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妖精さんが世界をハッピーエンドに導くようです  作者: 生ゼンマイ
第二章 冒険者になってみた
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第14話 信用と証明

 次の日の朝、アルバさんの知り合いの鍛冶屋さんのとこで私は目を覚ました。鉱石が手に入って皆口々に感謝の言葉をくれるけど、依頼だからと言っても聞いてくれずお礼をさせてくれと縋りつかれてしまったのだ。

 しょうがないからその日はアルバさんの知り合いっていう人のところに泊めてもらったよ。他の連中は皆酒飲み始めたので、私は自分とアリーナの分の食事を貰うと、とっとと貸してくれた部屋に引きこもった。



 それで朝起きて廊下に出ると、丁度同時に廊下に出たアルバさんに声を掛けられる。


「おう嬢ちゃん、起きたか。ほれこれ。依頼達成の証明書だ。先に渡しておくぞ」

「うん、出発はすぐ?」

「ああ。束縛日数を超過すると追加料金が発生するんでな。帰りは鉄荷車が無いから半分の時間で行けるぞ。すぐ行きたいか?」

「うん」

「じゃあ家主に挨拶して行くから外で待ってな」


 それから何事もなく街を出て、私達は暖かい朝日を浴びながら出発した。今日も快晴。晴れやかな一日である。荷馬車もレブナント鉱石が空っぽになり軽く、馬の走る音も軽快だ。アリーナはそんな馬の頭ではいよーしている。


「今日は魔物が出るかもしんねぇからよろしくな嬢ちゃん」

「うん、早速ゴブリンが出たね」

「え? うぉ!!?」


 5匹のゴブリンが草むらから飛び出してきたので、私は即座に座席から魔法を唱えて頭を撃ち抜く。討伐部位を貰う為に少しだけ止めてもらう。


「一瞬かよ……昨日は搦め手の魔法しか見なかったが、攻撃系も強いなおい」

「あんまり私のこと言い触らさないでね?」

「良いけどよ。依頼受けてれば嫌でもバレるぞ?」

「それでもだよ」


 依頼人には一々言い聞かせていくつもりだし、多分平気だと思いたいなぁ。と思ったらまた魔物が出てきた。

 今度はオークが1体。また馬車を止めさせて風の刃で小間切れにした後、全部背中に収納していく。アルバさんが凝視するが、ローブの中がどうなっているか分からないだろうから無意味だね。


「本当にどうなってんだその背中……今のオークだけでも数百キロはあったろ?」

「企業秘密」


 謎が謎を呼ぶのが私なのさ。ふははは。


 今日はなんというか、魔物が非常に多かった。その後もゴブリン、ウルフ、ベアウルフ、オークとローテーションで一定時間に1回は出て来る。その度に瞬殺して収納していくので、結果的に昨日より多少早いぐらいで進んでいる。それでも大分早く昨日休んだ小さな湖まで着いた。


「全ての魔物を瞬殺するのも凄いが、それを全て持ってけるその身体が摩訶不思議過ぎんだろ!? 嬢ちゃん本当に人間か!!?」

「ワタシニンゲンウソツカナイ」

(それ嘘だー♪)


 はいアリーナ正解。褒美に顎を擽ってあげよう。


(あひゃ~ん♪ んひゅぅ~)


 フードの中で喉を撫でてあげた。ゲロ甘く可愛い。



 今日は私がアルバさんに食べ物を渡した。昨日盗賊にもあげてたオークの焼肉、それと果実ジュースだ。


「旅の中でこういうのを食べられるとか羨ましいってレベルじゃねえな。嬢ちゃん、これ俺だから良いけどよ。ヤバそうな奴の前では絶対にやるなよ?」

「そこまで馬鹿じゃないよ。アルバさんが良い人だからこうしてるだけ」

「っ! そうかよ……」


 いや、おっさんが照れてプイってやっても萌えないよ。需要が無いよ。




 そうしてまた馬車を走らせて、数時間後にはハバルに到着した。最後の方は魔物も出ず平和に依頼完了である。


「なんだ? やけに広場に商人が集まってんな」

「そうだね……まぁいいじゃん、早く行こう?」

「お、おう」


 商人達は全員準備万端って感じで何かを待っていた。ということは、ドロアの説得は成功したみたいだね。


 アルバさんの家の近くまで来ると、近所に住んでるパッドさんがすぐにこちらへ走ってきた。安否を確認出来てほっとしている表情だ。アルバさんも走って行ったので私も走る。本当に仲が良いんだね。


