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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第九章 魔導学園都市テルベール
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閑話・12 入学試験

 学園の施設の1つ、多目的ホールの中でアイドリー達は試験を行っていた。本来ならば国王からの直筆の招待状に、アイドリー本人のSランクのギルドカードで免除される予定だったのだが、それでは不公平だし、何よりも『つまらない』という理由で実施された。


 実際、試験内容時間的には2人だけなので時間は掛からないだろうと理事長が許可。教員達も、2人の実力が知りたかったので快く了承してしまう。



 そして始まる第一試験。


 アイドリー達と非番の教員達はホールにある魔法訓練場にて説明を受ける。


「まずは、四属性の魔法をあの的に当てるんだ。1回ずつ違う属性で撃ち、それをローテーションやってもらう」

「採点基準は?」

「詠唱の速さと魔法の正確性、そして持続力だ。威力は重視していないから、長く続けられるだけの無駄の無さがあれば問題無い。最低でも5分は続けてくれ」

「わかりました。じゃ、お願いしまーす」

「お願いしまーす♪」



 定位置に立ち、同じ構えで的を見つめる2人は、それぞれ違うやり方で魔法を使い始めた。


 まずアイドリーだが、人差し指で的の中心を指し、


「火、水、地、風、火、水、地、風」


 詠唱も糞も無い、一文字で属性を表す言葉を呟くと、弾丸のような魔力の塊が的の一点だけに当たり続けるという現象が発生した。弾は一発ずつが属性に合わせた色になっており、しかもただの魔力なので魔力消費は本当に必要最低限に抑えられている。

 

 更にローテーションのスピードもかなり速いので、的が連打されているような音を響かせているのだ。



 次にアリーナの方を見ると、こちらは最早どうなっているのかさえ分からなかった。


「ふ~んふふ~~~ん♪ふふふ~~んふ~~~~ん♪ふ~ふん~~♪」


「「「……」」」


 鼻歌のリズムに合わせて空中の至る場所から四色の魔力弾が出現し、様々な軌道を描きながら吸い込まれるように的の中心に当たっていくのだ。測定器を見る限りではしっかりローテーションで撃ち込まれているので問題は無いが、詠唱が鼻歌という意味の分からないやり方に教員一同仰天していた。


 結果:双方が1時間以上続けていたので測定中止となった。的も中心点以外には当たらなかったので、自動合格。




続く第二試験。


試験内容は、魔道具や魔法に関しての知識力を図る試験だ。配られた用紙は何も書かれていない紙が3枚だけ。


「自由に書いて良い。図を用いて説明しても良いし、術式を用いて理論の考察等を書いても良い。内容は各々が一番伝わり易いと思う方法で考えくれ」

「この紙を使用するなら方法は問わないと?」

「そうだ」

「先生、用意したペンを使って良いですか?」

「構わんぞ。他には?……無いな。では、始めッ!!」


 制限時間1時間で試験が始まった。




・アイドリーの場合・


「先生、書くスペースが無くなりました」

「なんだと?」


 手を挙げてそんなことを言うアイドリーの用紙を教員が見ると、そこには『獣人の技術』の一部を完璧な制度で書いた術式が理論と図を用いて書かれていた。ただ、人間にとっては途轍もなく難解なものであり、正解だと分かっているのに暗号のように見える不思議な文章だった。

 さっきから見ている周りも「お?……お、おお?」っと必死に内容を読み取ろうとしている為、誰もアイドリーに新しい紙を与えてはくれなかった……



・アリーナの場合・


「~~♪」


 こっちは術式を書き込むだけ書き込むと、何故かそこから折り紙を初めてしまった。3つの紙をそれぞれ『イカ飛行機』『イーグル』『のしいか飛行機』に折ってしまう。それをホール内に飛ばすと、飛行機達は落ちる事なく空中を色んな軌道を描きながら緩急様々に飛び始めたのだ。


 これはアリーナの使ったペンに秘密がある。このペンの使われているインクはレブナント鉱石を粉末にして混ぜ合わせてあるので、術式に魔力をダイレクトに伝える事が出来るのだ。これはラダリアの技術力があればこそである。

 しかし紙飛行機と制御術式はアリーナ本人のオリジナルな為、ただの紙が変幻自在に飛び回る光景に教員達は驚きの声をあげていた。



 結果:アイドリーは教員に理解させ辛い内容だったので、解読出来るまで保留。アリーナは時間終了間際に紙を元に戻し、折り目まで魔法で奇麗に消したので一応合格。ただし双方注意を受けた。




