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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第九章 魔導学園都市テルベール
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閑話・13 心の行方 ①

 今日から3日間、私はアリーナと一緒に冒険学科の授業に参加する。というのも、分身ながらも身体を動かしたいと感じていたのが1つ。単純に授業がどんなものか気になったのが1つ。後は、



「あら~来たのね2人とも♪待ってたわよ~♪」

「こんにちわー♪」

「どうも、バラドクス先生。今日はよろしくお願いします」

「ええ、任せて頂戴な♪」



 このブロリア・バラドクス先生(男)+(乙女)な人に興味を持ったからだ。主にアリーナが。私としてはかr「あぁッ!?」……彼女の強烈なキャラが面白くて来た。


 けどアリーナは、どうも彼女の話に興味があるようで。ここ数日、毎日彼女の部屋に行ってるんだよね。どんな話をしたのか聞いてもはぐらかせされてしまった。こんなこと初めてだから、最初は気が動転して少し泣いてしまったのは恥ずかしい思い出だよ。その後アリーナに全然悪いことじゃないと言われたから信じたけどさ……



「しっかし、冒険者学科って1年生だけでもかなり多いんですね」

「そうよ~♪世界で最も求められている職業だもの。なりたい人もそれだけ沢山居るのよ?」


 見渡す限り、門前広場には生徒が集められていた。いや、まぁ門前もそこまで広くはないけどさ、少なくても300人は居る感じだね。男性が殆どだけど、ちらほら女生徒も見えた。あー……何かガルアニアのアグエラさんを思い出すね。


 

 そして1人の先生が壇の上から生徒達に今回の試験を説明し始めた。


「今回の試験は、5人のパーティによる魔物狩りになります。魔物の狩った数、強さ等が得点となりますが、如何に怪我無く試験を終えるかも採点基準になりますのでくれぐれも注意するように。場所は平原先にある『テステーブの森』になります。もしも不測の事態に陥った場合は、迷わず魔法で空に信号を打ち上げるように。プライドの為に命だけは捨てないで下さいね」


 ひとしきりの説明が終わると、今度はバラドクス先生が生徒達の前に立った。誰もが姿勢を改めて正し、彼女?の言葉に耳を傾けた。



「さ~てみんな、今日は貴方達の期末試験よ。貴方達の研鑽によって得た技術の結晶を遺憾なく発揮し、仲間と供に魔物を狩って狩って狩りまくるのよッ!!けど、絶対に無謀な行動だけはしないように。もしも仲間をないがしろにしてみなさい………生まれてきたことを後悔させてやるぞテメェ等ッッ!!!!!!」


「「「はいッ!!」」」



 うぉ……凄い覇気だ。というかちゃんと男言葉を使えるんだね。バラドクス先生の言葉と供に、生徒達は自分達のパーティと足並みを揃えて外へ歩き出した。


 で、今回の私達の役割は教師達の手伝いになる。まぁ危険そうなパーティを見つけたら助けてあげてって感じなんだとさ。アバウト過ぎなかなぁ……?


「良いのよ、所詮冒険者に必要なのは規則と絆だけだからね。それさえあれば大概の事は許すわ。さて、貴方達は自由に森の中を歩き回っても良いわよ?聞いてる強さでは私よりも凄いみたいだし♪」


 いや、貴方も相当強いからね?



ブロリア・バラドクス(38) Lv.422


種族:人間


HP 9829/9829

MP 9544/9544

AK   1万1151

DF   1万0550

MAK  5467

MDF  7866

INT   740

SPD   1万1200


【固有スキル】 頑強


スキル:格闘術(S+)四属性魔法(S-)縮地(S-)鉄壁(S+)歌(C)隠蔽(C+)



・頑強

『決して折れず、決して曲がらない者が持つスキル。『鉄壁』のランクが高い程、DF・

MDFに大幅な補正が加わる』



 このスキルはきっと、バラドクス先生の生き様を現しているんだろうなぁ。こんなにも威風堂々に自分を表現して生きてるんだもん。並大抵の志ではない筈だ。この武闘会でもバンダルバさんに次ぐ強さだし。