「アイドリーさん! アルバ!」

「おうパッド。お前には感謝するぜ。こいつはすげぇ嬢ちゃんだ」

「そうか……アイドリーさん、依頼を受けてくれて本当にありがとう。僕は何度もこいつに助けられていたから、どうしても放っておけなくてさ……」

「良いよ。私はこれでギルドに向かうけど、もう大丈夫?」

「おうよ。本当に助かったぜアイドリー、また頼むぜ?」

「勿論。それじゃあね」


 2人に手を振られながら、私はその場を後にしてギルドに向かった。




 ギルドはいつも通りまったく人が居なかった。私は窓口まで歩いてレーナさんを呼んだ。すぐに顔を見せてくる。何か目に隈出来てるけど、寝てないの?



「お帰りなさいアイドリーさん。依頼は大丈夫でしたか?」

「うん、これ依頼達成の証明書」


 ほっと一息付いてレーナさんはその紙を受け取った。そんなに心配だったの? まさかそれが疲れている理由にならないよね?


「本当に無事に達成してますね……しかも、道中で盗賊ですか……分かりました。ではこちらが達成報酬になります」


 受け取った袋を開けると、銀貨が50枚入っていた。これで50万円か。本当に冒険者って稼げるなぁ。


「アイドリーさんが来たらギルド長に通すよう言われているのですが、今はお時間大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。すぐ行ける」

「ではこちらへどうぞ」



 ギルド長室と書かれた扉を開けると、ドロア座っているであろう机には、紙の山が出来上がっていた。おそらく本人は埋もれているのだろうが、入ってきた私達に反応して、そこから顔だけ出す。


「おお……帰って来たか。まぁそこまで心配してなかったけどよ」

「随分疲れてるね?」


 紙を一枚拾い上げて読んでみると、そのほとんどがギルドに対してのクレームだった。


「冒険者ギルドは何やってんだって皆言ってんのさ。俺としては領主に言って欲しいんだが、皆その勇気はねぇから、俺んとこにくる。だがその甲斐あって説得は成功したぜ……ほら」


 ギルド長に渡されたのは、1枚の指定依頼書。


「もう広場に全員集まってる。お前が受ければすぐにでも出発出来る状況だ」

「分かってるよ。さっき来る時見たから」

「一応納得はして貰ってるが、絡んで来る馬鹿も偶に居るから気をつけろよー」

「はいはい、じゃあ行こう」



 今回私の受理された依頼内容はこちらである。


・商人ギルドの護衛・ 指定依頼

報酬 金貨60枚

内容 商人ギルドに属する商人の複数護衛。

達成目標 カナーリヤまでの護衛、道中の積み荷、人の保護。

指定ランク 無し

定員 無し



 ハバルには冒険者が居ないため私しか動けない。けど1人で長距離の護衛は無理がある。だが隣町のカナーリヤには冒険者が居るから、そこまでの護衛なら1人で請け負うという話を昨日したのだ。一気に複数の護衛が出来たからこその依頼である。



 ただしこれは異例中の異例。ただのFランクでは絶対に不可能だ。なので私は、もう少し高いステータスで再発行することにした。それを見せれば大丈夫だと思って貰えるようにね。



アイドリー(15) Lv.95

種族:人間


HP 1308/1308

MP 3056/3056

AK   1063

DF   752

MAK  1541

MDF  1327

INT   100

SPD   1894

  

スキル:剣術(B+)四属性魔法(A)料理(C+)手加減(A)隠蔽(A+)感知(B)

    


 これを見た時の反応としては、ドロアが大爆笑、レーナさんは顎が外れそうになっていたので押さえてあげた。どうやらこれでBランク上位ぐらいのステータスらしい。人間にも強い人沢山居るんだね。


「しかし驚いたな。まさかここまでの力があったとは。これならあいつらも安心するだろうよ。俺も一緒に説明しに行くから行くぞ。ああ、それとお前Eランクに昇格な。」

 

 ついでで言わないでよ。感動が半減するじゃん……



(アイドリーいいこいいこ?)


