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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第九章 魔導学園都市テルベール
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第129話 アリーナとアイドリー

「アイドリ~、朝だよ~」

「ん~、あり~な~?……むん、おは~よ~~♪」

「うん、おはよ~」



 ラダリアに帰って来てそろそろ1週間と少し。アイドリーが妖精幼女になってから2週間が経とうとしていた。今日の昼頃には、彼女は『元のアイドリー』に戻ることになる。


 最近、アリーナはずっとこの状態の彼女の面倒を喜々として見ていた。というか、とても可愛がっていた。アイドリーは妖精にして幼女なので、アリーナが妖精になっても、『寂しい』とは思わない。また、『妖精幼女』になったことで格段に遊びが楽しいのだ。具体的には、ボードゲームで一進一退の攻防が出来るようになった。


 いつものアイドリーも彼女は大好きだったが、こちらのアイドリーも彼女は大好きになってしまっているのだ。しかし同一個体である以上混同はしておらず、彼女の一側面として見ていたので、消えることが『別れ』だとは思っていなかった。



「ん~………(ポン)」

「お~?」

「……うん、おはようアイドリー。今日は何しよっか?」

「アリーナといる~♪」


 しかし、最後になるかもしれないという事態に心は違う反応を示す。だから彼女は『S.A.T』モード使った。悔いは残さないようにする為に。


「よし、じゃあ今日も元気にいこ~♪」

「おーッ!」

「朝から元気じゃのう己等……くぁ~~ぁ……」




 アリーナはアイドリーを肩車しながら宛ても無くラダリア内を歩き出す。


 今日も1日OFF。というかアイドリーが戻るまではずっとOFFだったので、レーベルは適当にクアッドと一緒に魔物討伐しに行って彼のランク上げを手伝ったりするぐらいである。その間にアリーナ達はその間孤児院に行ったり温泉街に行ったり、もしくは色んな人に会いに行っていた。



 時にはレーベルも誘って、特設ステージでのゲリラライブなんかもやってお金を稼いでみたり。


 ボードゲーム大会を開いてアイドリーとガチの思考合戦を繰り広げてみたり。


 幼獣グループエネクーの公演に参加してみたり本当に色々と。

 


 しかしそれも済んでしまうと、今度はラダリアを覆う樹木に登り、日向ぼっこをしながらのんびり将棋を指すようになった。


 こんなのんびりした時間を過ごすのも、2人にとっては掛け替えないものだった。



「よし、とうちゃ~く」

「とうちゃ~く♪」


 そして今日も、飴玉を舐めながらの一局が始まる。



 アリーナ達が使っている盤と駒は、2人が共同で作ったものだ。盤は脚付きで、表面もしっかり加工されており、木目や色艶も最高の物になっている。使っている木材も世界樹の近くに生えていた樹木を使っておりかなり頑丈。それで駒台も駒箱も作ったのだ。


 最初期に作った物なので今ならもっと良い物が作れるだろうが、これが2人を繋ぐ思い出の品である以上、そんな気は毛頭起きない。


 一方駒の方だが、これも凄かった。駒は文字ではなく、それぞれを現す存在として削り作られていたのだ。

 王ならローブと王冠を付けた男を、歩兵なら剣や槍を持った兵士を、飛車なら中華風の龍を、といった風に細部まで拘って作られた物だが、必然的に駒自体も大きくなりそれに合わせて盤も大きめに作ってある。

 裏返しには出来ないので、成った場合はそれ用の駒を作ってある。御蔭で駒箱がかなり豪華な箱になったが。


 



 ……パチ……パチ……



 対局中に、2人は会話を一切しない。ただ時折お互い眼を合わせたりするとニヒっと笑いあったりはしていて、とてもほのぼのとした空気の中でやっていた。勝つも負けるも関係なく、こうして語り合うのが気持ちよかったのだ。今の2人は『同調』も『複数思考』も使っていない、完全な素の状態にあるにも関わらずにだ。



 ……パチ…………パチ…………「「あ」」


 その1局の中で、決定的な一手が打たれて同時に声が上がった。じっくりとその盤上を見て、アリーナがコリコリと頬を掻き「あちゃ~」というような顔をした。



「……無いかな?ん~~負けた~~♪」

「んふ~かったぁ~~♪」


 そして終われば、こうして抱き合ってコロコロと笑い合う。



 そうして何度目かの対局が終わると、不意にアイドリーが立ち上がり、アリーナの膝の上に座った。



「ん?……どうしたの、アイドリー……?」

「……さびしい?」

「うっ……まぁ、ね」



 アイドリーは『妖精の眼・改』を発動していないが、それでもアリーナが何となく何を考えているのか分かった。普段は有事の際にしかならない『S.A.T』モードを、ここ最近はクールタイムが切れる度に使っているのだから。

 彼女に何かしらの異変があって、その原因が自分だということをアイドリーは直感的に気付いていた。


 これは。あの時に似ていると。



「もどったら……や?」

「ううん、嫌じゃないよ……ただ、『貴方も』好きになっちゃっただけなんだ。今までは妖精のアイドリーと、人間のアイドリーを見てたからかな。大好きな人が増えた気分になっちゃったんだと思う」