「さて、私も学科主任として行かなきゃ♪それじゃあ2人とも、何かあったらよろしくね~~♪」


 そう言い残して、先生はスキップしながら生徒達の後を追ったのだった。



「よし、じゃあ私達も行く?」

「う、うんッ!そうだねッ!!」

「……」


 何か、本当にこの前から変だねアリーナ。バラドクス先生の件といい、どうもアリーナの言動がソワソワしている。私を見る度に顔を赤くするし、笑顔なんだけどアセアセしながら身振り手振りが激しいのだ。


 非常に可愛い。それはもう眼に入れても痛くないぐらい可愛いのだけど、私としても戸惑うばかりだ。可愛さの質が違うからかな?


 本人も自分の態度の変わりようが不思議なようで、度々首を傾げてはテスタニカさんに電話したり、バラドクス先生の所に行ってる。



 けど、それでも私からは離れず、今日も2人で手を繋ぎながら歩きだしたのだった。





「ん~、ただの森だねぇ」

「ラダリア近くの森や、ガルアニアのマダルコスの森は凄い高かったもんね~」

「いや、あそこを基準にしちゃ駄目でしょ。木1本で50mはあるんだよ?」


 単純に環境の差だと思う。この森は一般的な杉の木とかしか無いし。あそこの木々は私には判別不可能だったから、異世界特有だよ間違いなく。


 さて、今は森の中を歩いているわけだけど、耳を澄ませば戦闘の音があちらこちらから聞こえてくる。今のところ此処らへんには弱い魔物しか居ないみたいだから悲鳴みたいなものは無い。『妖精魔法』による探知は行ってるから、周囲1km圏内なら即座に助けに行けるし、その間はアリーナとの散歩かな。


「そういえば、アリーナ今日は何持ってるの?」

「え?……えっと。お弁当、かな」

「ああ、なるほど。用意してきたんだ」

「アイドリーのも作ったんだよ?後で一緒に食べようね♪」

「お、おう、わかったよ」


 天使が女神になって、それを超えると何になるんだろうか。お弁当が入った袋を両手で誇らしげに持って、親友が愛らしい照れ笑いをしているのだ。


 なんだろうね。最近いつも顔を背けたり慌てて逃げられることが多かったからねぇ。まさかアリーナにギャップ萌えする日が来るとは思わなかった。基本デレデレだけど。








 私は、及川君とフェルノラのやり取りを見てから、どうにも不思議な事になっていた。いつも通り幸せな光景を見て心を躍らせる筈が、何故か胸の奥がトクンと高鳴り、少しだけ苦しくなったのだ。

 その状態でアイドリーを見ると、更に苦しくなって、顔が熱くなっていくのを感じた。普段はそこまでじゃないんだけど、ふとした時にどうしようもないぐらい胸がキュ~っとなってどうしようも無くなっちゃう。


 だからその事を最初、テスタニカさんに聞いてみた。



『貴方がその状態で通話してくるなんて珍しいわね。どうしたの?』

「えっと、聞いて欲しいことがあって……」


 それで私の状態について話すと、向こうから唸り声が聞こえてきた。いつもアイドリー相手にあげている呻き声とも何か違ってる。


『……ん~~~、そっかぁ。アリーナ、凄いのねぇ』

「えっ?」

『あのね。それ、私とノルンが欲しかった何かなのよ。けど、私達は結局親友のままだったわ。ほら、私達はごっこ遊びじゃない?だからそういうのも全部本気の『演技』だったから。ノルンの事は好きだったけど、そういう好きにはなれなかったのよねぇ。あれは悔しかったわぁ』

「え、あの、どういう」

『ああ、ごめんごめん。ん~なんて説明したら良いのかしら。絵本の中にもあったんだけど、貴方のその状態は、人間で言うところの『恋』に近いと思うのよ。ただ、私達は人間じゃないから、なんとも言えないけどね?』


