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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第九章 魔導学園都市テルベール
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第130話 魔道具を探しに

「あー……話は分かったよ」

「…………あぁ」

「えっと。だから『九尾』モードでそんなに不機嫌なんだね」

「……すまん。戻ったら泣いちまいそうでな」

「理由が可愛いなぁ……」



 呼ばれて来てみれば、王座にイライラした顔で座っていた『九尾』モードのフォルナが座っていたから驚いたよ。周囲が威圧感で歪むぐらいの不機嫌さだったしね。メーウが何で愛を溢れさせているかは聞かないでおこう。きっと訓練され過ぎたんだろうしね。ていうか、それ戦闘時以外にもなれたんだね。



 それで話を聞いてみたら、うん……盗まれたんだってさ、『魔道具』。



 研究所で解析が終わって、さぁ工場で量産だぁって感じだったんだけど。その途中、積み荷が何の拍子も無く消えたらしい。その時積み荷の入った馬車の中には警備隊の獣人も居て最大限の警戒をしていたらしいんだけど、本当にパッと消えたと。厳重に拘束されてたって言うんだけど、それごと消えたというんだから驚きだ。


 その警備隊の獣人は犬族の人なんだけど、臭いも足音もしなかったらしい。魔道具の臭いも覚えてたんだけど、消えた瞬間にその臭いも全部消えたって……目の前で神隠しでもあったのかな?



 横ではオージャスが全力の土下座をしていた。尻尾と耳もペタリとしてしまっている。ヤバい、ちょっと触りたいっていうかアリーナが触ってる。



「で、どこの誰の仕業か全然分からないってことだよね?」

「ああ、痕跡が何もねぇから最初は俺もそう思った。だがあれだけの事を一瞬でやっちまう奴なんざそうはいねぇ。それでリサリーとブレアに心当たりがねぇか聞いたんだが、何とも歯切れの悪い答えだったんだよ……」

「知ってるってこと?」

「ああ……だが、知っている奴だったら、絶対にそんなことはしない奴だと言っていた。効果も多少異なっているから多分違う、だってよ」


 ふーん……考えられるのは模倣犯だけど、理由が全然分からないし、何より魔道具盗んでどうするのかな?売るの?それともラダリアみたいに量産するとか?



「幸いなことに、研究室にはまだ1組ずつあんだ。それだけが救いだったぜ……けどよぉ」


 そこで、フォルナがまだ少しだけ紅い眼尻から大粒の涙を溜め始めてしまった。ちょっと、泣くの我慢する為にその状態になったんじゃないのフォルナさんや。



「だって……だってよぉ。お、おめえらが頑張って取って来てグス、くれたもんなのによぉ……それを……こっちの失態で……ごめ、ごめんさヒグっ」

「アリーナ」

「フォルナ、おいで」

「ごめんなしゃい~~~~~ッ!!」


 泣き出してからどんどん尻尾の火は鎮火していくのが見えたので、アリーナに行かせて抱っこさせる。フォルナじゃなくて盗んだ奴が悪いんだからシャキっとしなさいな?一国の王様なんだからさ。


「とりあえずもう一度リサリー達に話を聞いてみんか、主よ?」

「馬車の方も確認しようよ。私達で調べれば、痕跡出るかもしれないよ?」

「ですな。妖精魔法なら不可能ではないかと」


 3人が積極的に案を出してくれたので、私の言うこと無くなったなぁ……私もやる気出してるから良いけど。フォルナを泣かすのは許せんし、何より玩具レブナントボードはある目的の為に是非とも欲しいからね。