 うっすアリーナさん!!




 広場に着くと、商人達が一斉にこちらへ目を向けてくる。数にして30グループぐらいか。人数は1つの馬車に1~3人。全員で80人程かな。これは大移動だね。


 その中で一人の老齢の男が代表として話かけてきた。ドロアと並ぶと、ベクトルの違う2人のイカしたおっさんだねぇ。


「連れて来たのか。で、本当にそんなお嬢さんが役に立つのかね?」

「こいつを見てみろヒルテ。俺以上に適任だぜ?」

「……ほう、それが本当なら、確かに任せられる……かもしれんが」


 ヒルテと呼ばれた老人に私のステータス表を見せると、僅かに眉を上げて、私に視線を向けた。馬鹿にもしていないけど、侮っているというような目だ。値踏みもしてそう。


「お嬢さん……アイドリーといったか。試しに何か魔法を使ってみてくれんか? 出来ればこれから依頼で使うようなものを。私達が納得出来るような方法で。説明でも良い」


 これは意地悪かな? ドロアも青筋立ててヒルテさんを睨む。だがヒルテさんは悪びれない表情で言う。


「ふん、ただでさえ異例な依頼。少しでも信じられる確証が欲しいのだよ。こちらとて商人達の命を預かっているのだ。意地悪だと思われても結構」

「優しいんだねおじいちゃん」

「お、おじ?」


 あ、つい思ったことがそのまま口に出てしまった。


「んん、ヒルテさん。納得出来るものを見せれば良いんだね。いいよ、やる」

「お、おい!?」


 私は少し離れて、魔法を唱えながら『妖精魔法』でイメージする。


「水鏡の人形よ、私を映し、増やし、力無き者を守れ!!」


 私がその場から歩き出すと、まるで残像のように精工な形をした私が出てくる。そのまま商人達の周りをグルっと回り、総勢160人の水の私を出現させた。それぞれが剣をもっており、静かに佇む。


「「「……」」」

「鉄壁の壁よ、全てを拒絶し立ちはだかれ!」


 更にその周りを囲うように街壁よりも高い壁を出す。完全に囲まれてしまう。声が上がるが関係無い。やれと言われたのならやる。



「水人形よ、刃となって切り裂け!!!」



 全ての人形は一本の鋭い剣になり、土壁をどんどん切り裂いていく。細切れとなった土は私が魔法で地面に戻していく。最後の一欠片まで切り裂くと、水はまた人形の姿に戻った。私が指を鳴らすと、水人形は形を失い私が用意したガラス瓶の中に入っていく。


 容量的に無理? 魔法で瓶の中身を拡張してるから大丈夫です。そして、その瓶を商人の皆さんに見えるように掲げて見せた。



「この水を、皆さんのグループに居る人数分貸します。欲しい人は一列に並んで小さな小瓶のご用意を……もしもし?」



 なんで放心状態なのよ。要らないの? と思ったら凄い勢いで小瓶を手に掲げながらこちらに突撃してくる。あ、圧が。魔物よりも怖いんだけど……けど流石商人。ちゃんと一列に並んでいる。




「ど、どうだあいつすげぇだろ?」(ここまでやれとは言ってねぇよ!!)

「ああ、あれは認めざるを得ぬな……商人達も殺到しとるし……」


 2人も圧倒されているようで何よりだ。これでまだまだ上があるとか言ったら泣かれそうだしね。今後はこれぐらいの規模が限界だと言っておこう。



 そうして水を商人達に配り終えると、私達はハバルを出発したのだった。

「お嬢さん。その水私のところで売ってみないか?」

「これ、私が居ないと発動しませんよ?」

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