「こ…い?」


 その言葉を聞いて、更に私の胸は高鳴りを増した。あうぅ……何でこんなに気持ち良い苦しさなんだろう……


「けど、妖精にはそういうのは無いってノルンさん言ってたような……」

『あれは、ノルンがそうなれなかったから悔しがってそう言っているのよ。そりゃあ確かに妖精にはそういうのは限りなく無いと言えるわ。だって、生物とは違って、私達にそういう機能も無ければ本能も無いから』


 そうだ。妖精は皆何かから生まれる存在だもん。自らが妖精を生み出すという事は出来ない。だけど、


「分からないよ。好きって気持ちなのに、違う好きになってるんだもん。私、どうなってるのかな?」

『私に聞いても駄目よアリーナ。それは自分で見つけないと。だって、そんな経験誰もしたことが無いんだもの。それは貴方にしか分からないわ。』

「そんな事言われても……」

『そうねぇ。なら、相談相手は人間になさいな。私達妖精よりよっぽど『恋』してる種族なんだから、参考になると思うわよ?』

「あ、そっか……じゃあ、その『恋』って物をよく知ってそうな人に聞けば良いんだね。分かった、ありがとうテスタニカさんッ!」

『はいはい、じゃ、頑張ってね~♪』



 通話を切ると、私は一目散に走り出した。私の周囲に現在そういうのに詳しそうな人は1人しか居ない。


 

「それで、アタシの所に来たって訳ね♪」

「はい、先生はとても『恋』の相談をよく受けてるって聞いたので」


 道行く生徒達の間でもバラドクス先生の名前は何度も聞いていた。彼女?は自らの心を決して偽る事なく男の身でありながら『女』を志す求道者だった。そんな人だからこそどちらの心も分かるから、相談相手には最高らしい。


 だから私もそうしようと思ったんだけど、私の話を聞くと、先生は首を横に振ってしまった。


「ねぇ、アリーナちゃん。貴方は『恋』を勘違いしているわ」

「え?けど、恋って好きってことじゃないんですか?私、それが友達の好きとどう違うか分からないんです。それが分かれば、私が恋をしているかどうか分かると思ったんですけど」

「友達は対象だとしても、恋は概念なのよ?分かる分からないじゃない。『そういうもの』なのよ。だから考えるだけ無駄なの。だから、感じるままに受け止める以外に方法は無いわ」


 そう言って綺麗な模様のカップを太い指で器用に摘まんで飲む先生は、とても優しい顔をしながら私を見ていた。まるで、物を覚えたての子供を見るかのように。


「私からも断言してあげるけど、貴方のそれは間違いなく『恋』よ。それも、とても綺麗で、純粋な恋心……とても人間とは思えない程良いわぁ♪けど、だからこそ何も考えてはいけないわ。分からないまま突き進みなさい。やりたいことをやって、戸惑いながら好きな人の隣で生きなさい」


「戸惑いながらも……隣で…」


 その言葉がスッと胸に入って、私に浸透していく。結局のところ、私もアイドリーもお互いが心底好きだって分かってる。けど、その『好き』が変化した時、お互いの関係が壊れるかもしれないっていう懸念もあった。けど、



 けど、きっとアイドリーは受け止めてくれるから。なら、『私』は考えるのを止めよう。本体の『私』に全て委ねよう。



「先生……また相談に来て良いですか?」

「勿論よ♪今度はその好きな人も連れてきなさいな♪」

「うんッ!」


「アリーナ、今日もバラドクス先生のところ?最近熱心だけど、何話してるの?」

「え、えっと、アイドリーには内緒だよッ!!」

「え…………」

「うわぁッ!?アイドリーごめん、ち、違うのッ!!何も悪いこと無いからッ!!ごめんね?ごめんね?」

「う、うん……」(ふ、不覚にも泣いてしまった……)


 その日は1日アリーナに抱っこされていました。

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