「じゃ、現場に行ってみよー」

「「「おー」」」

「ありがどう、ありがど~~~」


 あーもう泣きな泣きな。もう、まだ眼離せないなぁこれじゃあ。尻拭いするんだから、報酬はちゃんと貰うからね?友達料金だけど。





「で、まずは馬車の方に来た訳だけど。どうやって調べる?」

「アイドリー嬢、まずは残留している魔力を調べましょう。魔法を使っていれば、魔力の跡が付いて、そこだけ密度が高いでしょうからな」

「なるほど、やってみようか」


 私は『妖精魔法』で魔力を可視化する。んー……薄い。精々人が微量に発した程度の魔力しか残ってないねこれは。ってことはスキルか。


「スキルだと、隠れるなら『隠蔽』だね。極めれば足音もまぁ消せるだろうけど、臭いは不可能じゃないかな?それこそ、犬獣人の鼻を掻い潜るのは至難の業だろうし」

「そうですな。何か無臭にする魔道具を付けていた可能性もあるのでは?」

「だがアリーナ、クアッドよ。それでも空気の揺らぎは消せまい。質量はあるのじゃからな。しかも魔道具は厳重に拘束されておったのだろう?拘束していたものと同時に消えるということはじゃ」

「……マジックボックス持ちってことね。確かに、それなら拘束は関係無いね。触れれば仕舞える訳だし、音も無い。じゃあやっぱり犯人は勇者なのかな?」



 てことで重要参考人に来て貰いました。また会ったね狼兄妹。


「うっス創造神様」

「また何かやってんスか創造神様?」

「そんなとこ。あ、向こうでオージャスが怒っているから行った方が良いよ?」

「「マジっスか」」


 マジっス。勇者だけ呼んだのに君達も来てどうすんのよ。持ち場に戻りなさい。あ、オージャスに無言で連れてかれていく。ど~な~


「で、さっきの話の掘り返しで申し訳無いけど、色々教えてくれない?リサリー、ブレア」

「「……」」


 うーん、あんまり協力的じゃない顔だ。何か後ろめたいことがある……っていう訳じゃなそうだ。話せば『妖精の眼』で嘘がどうかは分かるんだし……よし脅そう。



「首輪に命令されて恥ずかしい過去の暴露大会開くのと、今洗い浚い話すの、どっちが良い?」

「「話すッ!!」」



 で、得た情報は次の通りだった。


 少年の名前は及川おいかわ 奏太そうた。未だに身長が140以下の男の勇者らしい。リサリー曰く、「今だったらとてつもなく可愛く見える」とか。リサリーそういう感じなの?美香と良い勝負の変態だぁ……


 で、彼はクラスメイトの中ではマスコット的なキャラだったらしく、嫌っている人は居なかったんだってさ。愛されキャラかぁ、和みは大事だね。彼自信も気弱だが優しい人だったとか。



 本題、彼は勇者達の中で唯一自分の聖剣特性をバラしていたという。その能力は『消失』。彼は自分の存在を一切の痕跡を残さず消す事が出来るんだそうだ。その変わり、何者にも干渉出来なくなるらしい。攻撃も全て空振りし、本当の幽霊のようになるんだとか。


「その状態でスキルを発動しても同じ結果なの?」

「本人はそう言ってたわ。だから、私達はあいつじゃないと思ってた」

「あいつはラダリア侵攻後も変わらず、色んな奴を励ましてたからな……疑うのはちょっと気が引けたんだ」


 以外に仲間思いだね君ら。狼兄妹と出会って少しは変わったのかな?前みたいに会った瞬間攻撃してこなかったし。今の話にも嘘は無かった。とすると、


「他に真犯人が存在するのか、その及川って人が嘘を付いていたのかってことになるね」

「……関係あるか分からないが、他の奴等は、あいつが聖剣特性をバラしたから隠すようになったんだ」

「え?朝比奈が隠させたんじゃないの?」


 美香から聞いてた限りじゃ、朝比奈が隠しておこうと提案していた筈だけど。ブレアが言うには、それは建前みたいなものだったらしい。


「あいつは、一部の人間に脅されてバラしたんだよ。特性を知っておけば、それだけ連携が上手くいくからと半ば強引にな。その時は、半分程の奴等がその状況を見ていた。及川はその後そいつらにも言うように言ったんだが……」

