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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第八章 神聖皇国レーベルラッド
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閑話・11 それぞれのこれから

 俺は現在、東に向かって只管歩いていた。目的地、という訳ではないが、『ワドウ』という国に行きたかったのだ。昔の勇者が伝えた文化を残しているというそこで、俺は侍に会ってなんかこう、侍精神?ってやつに触れてみたかった。


 いつもの思い付きだけど、俺は馬鹿だから、こんなことぐらいしか思い付かない。



「しっかし……な~んで付いてきてんだお前……?」


 頭の上には、国を出て暫くして気付いた妖精が当然のように乗っていた。言葉は喋らないが、意志疎通は出来るようで行動で感情表現してくる。今はワドウという国の方面から外れないように、俺の頭を叩いて方向修正してくる。



「―――っ!(タシタシタシタシッ)」


「あぁ?こっち?ていうか降りろよ……普通に飛んで教えてくれよ……」


「(ブンブンブンブンッ)」


「そんな思いっきり首を横に振るなよ……」


「(ナデナデ)」


「……ありがとよ」



 こんなやり取りが日常になり始めていた。本当は1人で気ままに旅をしたかったのだが、こいつが俺から離れず延々と付いて来るのだ。色んな意味で休まらない。独りぼっちにしてくれない。


「お節介め……襲われても助けてやんねぇぞ?」


 と言ってもこいつ、ステータスが俺より微妙に高いのだ。恐らくはあの映像を流した奴が作り出したんだろう、顔はソックリだしな。そしてあの幼女とも似ていた。多分そういうことなんだろうと思いはしたが、気にはしていない。


 どうしようもない俺から離れないというならしょうがない。今はただこの存在に癒されようと思った。旅の道連れには、丁度良いのかもだし……はぁ、ブレてんなぁ俺。


「—――ッ!(タシタシタシタシッ)」


「分かったからそんなに叩くなって……」






 どうも、美香です。皆が帰ってから数日、私はアイドリーが作り出したアイちゃん(私命名)と一緒にレーベルラッドで騎士団の人の訓練に付き合ってた。


 何かあの日剛谷と戦ってたのを騎士団の人達が見ていたらしくて、是非私に稽古をして欲しいと懇願されてちゃったんだよね。ん~けど騎士団の人って型稽古とか集団での訓練がほとんどなのに良いのかなぁ?って思ってたんだけど。



「貴方の強さは相当な物だから問題無い。というより、集団での魔物討伐時の演習が安全に出来るのは非常に効果的だと私は思う。ということで今日もよろしく頼むぞ」


「「「よろしくお願いしますッ!!美香殿ッ!!」」」


「人を大型の魔物か何かと勘違いしてないッ!?」

「みか~、ふぁいお~♪」



 訓練場の隅っこでアイちゃんが応援してくれるので何とか頑張ってるけど、何度でも挑まれているので、手加減のスキルがどんどん上がっていくし、気を遣い過ぎて私がヘトヘトだよぉ~……



 昼頃、やっと全員が立てなくなるまでやりきった私は、ヨロヨロの状態でアイちゃんの所に行く。い、癒しを……私に癒しを……


「みか~おつ~♪」

「アイちゃ~ん」


 ヒシっと抱き合うと、アイちゃんが妖精魔法を使い私の泥やら汗やらが一瞬で無くなった。うわぁ、凄いアロマな香りが髪から粒子になって出てる。私の肌に浸透してどんどん疲れが取れて行くんだけど……


「みか~、しえろのとこ~」

「ああ、うん。行こっか?」

「うんッ!」





 こんにちわ、シエロです。皆さんが帰ってからというもの、夜は美香とアイちゃんを挟んで一緒に寝るようになりました。私も相当の寂しがり屋だったようで恥ずかしい限りです。

 今はまだ結婚するには早いですし、やることがあるので死ねませんから、ある意味では安心しています。



 後、何故か分かりませんが、アイちゃんは寝る時必ず私のお腹に抱き付いて寝ています。何故でしょう?聞いてみたのですが、笑顔と飴玉で誤魔化されてしまいました。



 国の状況ですが、表向きは特に問題も無く、皆いつも通りに回り始めています。結局あの出来事はどちらがより『信用』を勝ち取れるかの戦いでしたから、一度揺らいだ心をこちらに引き込んだ時点で、私達の勝ちでした。


 剛谷さんの件は……正直に言えば、やられた仕打ちは早々許すことは出来ません。美香みたいに割り切るには、私は彼を知らな過ぎましたから。美香もその分を殴るのを忘れていたと言ってましたし。いつかまた会ったら私もビンタでもしたいと思います。まぁ、酒盛りの時に私達もあれだけやらせてしまったので、多少悪い気もしますが。


 司教と枢機卿の件についてですが、こちらは宣言通り遅れていた仕事を騎士団の監視の下、毎日お父様が操られていた時ぐらいの仕事量をこなして頂いています。きっともう数日したら、全員パンダになっていることでしょう。


 本来なら破門だったのですが、仕事自体は優秀な人達なので、今手放すのはこちらとしても辛いのです。まぁ枢機卿が少しでも痩せて健康的になれば良いぐらいの気持ちです。


「……ふぅ」


 私は今、正式にこの国に『妖精教』を作ろうと書類と経典の作成をしています。ラダリアとは違い、こちらは『勇者教』に信心深いので私の自己満足になってしまいますが、これから共に繁栄していこうという仲になるのです。お互いが分かり合う為に、私は立派な架け橋になれるよう奮闘したいと思っています。


 それに、来年に控えている国際会議もあります。ラダリアはそれまでに地盤を盤石にし、他国から獣人奴隷を買い取るということを宣言しなければなりません。その時、ガルアニアとレーベルラッドが後ろ盾に入りますが、そこからがフォルナさんの本当の戦いになる筈です。踏ん張って欲しいですね……



 コンコンッ


「はい、どうぞ」

「シエロ~ご飯食べに行こ~?」

「しえろ~ごは~ん♪」

「あらあら、もうそんな時間でしたか。2人ともお疲れ様です」



 私も、限りある時間を大切にしていかないと……幸せな思い出を沢山持って逝きたいですから。





「あ~~~やっぱりこの場所は良いなぁ~~」


 やぁ、日ノ本だ。あの後、僕は一度アイドリー生み出した浮遊したお菓子の森に戻った。理想の場所に別れを言うついでに、今日は此処で1日を過ごして、それからハーリアに向かおうと思ってね。彼女達が居なくなった後も変わらず残っているとは思わなかったけど、何も変わってないなぁ。


「しかし食料は持参なのがなんとも言えないな。お菓子ではお腹は膨れないし……ん?」


 ふと空を見上げると、空を飛んでいく1匹の紅い龍を発見した。一瞬狩ろうかとも思ったが、そういえばあれの正体はレッドドラゴンだったなぁと思い直して、武器を下げた。


「帰りの足がある人は良いなぁ……ハーリアまで徒歩は面倒だよ、はぁ」


 本当は全部忘れて此処に住んでしまっても良かった。けど、恩人が出来てしまったからね。少しは僕の出来る手段で返したいから、これが最後だ。


 それに、朝比奈にまだお礼参りをしていないからね。あいつの困った様子を見るまでは頑張るとしよう。




「………はぁ、良い場所だなぁ」


 しかし、離れがたいよ……

次から次章に入ります。


大変申し訳ありません。遂にストックが切れてきたので、これからは1日1話投稿になると思います。

楽しみにしていらっしゃる方には心苦しいのですが、暖かい目で見て頂ければ幸いです。

投稿時間は18:00に固定いたしますので、これからもよろしくお願いします。

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