たねッ!」

「そういうこと、私も楽しみにしてたよ?」

「「……えへへ♪」」



 けど、こういうところはお互い変わってないや。



 アリーナに渡されたお弁当を開けると、彩のある中身になっていた。もはや聞くまい謎の肉を巻いた野菜、卵サンドにプチボルトコが入っていた。

 プチボルトコは、見た目はトマトなんだけど、非常に果肉が分厚く噛み応えがあるのだ。私の好物もしっかり押さえているとはやるなアリーナ。


 お揃いのお弁当箱は、私のが青色で、アリーナのがピンク色だ。あれ?色合い的には逆じゃないかな?


「アイドリー」

「ん?」

「あ、あーん」

「ッ!?」


 アリーナは、自分の持っている弁当箱からフォークで突き刺したプチボルトコを、私に食べさせようとしてきた。衝撃的だったので思考がフリーズしてしまったよ。


「アイドリーも、やって?」

「う、うん。あーん」


 お互いのお弁当の物を食べさせ合う、なるほど、これが色を逆にした意味か。誰の入れ知恵かは知らないけど、なんて素晴らしいイベントを用意してくれたんだろうか。


 一口目を食べると、アリーナは照れながらも満面の笑みになった。


「くふふ……あーんしてくれたぁ♪」

「……」


 小さくそんなことを呟いてしまうアリーナに、私は見えないように溢れる愛を拭き取った……ふぅ、危ない。こんな幸せな時間そうそう終わらせてなるものか。私には癒しが必要なんだから。


 そして次に互いに手に取ったのは卵サンドだ。これはフォークじゃないので、手で千切って食べさせ合ったんだけど。



「あーむ♪むにゅ……ちゅぷっ……」

「ちょ、アリーnむぐッ!?……んにゅ……ちゅぴ……」


 指ごと食べられた挙句、私もアリーナに押し出された卵サンドを指ごと食べてしまった。そのままお互い咀嚼し合うと、遂には食べ物が無くなっても指を舐め合っていた。



 そしてゆっくり口から指を出すと、涎の橋が一筋落ちていく。


「「……」」


 どうしてこうなったんだろう……多分、美香とかレーベルが見たら血の池を作って沈んでいただろうなぁ。私もギリギリだよ。



「……」

 


 凄い火照った顔でこちらをボーっと見ているアリーナ。こ、これはいけない感じがする。具体的に言うと、近づいている顔をどうにかしないとアカン。


「てい」

「あぅっ」


 なので、頭にチョップしてみた。お、いつものほわーんな顔に戻ったね。お色気ムンムンよりそっちの方が私は好きよ。アリーナらしいし。


「あ、えと。うぁ~~~……」


 そして自分が何かをしようとしていた事に気付いたのか、人間の女の子のように顔を真っ赤にして顔を抑えてしまった。いやんいやんしてるね。超初々しいね。どっちにしろ私にとってはフィニッシュブローだったね。


「今日は更に女の子してるねアリーナは。それもバラドクス先生の教え?」

「う、うん。どうだった?」

「凄い可愛いしドキドキしたけど。何か私に伝えたいの?」

「……ううん。それは本体の私がすることだから」

「あー……うん、わかった」


 何かのおねだりだろうか?まぁ、私に叶えられる願いならアリーナの場合ほぼ無条件で叶えるんだけどさ。にしても破棄力が凄まじいな。私の脳内フォルダが今日だけで満杯になりそうだよ。


 その後はお互い普通にご飯を食べ合うと、食休みに太い樹に寄りかかって身を寄せ合いながら30分ぐらい昼寝した。



 その光景を周りの生徒達に全部見らていた事が分かったのは、試験後にバラドクス先生に教えられてからだった。あぁ……恥ずか死ぬぅ~~

「アイドリー、新しい二つ名が付いてたよ?」

「へ、へぇ……何かな?」

「白百合の華だって♪」

「おう……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