 第三試験は、雇われ冒険者との模擬戦である。


「冒険者は木剣による攻撃のみが主だが、接近されれば組み付かれるから注意しろ。こっちが使って良いのは魔法だけだ。如何に対処出来るかを見るが、なるべくは勝て」

「魔法によって起こった現象なら攻撃方法としてはありですか?」

「例えば?」

「魔法を手に持って攻撃したりとか。こんな風に」


 そう言ってアイドリーは地面に手を付けて、魔法で槍を生成した。土塊なので脆いが、魔法で作られている事に代わりはない。


 だがそんなことをする生徒は見た事が無いので、教員は少しばかり判断に困った。


「……あー、ダメだ。それだと他の生徒との基準にならないからな。あくまでも距離を保つようにして魔法だけで戦ってくれ」

「「はーい」」



 相手の冒険者はCランクをやって長い冒険者だった。レベルは60程度と中堅クラスより少し上だが、かなり戦い慣れをしている。数年前から学園に雇われて実技試験の相手もしていた男だった。


「よろしく、じゃあ……行くぞッ!!」



・一戦目:アイドリーの場合・



「土壁よ、敵を飲み込め!」

「っは、そんな見え見えに引っ掛からねぇよッ!」


 試験官の周囲の土が盛り上がり、彼を囲もうとしてきたが、それよりも早く前に跳んで躱そうとした。そのまま走り出してアイドリーに近づこうとしたが、


「拳となって、打ち砕けッ!!


 盛り上がった土がそのまま拳の形になり、後ろから試験官をタコ殴りにした。


「おご!げふ!うぎぃッ!!」

「し、試験終了ッ!!魔法止めッ!!!」


 執拗にボディだけを抉られた為、試験官は悶絶。保険の教員が回復するが、立ち上がるのに数分少々掛かった。あまりに一方的なのもそうだが、一度発動した魔法を途中で破棄し、そのまま新たな魔法で再活用するという荒業に驚きを隠せなかった。


「う、く……気持ち悪かった。エグい戦い方するんだな……」

「いやぁ、最初に前に跳ばれたので仕方なく」

「そういうことにしとくよ……」




・2戦目:アリーナの場合・


 試験始まりと同時に、アリーナは『妖精魔法』でそれっぽい詠唱をしながら等身大の水を空中に浮かべた。


「水の球?そんなもん出しただけでどうしようってんだッ!!」

「そりゃあ勿論、これが私の武器になるんだよ。行ってッ!!」


 突っ込んでくる試験官に対して、アリーナは水に指示を出して自分の前に出させた。壁にもならない水に試験官は剣で散らせようと振りかぶったが、


 そこで水は振られる剣よりも前に割れた。


「はぁ!?うぼぉッ!?!?!?!?」


 そのまま試験官を飲み込むと、空中に浮かべて閉じ込めてしまう。なんとかもがいて脱出しようとするが、どんなに水を掻いても出ることが出来ないので、諦めて水の中で両手を上げて降参の意を示したのだった。


「ぶいッ!」



 結果:文句無しに合格。




 第四試験。


 5対1の面接なのだが、先の3つの試験からして既に入学は決まっているようなものだったので、確認の意味を込めて、というのが大きかった。



・アイドリーの場合・


「君は何故この学園を受けようと思ったんだい?」

「本来ならそんな気は無かったんですけど、国の事情があったので受けました」

「短い間だが、学園に入ってしたいことは何かあるかね?」

「基本的には学園を見て回りたいですね。後、魔道具の研究施設を見たいです。色んな発想で作られた物に興味があるので」

「何か卒業までの目標は?」

「精一杯楽しみたいです」



・アリーナの場合・


「君達は同じ目的でこの学園に?」

「そうですね。ただ、私も自分なりに何か作ろうとは考えています」

「ほう、それは?」

「今はまだ何とも。ただ、出来るなら皆が楽しくなるような、幸せに出来るような、そんな感じの物を作りたいです」

「最後に、卒業までの意気込みは?」

「友達沢山作りますッ!!」



結果:合格。ただし、彼女達は入る学科を間違えた。




「以上、こんな感じだったよ」

「参考になったかな?」

「なりませんわよッ!!どんな思考回路しているんですのッ!?」

「なるべく地味にやったよね?」

「本気でやったらホール無くなっちゃうもんね、ドリーは」

「レーベルよりはマシだと思う」

「え?」

「え?」

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