 こちらに振り向くアイドリーに、アリーナはおでこをコツンと当てる。


「なんだか、我儘なこと言う気がしてたから。『貴方』と別れたくなくてさ……だから『私』は限定成長を使った『私』になったんだと思う。ふふ、アイドリーにとっては違うのにね。私も記憶はちゃんとあるから、アイドリーも戻ったら記憶そのままだよきっと?」


「そかなー……?……だったら、うれしー♪」


「うん、私も嬉しい……大好きだよ、アイドリー」

「わたしも、アリーナ♪」



 過ぎ行く時間の中で、2人は晴れ渡る青空を見ながら、その時が来るのを待っていた……










「ただいま、アリーナ……」

「……おかえり、アイドリー」




  ………はぁ。


「起きてそうそうどうしたの?」

「いや、天使が女神にジョブチェンジ~な感じで尊かったから自己嫌悪に陥っているだけだよ」

「のっけから変なこと言ってるねぇアイドリーは」


 いや、うん。覚えてたよちゃんと。アリーナの言う通りだったわ。事の顛末も全部頭の中に入ってる。『私』という自我が無くなっても『私』は覚えてるから、そのまま残るのね。安心したにはしたけど、やっていたことが恥ずかし過ぎて死にそうなのと、アリーナと妖精幼女の私が仲良くなるスピードが早過ぎてね……私自身に嫉妬する日が来るとは思わなかったよ。


「まったく、アリーナも戻ったら沢山愛で倒してあげるからね?」

「あはは、楽しみにしてるよ……それより、『魔族化』のスキルは大丈夫?」

「え、ああ。そういえば何とも無いね。ちょっと見てみようか」



アイドリー(3) Lv.1340


固有種族:次元妖精(覚醒+)


HP 3066万5998/3066万5998

MP 6360万0023/6360万0023

AK   3億4280万3900

DF   3億1100万9010

MAK  5422億6999万0444

MDF  5230億8770万3400

INT   7100

SPD   2012億2690万5500


【固有スキル】妖精魔法 妖精の眼 空間魔法 顕現依存 概念耐性 聖剣(第2段階)

       真・聖鎧(休眠状態)限定幼女 魔族化(封印)


スキル:歌(S)剣術(EX)人化(S+)四属性魔法(EX)手加減(S+)隠蔽(S+)

従魔契約(―)複数思考(S)

    

称号:ドラゴンキラー 古龍の主 反逆者 バトルマスター  ●・●●

   ダンジョンルーラー



・魔族化

『理性を破壊し、破壊と殺戮の衝動に囚われれ、ステータス×1000倍の補正が掛かる。現在封印中に付き使用不可』



「……封印中、だってさ」

「おお、良かった♪」


『妖精魔法・改』により、しっかりスキルは封印状態ということで問題無しだった。妖精の身体で『魔族化』したらどうなるか予想付かないしね。勇者でさえあれだったんだから、私がなったらとんでもないことになりそうだ。


 こう、『デビル・アイドリーちゃん・モード』みたいな……いや、それならアリーナに小悪魔の格好させれば良いだけだ。落ち着け私。想像してはいけない。してはいけないが、


「アリーナ、ちょっと小悪魔な感じに振舞ってみ?」

「意味が分からないかな~~」

「あぶぶぶぶ」


 はい、ほっぺで遊ばれました。ごめんなさい。お、空からクアッドが来た。


「アリーナ嬢……おや、アイドリー嬢が戻られましたか。2週間振りですな」

「うん、どうもね。クアッドはどうしたの?レーベルと一緒に魔物の討伐に行ってたんじゃなかったっけ?」

「ええ、ですがフォルナ殿が御2人を探しているという事を聞きましてな、レーベル殿と一緒に探していたのですよ」

「なるほどね、じゃあレーベルに連絡してみようか」


 久方ぶりの『同調』だね。レーベル驚くかな?


『レーベル?』

『ん?お、おぉッ!!戻ったか主よ!!』

『う、うん、久しぶり。しばらくの間皆を引っ張ってってくれてありがとう。感謝してるよ』

『ああ構わんよそんなこと。ほれ、それよりクアッドがそっち行ったじゃろ?フォルナが呼んでおるのだ。城で待っておるぞ』

『わかった。すぐ行くね』

『了解じゃッ!!』


 何か驚いた、というよりかは嬉しそうだったなぁ。うん、私も何だか嬉しいというか照れた。レーベルもちょっと寂しかったのかな?いや、けど幼女の私とも楽しそうにしてたしなぁ。張り合いが無くて落ち込んでいたのかもしれないけど。


 しょうがない、また沢山ツッコミさせてあげないとね。



「よし、行こうアリーナ、クアッド」

「うんッ!」

「ええ」


 休息は十分取った。さて、友達の為にまた頑張りますかねぇ~。

「聞いてみたかったのですが、御2人は今の時点でどういう間柄なのですかな?」

「大好きな親友だよ?」

「愛が止まらない親友だね」


(……私の眼には最早夫婦に見えますが、まぁ妖精とはそのような者ですからな)

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