「言わなかったってことね」



 ブレアは頷く。バラして、裏切られて、朝比奈が止めたと。



「聞くけど、それって美香を襲った奴等?」

「そうだ」

「もうそれほとんど答えだよね?」



 間違っていなければ、そいつらに脅されて及川がやったと言えちゃうよ?えっと、確かそいつ等が派遣された先って確か『魔導学園都市』ってところだよね?えー……一度入ったら中々出て来られないって場所じゃんか。

 そこまで取りに行くとなると、どれだけ時間が掛かるか分からないしなぁ……


「フォルナ、こっから魔導学園都市までってどのくらいの距離?」

「えっと。ガルアニアを西に向かって、マルタを過ぎた辺りで北上していくから……大体馬車で2ヶ月くらいだと思う。馬だけなら1ヶ月掛からないぐらいかな」


 レーベルラッドより多少距離があるぐらいか。レーベルに乗って強行軍すれば1日の距離だね。私達でも入れるのかな?


「あそこってどんな国なの?」

「えっと、確か都市がそのまま1つの学校なのよ。住居もそこに住む人も、果ては店まで全て学生が行ってるの。そういう職業に就く為の『育成所』みたいなもんよ。冒険者学科もあるし、魔道具学科とかもあるわ。メインがそっちだけど、各国からの支援と授業料で色んな学科が創設されてるって話よ……確か」


 リサリーが顔を少し赤らめながら教えてくれたけど、どしたの?……もしかして、行って学生生活やりたかったって話?


「ち、違うわよ。違うからねッ!!ちょっと昔都市限定のスイーツを食べたくて少し調べただけよッ!!!」

「お、落ち着いて。誰も貴方の体重を気にしてないから、ね?」

「何の話してのよあんたッ!!」





 まぁこれで行先は決定したけど、問題はこっからである。行く?行かない?私は微妙かな。だって一応原型はまだ残ってるから量産は出来るしね。この世界では皆が喉から手が出る程欲しいんだろうけど、事件の真相がほとんど確定している以上、態々首を突っ込む必要無いと思うんだ。


「状況証拠があるだけだから、実際の物を向こうで見つけて、それを自分達のだと証明しなきゃいけないんでしょ?」

「しかも、もしそれを「自分達もダンジョンで見つけて来たんだ」なんて言われたらお仕舞いだね。仮に魔道具に何か自分達のだと分かる印があっても、向こうで気付かれ消されたら同じことだし」

「つまり、こちらは泣き寝入りということじゃな」

「うぅ~~~~~~」


 フォルナがまた泣きそうな顔になるので、よしよしと頭を撫でる。けど、実際どうやって取り返したもんかねぇ…………いや、そうだよ。



「別に証明する必要無いじゃん」

「「「えっ?」」」


 いや、向こうと同じ方法をこっちも使えば良いんだよ。こっちの物なのは分かってるんだから、量産される前に奪い返して後は知らぬ存ぜぬで通そう。もし向こうが突っ掛かってきても、何を根拠にそんなことを?で何も言えなくなるだろうし。なんせ、向こうはどうやって取り返されたか分からないんだから。


「では行くのか?」

「行かないよ?」

「行かんのかいッ!」


 そりゃあ行かないよ。そんなところで時間取られるの嫌だし。何より私はこっちでやりたいことあるしさ。



 なので『私達』以外に行って貰うのさ。



「まぁ、取り返せたらって感じで気長に行こう。アリーナ、ちょっと後で手伝って?きっと楽しいから。フォルナ、私達ちょっとガルアニア行って来るよ。量産は始めて良いからね」

「は、はい」

「何するのアイドリー?」


 ぽよんっと私の頭に柔らかい物を乗せて聞くアリーナ。なに、ちょっと紹介状を書いて貰うだけだよ。




『転入手続き』ていう紹介状をね。

「アリーナ、制服はミニスカね」

「……?分かったよ。もしかして見たいの?」

「あ、待って、そんなオープンじゃなくてチラって見えるのが良いのよ」

「美香のこと言えん変態じゃな主よ。どっこいどっこいじゃぞ」

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